第4話幼子の戯れを

それはそれは朝早く、新米うぐいすが鳴く練習をするもっと前。

寝坊したと勘違いして逆に早く登校してしまった幸成が目撃した出来事だ。

用務員さんが出勤したばかりの時間帯。

どう考えても校舎には人がいない、はずだった。

男子高校生が廊下でけんけんぱをしていた。

錯覚?

眠気が戻って来た瞼をこしこし、擦って見直しても現実で、しかもそれはよく知っている人物で。

悪夢か何かかとさえ思った。

けれど倉敷暁は幸成の姿を認めるや否や、千年に一度咲く花の如く顔を綻ばせた。

そうしてスキップしながら遠方より来たれり。

来なくていい、幸成は心の底から思ったが「…おはよ」挨拶を口にした。

いちおう友人、なのだから。


倉敷はいつも通り無駄な煌めきを振りまきながら「おはよう、寝坊したと思って早く来ちゃった?」まるで見て来たかのように、幸成の現状を当ててくる。

不気味さを覚えた幸成は無言の返答をすると、倉敷は当たった確信を得て再び遊びに興じようぞと背中を見せる。

ここは一階一年生の教室が連なる廊下。

幸成達には用のない場所だ。

廊下に法則性のある丸が描かれているのは知っていたが、幸成は気にも留めていなかった。


「けんけんぱっぱ、けんぱっぱ」


心地良い遊び歌が廊下に響く。

丸の中に着地する足音まで心地良いとかは幻覚か。


「きみがだいすき、けんけんぱ」


今時の子供も、もうしない知らない方が多そうだとけんけんぱ。

非常に楽しそうな様子に幸成はいつまでやるのか見届けようと佇み、疑問をぼそり。


「…お前専用、なのか?」

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