第3話汝が唱える言霊を


「うでる」


うどんうでて食った。

日曜日の晩、なにを食べたのかと問われ、うどんを作って食べたと答えたのはついさっき。


「おっぽ」


動物はなにが好きかと問われたので、猫と答えたのは一昨日。

俺も好き耳が好き、と言われたので俺はおっぽと返したのは記憶に新しい。


「…むかっぱら…」


いらいらして言ったのは確かいつか。

幸成の自覚がない口癖のひとつだ。


「せっつく!」

「…さっきからなんだよ…」


そうせっつくなと倉敷に言った覚えはある。

けれどそれがなんなのか。

いい加減嫌気が差した幸成は、ついぞ質問の腰を折ることにした。


「だって幸成君がべらんめぇ口調だから」


だから分からない言葉を把握しておこうと思ってね。

星煌めく笑顔に幸成は目眩がした。

大体において倉敷は狂王の名に相応しい行動を取る。

そんなこんな行動もその一部だ。

特に最近は幸成のことを調べ上げる。

それこそ黒子の数に位置まで知ろうとする。


「…なんでんなこと気にするかね…」

「だって君のことだもの」


そうしてどこで入手したのか、分厚い本片手に調べ続ける。

まったく頭が下がる。

妥協しないから恐ろしい。

そしてもっと恐ろしいのが、悪い気がしていない自分だ。

幸成は唇を真一文字によおく伸ばし、一言呟いた。


「ご苦労なこって…」

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