第60話「分かるわけないやつ」

 雷の川は階段を昇り降りするビル式じゃなくて、奥へ奥へと進んでいくコイン式のダンジョンである。


 由来は紙の通貨を「ビル」、金属の通貨を「コイン」と呼ぶことから、建物のほうのビルとかけた結果らしい。


 最初説明を見た時「分かるわけないだろそんなもん」と思ったのは俺だけじゃなかった。


 今にしてもこの呼び方がよく定着したなって思う。

 思考を雷の川に戻そう。


 ハニワは遺跡タイプには必ずと言っていいほど出現する人造モンスターで、俺やジーナにとって旨味のない雑魚敵だ。


 ゴーレムもハニワに近いタイプの人造モンスターだが、こっちは厄介な敵が多い上にまれに落とす「ゴーレムコア」はできたら欲しい。


 なるべくハニワとは遭わないことを祈りながら先に進んでいると、黒い金属製のドアに行き当たる。


 ジーナがドアを開けると中には木のゴーレムが鎮座していた。


 今回のダンジョンで進むことを優先している理由がこれで、エリアボスのゴーレムを倒さないと次のエリアに行けないのである。


 ゴーレム自体の強さは雑魚敵で出るタイプと変わらないので、ぶっちゃけ低レベル踏破ボーナスを簡単にとられないための対策だとしか思えない。

 

 雷の精霊石とゴーレムコアを狙う時にお世話になるが、そうじゃなかったらもっと評判悪かっただろうな、雷の川。


 ゴーレムは普通にジーナの敵じゃないので、あっという間に撃破される。


「あるじ様、ドロップアイテムをおたしかめください」


 彼女が差し出したのは「ゴーレムの設計図」だった。

 これ生産系職業じゃないと使わないなぁ……まあいいや。


 「帝国の遺跡のゴーレムの設計図」なら、主人公サイドのキャラクターたちが欲しがるかもしれない。


 マッド科学者タイプのキャラクター、いることはいるし。


「一応売らずに確保しておいてくれ」


「御意」


 ジーナに指示を出して奥に行く。

 このダンジョンの最奥は第六区画だから、あと五つだ。


 第二階層に入ってほどなくして宙に浮かぶ黄色い球体が出現する。

 バチバチと黄色いエフェクトが特徴的な、サンダーエレメントだ。


「アクアショット」


 水魔法を当てたところでジーナがとどめを刺す。

 まだまだ二撃くらいで倒せるようだ。


 あんまり序盤のうちからタフで強い雑魚敵に出て来てほしくないが、この辺は原作に忠実だと言えるだろう。


 少なくとも今のところは。


「あるじ様、精霊石です」


 ジーナに見せられたものはたしかに雷の精霊石だった。

 

「うん、ドロップ率アップがいい感じに作用しているな」


 少し良すぎる気もしているが……まずは喜んでおこう。

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