第三話「罠」

レイラとカーポは、逃げだした最後のインプを追って、森をさらに奥深く進んでいた。


「あいつ、バカだねー。こんなにくっきり痕跡残しちゃうなんて」


「油断するなよ、レイラ。小賢しいインプのことだ。罠があったって不思議じゃない。」


逃げたインプを追いかけるレイラとカーポ。

そのインプが残したと思われる足跡に従って、歩みを進めていた。


「やっぱり、なんだか怪しいよ。それに、足跡の残り方がわざとらしい。まるで、見つかることを望んでいるみたいに不自然だ。ここは慎重に……」


「そんなの、全部ぶっ飛ばせばいいじゃない。任せてよ!」


カーポの心配をよそに、レイラは足跡が続く先へと駆けていった。


「おい、まてよ! ……もう! 話を聞きやしない!」


カーポは慌てて、レイラの後を追っていった。


*


「随分奥まで逃げたのね……、ってありゃ、ここで終わり?」


草木が生い茂る深い森の中で、足跡は途切れていた。


「なんだか既視感があるぞ……、ってやっぱりだぁ!」


カーポが悲鳴を上げる。視線の先には影がふたつ。

先ほど逃げたインプと、それよりも二回りは体の大きいインプの、二体だった。


「なななんだかこいつ、他の奴と雰囲気が違くねぇか!?」


「……ふうん、あんたがあいつらのボスってわけ。いいわ、落とし前つけてもらおうじゃない」


レイラの表情が引き締まる。


「クキキ、ウギッ!」


リーダー格のインプが、レイラを挑発するように、奇声を上げた。


「な、なんだよ、挑発でもしてんのか? ごあいにくさま。そんな安い挑発になんか……」


そこまで言ってカーポは、ふわっと、すぐ隣で風を感じた。

なんとレイラがまっすぐにインプ達に向かって走り出していたのだ。


「私を怒らせたこと……、あの世で後悔するのね!」


「……ってもう! 慎重にって言っただろ!」


レイラはカーポの言葉も意に介さず、まっすぐに走る。

それを、インプは余裕綽々の構えで待ち受ける。


もうすぐ、レイラの拳が届く距離になる……、その瞬間、

レイラの足元が沈んだ。


――罠だ


それに気づいたレイラは急速に速度を落とし、立ち止まろうとした。

しかし今度は、鋭利な刃がレイラを襲った。


突如、地面から飛び出した巨大な鋼鉄の牙が、レイラを挟み込むようにして襲い掛かったのだ。


「うおおお、なんでこんなものがあるのよ!」


レイラは逃げようとしたが、牙は目前まで来ている。身を引く暇はない。

そのまま、鉄の牙はうなりを上げてレイラを襲った。


ガチャン、と金属の鈍い音が響いた。

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