第59話「雷の川へいこう」

 城にある武器屋でジーナが手に入れてきた水属性の短刀は「アイスダガー」だが、お値段は5000程度である。


 こっちの通貨、帝国ルダはだいたい一円計算だったから5000円か。


 原作ゲーム序盤だとそこそこ高いが、日本の感覚だとそこまで高くないような気もする。


 まあ原作と違って帝国産の装備なら高くて質がよくなっている、ということもないわけだが。


 皇子が持ってる資産を使わず、冒険で稼いだ金をコツコツ貯めていたおかげでまだまだ予算には余裕がある。


 やはり大事なのは日頃からの積み重ねと貯金か。

 そしてレベル24になるまで火のほこらでレベル上げをおこなった。


「じゃあ『雷の川』に行くか」


「はい」


 そしていよいよ雷の川に行く日だ。

 雷の川は城から見て南に位置しているダンジョンで、片道五時間くらいかかるらしい。


 これじゃ完全に遠征なので途中で休憩が二回くらいほしいな。

 ここまで順調すぎるくらいに順調なので、あせりはわいてこない。


 さすがの主人公も十二歳でシナリオがはじまる前に何もできないだろ。

 二時間くらい経過したところで一度休憩し、さらに一時間後に昼休みをとる。


 ジーナだってずっと騎手をやり続けるのも大変だから、休めたほうがうれしいだろう。


 ……と思ったけどかなりタフな子なので、休憩で喜んでいるのは案外馬のほうかもしれない。


 馬は鞍をとって休ませ、水を飲ませてまぐさを食べさせている。


 馬で行き来するのが普通という設定の世界だからか、馬を休ませるポイントはけっこう整備されていた。

 

 上下水道よりもはるかに重視されているように思う。


 こっちの世界だとトイレや水は、マジックアイテムである程度何とかできてしまうという事情もありそうだが。


 馬が目に映る位置で腰を下ろし、ジーナお手製の弁当を食べる。

 正確に言うとこっちには「弁当」はなく「携帯食」があるだけだ。


 さすがにスープはなかったが、焼き野菜と厚切りベーコンをはさんだ白パンを食べる。


 保存用アイテムのおかげで、鮮度が悪くないものを食べられるのはありがたい。

 やっぱり美味いものを食べられるほうが元気も出る。


 こういうアイテムのおかげで一部は日本の時よりも便利だと言えた。

 じっくり考えてみれば珍妙で不思議な世界観である。


 真面目に考察したって俺の知能じゃ大したことわからないと思うので、すぐに思考を「攻略」に切り替えた。


 雷の川は遺跡の中央部に大きな電流が走っているというダンジョンである。

 ハニワや土ゴーレムなどが出現する他、サンダーエレメントも出る。


 サンダーエレメントは「雷の精霊石」をドロップしてくれる存在だ。

 まあ低レベル踏破ボーナスをゲットしてから狩るんだが。

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