第5話:情報

 結局、見つかったのは豆の量を計る黒いメジャースプーンとドリップに使う台形の茶色いペーパーフィルター、それとハンドドリップには関係のないミルがついたコーヒ

 ーメーカーだけだった。

 あけはスマホでハンドドリップのレシピを調べ始める。画面には無数のコーヒーの淹れ方に関するサイトやブログが映し出されている。上のほうに表示されたいくつかを見る。

「書いてあることが全然違う...」

 見るものによって、書いてある豆の量、注ぐお湯の量と温度、かける時間がバラバラだった。

「でも、今ある道具だけじゃ足りないことは分かった。最低限、豆を挽くミルはあったほうがよさそう。ほとんどのサイトに挽きたてだと味も香りも全く違うって書いてあるし。あとは、重さをはかるスケールはお菓子作り用のを代用できそう」

 緋はキッチンに広げた器具を片付け、次はコーヒー豆について調べ始める。

「なんて検索したらいいんだろう…」

 緋は検索するワードが思いつかない。コーヒー豆だけでは求めている検索結果は得られないだろうと思い、少し考える。

「“コーヒー豆 選び方”でいっか」

 結局、これといったものは思いつかず適当に検索してみる。

「さすがインターネット、こんなにテキトーでもたくさん出てくる」

 スマホにはいくつもの検索結果が表示される。緋はその中から適当にいくつかのサイトを見る。

 結局、豆についても明確な答えは得られなかった。しかし、一つだけ豆についてはどのサイトにも書いてあることがあった。

“焙煎してからあまり日にちが経っていないもの”

「焙煎した日にちが分かるお店で買うのがいいのか...」

 緋は頭を悩ませる。

「焙煎した日にちが分かるお店か、そんなの分からないし」

 少し考えてスマホをソファーに放り投げ、調べるのをやめた。


 夕食を食べながら緋は父親に尋ねた。

「ねえ父、コーヒーの豆の焙煎日が分かるお店とかあるの?」

「緋コーヒーに興味あるのか、俺もそこまで詳しくは分からないが自家焙煎の店なんかならわかるんじゃないか?商店街の端にある“城田自家焙煎珈琲店しろたじかばいせんコーヒーてん”とかはどうだろうか」

「なるほど、自家焙煎か。ありがと父、ごちそうさまでした」

 緋はソファーに放り投げられたスマホを手に取り、家の近くの自家焙煎コーヒー店を調べ始める。検索結果の上位には父に教えてもらった“城田自家焙煎珈琲店”があった。

 お店がある商店街までは、自宅から自転車で学校と逆方向に10分程度の距離。緋は取り敢えず、ここにしてみることにした。

 もう少し、深く調べてみると1969年創業の老舗らしく、焙煎にはこだわっているらしい。また、3年前に代替わりしたらしい。




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