第18話 美少女たちとのお風呂イベント

 有史以来、女子の風呂は長いものと決まっており、51人もの女子が全員入り終えるともなれば、その時間は想像を絶する。


 だからこその大浴場なのだが、自宅の風呂など足元にも及ばないキャパシティを以てしても、全ての女子を満足させるには三時間もかかってしまった。


 つまり、俺が風呂に入ることができたのも、三時間後ということになる。


 おかげで、村は誰も住んでいない家々にいたるまで氷の塀で覆われ、庭にはあらゆるゲームキャラの氷像が並び、道々には量産型ザ●クが一個大隊分も待機することになった。


 巨大ロボは女子受けが悪いと乙姫に言われて、途中からは思い出せる限りのゆるキャラを作ったが、うろ覚えのせいかコレジャナイ感が半端なかった。


 けど、乙姫は大爆笑してくれた。


 サッポロ雪まつりも真っ青の、氷像まつりだ。




「さすがに、けっこうお湯が減っているな」


 シャワーなんてないので、シャンプーや石鹸を洗い流すときは、バスタブのお湯を桶にすくって使うことになる。


 必然的に、お湯も目減りするというわけだ。


 ――三郎なら、51人の巨乳美少女が浸かったお湯として喜ぶのだろうか? あいつは今、どこで何をしているんだ?


 明日以降、のこのこと戻ってきた三郎をどうするかは、みんなで相談して決めよう。


 少なくとも、俺が積極的にかばうことはもうない。


 畳んだタオルを頭に乗せて、お湯に浸かると、あまりの心地よさに思わず息が漏れた。


 体の奥から、疲労物質がお湯に溶けだしていくのがわかる、気がした。


 まるで、一週間ぶりのお風呂かと思うほどの感動が、頭の奥に、じぃーんと染み渡る。


「はぁ、やっぱ、風呂はいいな。これがあるだけで、無人島サバイバル生活感がなくなるぜ」

「そうっすねぇ……」


 ――――――――――――――――――――――――――――――ん?


「ほぁっうり!?」

 驚き過ぎて、茉莉の名前を発音できなかった。


「あ、どうもっす、マツリはマツリっす」

 茉莉はあっけらかんと手を挙げた。


「いやいやいや、なんでお前入ってきてんだよ!?」

 両手で股間を隠しながら、俺は叫んだ。


「それが聞いてくださいっすよキョウヘイちゃん!」


 途端に、茉莉は血の涙を流さんばかりに叫んだ。

「マツリは悪くないんす! ただマツリの念力が【欲望】のままにみんなのバスタオルをはぎ取り、この右手が【本能】のままにみんなの巨乳豊乳爆乳をこねくり回し、この左手が【獣欲】のままにみんなの巨尻をもみしだいただけなんす! たったそれだけのことでマツリを追い出すなんてこれは重大な人権侵害っす! マツリはすべてのマツリが平等におっぱいを揉める権利を主張するっす!」


「自業自得じゃねぇか!」

「魂の赴くまま、己に正直に生きたと言って欲しいっす!」

 自信に眼を輝かせながら、茉莉は胸を張った。


 ドキンとしながら視線を落とすと、マツリのおっぱいは黒いマイクロビキニに覆われていた。


 ――いや、当然か。ほっとしたような、残念なような。いや、俺は何を考えているんだ!


 ビキニに包まれていても、茉莉のおっぱいは程よく大きくて、深めの谷間が刺激的だった。


 ――ていうか、ナマ谷間、初めて見たかもしれない。何せソロ充ですから。


「でも、なら俺が上がってから入れよ」

「え~、一人で入ってもつまらないっすよ。こうして水着を着てるんだからいいじゃないっすか」

「いや、俺ははいてないから!」

「まぁまぁ、お気になさらず。マツリは男の裸なんて弟のオムツを替える時に見慣れてるんすから。ほらほら、恥ずかしがらずにマツリお姉さんに見せてみるっすよ」

「わっ、こら、やめろ! お前これ冗談じゃ済まないから! おい念力を使うな! あ、あっ、あ! あぁああああああああああ!」

「ほうらキョウヘイちゃんのベビーちゃんにご対面――――ッッ!?」


 俺は、底なしの喪失感で頭がいっぱいになった。


 茉莉は、限界まで目を丸くしたまま固まった。


 それから、バスタブのふちに肘を乗せ、両足を組み、ふんぞり返りながら俺から視線を逸らした。


「マ、マツリは大人のレイディですから。まま、まったく、この程度で動揺しちゃって、キョウヘイちゃんはカワイイっすね。アハッ、アハッ」


 コンマ一秒後、小声でまくしたてる。


「なんすかアレなんすかアレ、弟のと全然違うっす! 何がどうなってるんすかアレ! もうわけがわかんないっすキョウヘイちゃんの顔見れないっす!」

「言っておくけど俺のほうが傷ついているんだからな!」


 ――なんかもう、泣きたい。俺のファーストコンタクトを、こんな形で奪われるとは思わなかった。


 そこへ、騒がしい足音が近づくと、脱衣所のドアがガラリとスライドした。


 伊舞と乙姫が顔を出す。


「恭平! こっちに茉莉来ていない!?」

「茉莉! あんたいま男子の時間!」


 俺と、二人の眼が合った。

 二人の顔が、一気に赤く染まった。


「「イヤァアアアアアアアアアアアアアア!」」

「ぎゃあああああああああああああああ!」


 底なしの喪失感の、さらに底を見た。


【お風呂】解決★

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