第69話「今後のプランその3」

 皇帝からの無茶振り……もとい命令を一回整理してみよう。

 ジーナならともかく俺は混乱している可能性がある。


 留学先は王国の王立王都学園の中等部。

 これは原作でも設定で登場していたので、予想外じゃない。


 留学するタイミングは一か月後なんだが、これは俺じゃなくて周囲にとっての無茶振りだと言える。


 だって引っ越しの準備や受け入れの用意をするのは俺じゃないからだ。


 衣類や家具、住む場所、その他備品を手配するのはおそらくガイムで、ジーナとやりとりすることだろう。


 その間俺は自由に動けなくなるのが厄介だった。

 ジーナ抜きだといろんな点で不安が残ってしまう。


 特に不意打ちに弱い。


 現段階だとまだないと思うが、一応ロイド兄あたりが̻刺客を送ってくる可能性はゼロじゃないと考えるくらいのほうがいい。


 マハト兄はおそらくまだ俺なんて眼中にないだろうし、アローガ兄が目下のところのライバルだから、そっちに意識を持っていかれていると思う。


 アローガ兄も同様だ。

 

 せっかく時間があいたので、修正するのがほぼ確実になった今後のプランについて考えてみよう。


 おそらく俺が送り込まれるのは王都の貴族街である。

 これは原作でもラスターがジーナと二人で暮らしていた場所だから、ほぼ決まりだろう。


 違いが出るとしたら今回は皇帝の評価が多少上向きになっている点だ。

 傲慢で利己的な父親だが、少なくともケチじゃない。


 息子が期待できそうならそれなりに金を使うだろう。


 兄たち三人はそれで何人もの部下を持っているし、いい教育を受けさせてもらっている。


 俺の場合はまだ三人ほどの評価を得ていないはずだが、それでも現地には護衛を兼ねた執事とメイドが二人くらい送られる可能性はある。


 どこまで信用していいのかという問題があるが、「皇帝や他の兄の厚意」をはねつける力が今の俺にはない。


 受け入れるしかないのだった。


 そして二人が俺の行動を監視して帝国に情報を送ることを想定すると、行動に制限が生まれてしまう。


 こちらの世界の人間に「低レベル踏破ボーナスを集める」という発想はないと思うが、なるべくライバルを強化するヒントは与えたくない。


 そうなってくると、俺がとるべき行動は王都から日帰りで行ける範囲で、なおかつ中等部の学生が出入りできるダンジョンにかぎるわけだ。


 一応入り口は低レベルダンジョンで、その後転移装置で高レベルダンジョンにワープできるところも王国にはある。


 だが、あそこはジーナと二人で行くのは自殺行為すぎる。

 二人で行くならレベル80くらいはほしい難関だからな。


 その手前の中層地帯が妥当だろう。

 それとも誰か仲間を増やすか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る