第103話「俺は大したことがない(自己分析)」
「他に現実的なアイデアはないぞ。俺たち四人でリスクを抑えて強くなるなんてこと自体、本来とても難しいってのはわかるだろう?」
と俺が言うとサラはうなずき、ティアはしゅんとうつむく。
「失礼ながら意外と現実的な方でしたね」
サラは表情を若干やわらげて俺のことを評価する。
帝国皇子って肩書だからか、それとも他の要因か。
いずれにせよ第一印象と比べるとイメージアップに成功したらしい。
もっとも、もっと仲良くなれたら微笑くらいは見せてくれるのがサラだから、まだまだ道のりは遠そうだ。
「俺は大した才能がないから、現実的な手段を選んでいかないと命にかかわるんだよ」
これは自虐でも謙遜でもなく、ただの事実である。
ラスターは才能に乏しい落ちこぼれ皇子だし、中身の俺は何のとりえもないぼっちだった。
原作知識があるという点が唯一のアドバンテージに過ぎず、だから勘違いしたり驕ったりせずにやっていかなきゃ。
強くない人間だから、定期的に自分を戒めないと。
なんて考えているとティアがじっとこっちを見ている。
「そういう考え方、すばらしいと思います」
「うん?」
いったい何が彼女の琴線に触れたというんだ……!?
正直困惑のほうが圧倒的に勝ってしまって、彼女の好感度があがっている喜びがわいてこない。
「やっぱりダメでもともとだから、お願いしてみたいな」
とティアはサラに目を向けて頼み込む。
「……わかりました」
サラは目を閉じて長く、長く息を吐き出す。
「確約はできませんが、言うだけは言ってみましょう」
「ありがとう!」
喜びで顔を輝かせたティアが彼女の手を握る。
「いえ」
サラは困惑半分、照れ半分という面持ちで受け止めていた。
キラキラと二人だけの空間が生まれかけているので、俺は何も言わずにジーナが淹れたお茶を楽しむ。
美少女と美少女が醸し出す尊い空間をながめながら、美味しいお茶を飲むってなかなか得がたい経験なんじゃないだろうか。
「何でしょう?」
やがて俺の視線に気づいたらしいサラが、ティアから手を放してこっちをじろりと見る。
「いや、仲いいなと思って」
俺は当たり障りのない答えを口にした。
「えへへ」
ティアは頬を染めてうつむき、うれしそうに右手で前髪をいじる。
「まあそれなりの付き合いですから」
サラのほうはすまし顔を崩さない。
感情のコントロールという点では彼女のほうがずっと上手だ。
「進展があったら声をかけてくれ。念のために聞いておきたいんだが、俺たちの年齢でも入れるダンジョンってある?」
この問いはサラに向ける。
「あることはありますが、外国人の立ち入りが認められるかは別問題だと思います。地元民が入る分は寛容だったりするのですが」
彼女は眉を動かし、若干申し訳なさそうに答えた。
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