第129話「ラサ遺跡」

 まずは地下一階。

 砂を固めて作ったような壁を横目にまっすぐ進む。


 どことなく砂っぽい感じがするダンジョンで、人気がないのはわからなくもない。


「敵ですね」


 とジーナが指摘すると、前方から全身を包帯でぐるぐる巻きにした人型のモンスターが出現する。


 ミイラ。

 生き埋めになったり、餓死した者の怨念が具現化したと言われる存在だ。


 動きは速くないし、特殊な攻撃もしてこない。

 火属性か光属性、あるいは魔法攻撃を持っていれば苦もなく倒せるザコ敵だ。


 ただしほかのアンデッドモンスターといっしょに出てきて、肉壁のかわりになると厄介になる。


「俺がやろうか?」


 ミイラ二体くらいなら誰でも倒すことはできるだろう。

 目的を考えれば消耗しにくい、あるいは回復が優れている者が担当するといい。


「……いえ、サラ様にお願いします」


 カレンは首を振って自分の判断を告げる。

 大したことがないからこそ、サラとティアに経験を積ませる狙いか。


「了解」


 俺とサラは同時に返事をして、サラの攻撃が通りやすいように前衛組が立ち位置をずらす。


「ホーリーレイ」


 サラが光の属性魔法を放ち、ミイラ二体を葬る。


 ミイラを一撃で倒すのはおかしくないが、ホーリーレイを使うには本来レベルが足りないはずだ。

 

 これが主役の特権みたいなものだ。


「見事だな」


 俺が褒めるとサラは小さく目礼する。

 続いてまっすぐに奥へ進んでいき、


「敵ですね。ミイラが三体です」


 とジーナが告げた。


「ジーナ殿こそ見事な探知能力ですね。ここまでスムーズとは」


 カレンは感心しながら、


「次はティア様にお願いしたいと思います」


 と指示を出す。


「うん」


 ティアはと言うと剣を抜いて駆け出し、三体のミイラをあっという間に薙ぎ倒してしまった。


 この子もレベルに似合わず相当に強い。


 現時点でジーナに勝てるとは思わないが、レベル上げを続けたらわからなくなるだろう。


 ジーナは驚きもせず、じっと彼女とサラを観察するような顔つきをしている。

 そんなジーナと俺に視線をやりながらカレンが言った。


「このように敵が多すぎない場合は、交代で倒していくというのはいかがですか? 連携の訓練にはなりませんが……」


「敵がまとめて一撃で倒せるなら、連携のしようもないしな」


 と俺は彼女のやり方を認める。


 もうすこし敵が強くなればカレンやティアが止め、その隙をジーナや俺が狙い、サラが傷を回復するといった分担になるだろう。


「では次はジーナ殿かラスター様にお願いできますか?」


 とカレンに頼まれる。


「そうだな。俺が先にやろう」


 と言ってジーナは小さくうなずいた。

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