第26話 新たな脅威
きそ艦長は当該宙域からの脱出は困難だと理解した。
「ここまでの戦闘データを記録。暗号化して、メモリーディスクに保存」
AIに指示を出す。即座に記録媒体に書き込みが行われ、彼はをそれを部下に託す。
「小型艇にて、当該宙域を脱出。すぐにヤマモト指揮官にこのデータを届けろ」
部下はそれを復唱して、記録媒体を受け取る。彼はすぐに小型艇へと飛び乗る。
謎の敵の攻撃は第一分隊に攻撃を継続した。
すでに残存するのは旗艦『きそ』と駆逐艦『つむじかぜ』だけであった。
両艦共に激しく損傷をしており、速度も4割程度しか出なかった。
きそ艦長は小型艇を守る為に敵の攻撃から身を挺する形となった。
次々と着弾する中、きそ艦長は乗員の脱出を命じる。
脱出ポッドが次々と排出され、最後に艦長も脱出ポッドに乗り込んだ。
脱出ポッドには推進機能は僅かしかなく、基本的には救難信号を発しつつ、宇宙を漂う事になる。
当然のことながら、脱出ポッドへの攻撃は条約によって、禁止され、尚且つ、救難信号に対しては救難義務が宇宙船には義務付けられ、救難ポッドの乗員は保護され、捕らえられた場合は捕虜としての扱いが受けられる。
彼らはそのまま、敵艦隊に捕虜とされるしかなかった。
小型艇は5日後にヤマモトの元へと到着した。
ヤマモトは分隊の全滅を確認する事になる。
得られた戦闘データは彼に大きな驚きを与えた。
「敵も有人兵器の活用を始めたか」
ヤマモトはため息をついた。
いつかはこの時が来ると思っていた。有人兵器は確かに電子戦には強い。だが、この時代の人々が感じている非人道的でもある。小型の宇宙船同士で戦えば、人的被害は確実に増えるだろう。
そもそも、大型の宇宙船より、小型の宇宙船の方が生存率が圧倒的に低いかと言えば、大抵の大型宇宙船は惑星間移動を前提に作られている。
宇宙船の動力は様々あり、古典的な物なら、燃料を燃やして、ガスを噴射する物である。次にみずからなどを圧縮して噴射する。あとはイオンや電磁波などを発する物。これらを複合的に用いてる事が多い。あと、恒星が発する粒子の力を利用して、帆船のように推進力に変える技術もある。
大型宇宙船はこれらの機構、燃料、推進材、弾薬の貯蔵を含めて、大規模な無人区画を設けないといけない。それでありながら、かつての水上艦と違って、運用には小型の宇宙船とあまり、変わらぬ人員で済むわけである。
小型挺、特に戦闘機などと呼ばれる代物は乗員員が剥き出しで乗ってるに等しく、ともすれば、ミサイルを撃破するための小型レーザー砲ですら防げないのである。
かつての特攻隊と呼ばれてもおかしくない。
だが、高度な電子戦の結果、人に頼るのは、有効であると結論付いたのである。
ヤマモトはやれやれと思った。
未だにこちらでは有人による小型戦闘機による集団戦闘は非難されている。だが、このまま、向こうが先にこの戦術を大っぴらに採用すれば、かつてのミッドウェーと同じになるのではと思った。
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