第130話「ラサ遺跡②」

 現れたのはスケルトン二体だったので、


「サンダー」


 魔法一発でしとめることができる。

 狭いダンジョンは不利に働くこともあるんだが、こういうときは楽だ。


「ただのサンダーで簡単に……」


 とティアがつぶやく。


「すごい。信じられない」


 とサラも驚いている。


 一応、魔法攻撃なら有効な場合が多いんだが、ふたりはまだ経験不足ということかな。


「いえ、アンデッドに有効な効果が付与されていますね。だから一撃で複数を倒せるのでしょう」


 カレンが首を振って指摘する。

 彼女はレベルも高く経験もあるだけに見抜けたようだ。


「まあ実はな。カレン殿はさすがだな」


 見抜かれた以上肯定はしておこう。

 ついでにカレンのことも褒めておく。


「いえ、さすがなのは高等技術をさりげなく実践していらっしゃる、ラスター様のほうですよ」


 素直に喜ばれるとは思ってなかったが、苦笑とともに指摘を返される。

 高等技術? 何のことかわからないが、顔には出さないよう気をつけよう。


 意味ありげな笑みを浮かべるだけにとどめる。


「すごいなぁ」


 ティアのまなざしには尊敬がこもっていてくすぐったい。

 

「感心してばかりではいられませんよ、ティア」


 とサラが彼女に話しかける。


「いまのままでは、わたしたちは彼らの足手まといです」


「あ、うん」


 サラの優しくも厳しい指摘にティアは表情を引き締めた。


「そんなに気負うなよ。あとで返してくれればそれでいいさ」


 と俺は笑う。

 たぶん大丈夫だと思うが、ふたりの気合いが空回りするほうが面倒だ。


「恐れ入ります」


 サラは淡々と頭を下げる。


 ティアも真面目で義理堅いタイプだが、彼女はそれ以上なので返してもらうときが楽しみだ。


 帝国から亡命する際、かくまってもらいたい。


「では探索を続けましょう」


 ちらりとカレンを見やると彼女は気づいて言った。

 探索中のすり合わせは重要だが、切り替えも大事だ。


 ジーナが戦う前に二階への階段にたどり着いたので下に降りる。


「今日は何階まで行く予定なんだ?」


 と俺はカレンに聞く。

 先に決めておかないのはよくないが、それもまた練習のうちと思っておこう。


 ジーナとふたりだけのときも、厳密に決めて動いてたわけじゃないし。

 

「……深入りするのは危険なんですけどね」


 カレンはこっちを見る。


「ダンジョンの外に脱出可能なアイテムは持ってきていますか?」


 苦笑しているのは、入る前に打ち合わせしておくべき案件だからだろうな。

 

「持ってきてないよ。敵の強さ次第だが、三階までを往復するのはどうだろうか?」


「そうしましょう」


 俺の提案にカレンは同意し、


「今回のこれは悪い見本ですからね」


 とティアとサラに説明する。

 俺も苦笑してうなずく。

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