第19話 おっぱいサンドイッチを召し上がれ


 海上自衛隊のブリッジでは、一人の自衛官が疑問を口にしていた。


「隊長、あの少女は、どうして二日前に護送しなかったのですか?」

「む、そういえばお前は知らなかったな。能力者の護送は、反乱を起こされた際、我々が対応できる単位でと決まっている」

「え? ていうことは……」

「あぁ、アレの危険度は、二日前に護送した100人並ということだ」


 隊長の説明に、自衛官は背筋に悪寒が走った。


 同時に、彼女を拘束している船底から、獣の咆哮が上がったような感覚に襲われた。

 ハープーンミサイルを搭載した、最新のイージス艦ですら対応に困る個人。

 それは、どのような化物なのか。


 そんなモノが存在しうる超能力者たちが徒党を組み、政府に逆らったら、日本はどうなってしまうのか。


 自衛官は、奥歯を噛みしめ戦慄した。



   ◆



 島生活、三日目の午前は、順調そのものだった。

 まず、伊舞(いぶ)が地下に巨大な塩蔵と冷凍庫、冷蔵庫にするための部屋を作る。

 中は崩れないよう、限界まで土を圧縮して、床、壁、天井は大理石のようになっている。


 それから、冷蔵室には、俺が氷の柱を立てまくって、部屋全体を低温状態にした。電気を使わない、昭和中期の冷蔵庫と同じ仕組みだ。


 冷凍室は、乙姫(おとひめ)の能力で部屋全体をマイナス40度まで下げてから、俺の能力で部屋の壁を分厚い氷で覆う。これで、部屋は数十日にわたって零下を保つだろう。江戸時代からある、氷室と同じ原理だ。


 最後に、塩蔵には、昨日と二日前に作った塩を、水瓶に入れた状態で並べておいた。


 ちなみに、地下への入り口は、雨水が入らないよう、50センチほど高くなっている。

 中に入るには、段差をのぼる必要がある。


【冷蔵室】解決★

【冷凍室】解決★

【塩蔵】解決★

 

 朝食を食べ終えると、またみんなで海に行って、一トン分の塩と、50キロ分の重曹と、各種金属のインゴットを持って村に帰った。


 村では、魚などの各種食材を冷蔵室、冷凍室に運び込む作業が終わっていて、さらに、伊舞が頼んでいた各種素材も、昨日以上にそろっていた。


 伊舞は、その素材から石鹸、歯磨き粉、シャンプーを作る作業に入り、俺と茉莉(まつり)、乙姫は、海で取ってきた塩や重曹、金属のインゴットを、塩蔵に運び込んだ。


「ところでキョウヘイちゃん、重曹と塩を同じ倉庫にしまっていいんすか? 重曹と塩を間違わないっすかね?」


 階段を下りる途中、茶髪のツーサイドアップを左右の手でもてあそびながら、茉莉はくちびるを尖らせて疑問符を浮かべた。


 かわいいと思ったら負けた気がするので、俺はくちびるから視線を逸らした。


「だから反対側の棚に並べるんだよ。それに、重曹は食べても問題ないし、問題ないだろ。調理にも使うんだし」


 重曹の入った水瓶を抱え、自然、豊満すぎる胸の谷間で挟んでしまうような形になる乙姫が、長い赤毛を上下に揺らしながら明るく言う。


「まっ、他の家も直し終わって、伊舞に余裕ができたら備品庫を別に作ってもらえばいいんじゃない? それより、和美(なごみ)の捜索能力がハンパないわよね。農業高校だから山菜に詳しいのはわかるけど、伊舞が頼んでいた材料も、ほとんど和美が探し当てたらしいじゃない?」

「だよな。まるで警察犬だよ」


 灯りとして頭上に火の玉を出す乙姫の言う通り、昨日と今日における、探索チームのMVPは和美らしい。


 石鹸やシャンプー、歯磨き粉の材料である、粘土、植物性グリセリンの採れる大豆、ハッカなどのハーブ類、油の豊富な松の木なんかが全てそろっているのを見たときの伊舞は、心底驚いていた。


「心愛(ここあ)や守里(まもり)もだけど、謙虚な奴に限って優秀だったりするよな。これも、能ある鷹は爪を隠すってやつかな」


 重曹入りの水瓶を棚に置きながら、乙姫はしみじみと頷いた。


「そうよねぇ、あたしのように謙虚で奥ゆかしくておしとやかな女の子に限って爪を隠すものなのよねぇ」


 ――え!? 乙姫ってそういう自己評価なの!?

 俺は、金属のインゴットを棚に置きながら、返答に困った。


 すると、乙姫が頬を染めて睨んできた。

「ちょっと、ツッコみなさいよ」

「え? ツッコんでいいのか?」

「ツッコみなさいよ。あたしだって、自分の性格ぐらいわかっているんだからね。乙姫とか名前つけた親を恨むわよ。今からでも勝手に改名しちゃおうかしら、竜子(たつこ)とか」

 乙姫は、ちょっとスネたように顔を背けた。


「いや、乙姫は乙姫でいいよ」

「む、恭平ってばあたしのことバカにしてる?」

「いや、ただ、自分の勝気な性格を気にしちゃうところが、可愛くて姫っぽいなって思っただけだよ。ん、どうした?」


 乙姫は、なぜか壁に額をつけていた。ちょっと震えている。

「あんたさ、そういうこと、誰にでも言ってんの?」

「は? 何が?」


「ぐぅっ! ココアちゃんだけでなくオトヒメちゃんのハートまでものにするとは! はっ、ということはマツリがキョウヘイちゃんを攻略すれば、全ての女の子はマツリのモノに! キョウヘイちゃん、昨晩のお詫びもかねて、今日もマツリと一緒にお風呂に、お背中流しますっす!」


 顔を真っ赤に染め上げながら、茉莉は犯罪臭のする顔で、指をわきわきさせながらジリジリと迫ってきた。


「思い出させるなよ!」

「黙るっすよ! あの黒歴史を合法化するにはもうマツリたちは付き合うしかないんすよ! 幸い、ビキニ姿でお風呂を一緒にしたマツリは今! キョウヘイちゃんと一番進んだ関係を持ったオンナっす!」

「待て、早まるな! うわぁ!」


 俺の制止も効かず、茉莉が抱き着いてくると、彼女のおっぱいの感触を、胸板で感じてしまう。


 お互いに薄着の夏服で、互いのシャツと茉莉のブラ、布三枚越しに、彼女のオンナノコを感じてしまう。


 ――やわっ、つかマジできもちぃ。


「ちょっ茉莉、やめなさいよ! 恭平困ってんでしょ!」


 背後に、茉莉の1・4倍はあるボリュームがぶつかってきた。

 左右のおっぱいで二乗、実質、1・96倍の量感だ。

 メロン大の低反発力はドーム状に押しつぶれて、俺の背中全体に広がっていく。

 得も言われぬ快楽が心臓にまで伝わって、脳髄がトロけそうだった。


 ――すごい、これが、女の子のチカラなのか……。


 正直、俺の奥の手を使っても、勝てる気がしなかった。


 この豊乳こそが、乙姫最強最大の超能力、そんな気さえする。


 まさに前門の大乳、後門の豊乳。


 ボリューミーなおっぱいサンドイッチに、知能指数を吸い取られ、俺の脳味噌が偏差値25ぐらいまで退化してしまう。三郎のことを馬鹿にできない。


 そこへ、心愛の悲鳴が飛び込んできた。


「恭平君タイヘン! 伊舞ちゃんが!」


 退化した意識が、頭を金づちで叩かれたように覚醒して、心愛へ振り返った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 今回も本作を読んでいただきありがとうございます。

 みなさんのおかげで本作はフォロワー数900、PV数45000、ハート数800、星数250を達成です。みなさん、全力でありがとうございます。

 また、本作とは別に

【美少女テロリストたちにゲッツされました! 修学旅行中にハイジャック!?】(ラブコメ)

【冒険者ギルドを追放された俺が闘技場に転職したら中学時代の同級生を全員見返した】(現代ファンタジー)

【冒険者王】(異世界ファンタジー)

【闇営業とは呼ばせない 冒険者ギルドに厳しい双黒傭兵】(異世界ファンタジー)

 などを投稿しています。

 暇つぶしにでも読んでいただければ幸いです。

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