第25話「いい意味で計算違い」

 まっすぐ進んでコボルトファイター一匹をジーナが倒し、第三階層へ到達する。


 そこは大きな楕円形の広場があるだけで、コボルトアーチャー二匹、コボルトファイターが二匹いた。


 ウインドショットが届かない距離である。


「ジーナはアーチャーを片づけてくれ」


 コボルトファイターはどうするのかって?

 あいつらの行動パターンを考えれば何とかなるだろ。


 指示を聞いたジーナは突風のような速さでコボルトアーチャーに襲いかかり、あっという間に二匹の首をはねてしまう。


 コボルトファイターは一匹は俺に向かってくるが、一匹はジーナに向かう。

 思った通りだ。


 コボルトはたしかにゴブリンより頭がいいのだが、仲間を殺した強敵は後回しにして、まず貧弱な魔法使いから倒す──なんて考えるほどじゃない。


 二匹ともジーナにいなかったあたり、ゴブリンより頭いい個体がいるんだなと思っていいかもしれないが。


「ウインドショット」


 距離がある状況で戦闘開始になったのだから、当然のように魔法使いの俺のほうが有利だ。


 近づいてきたコボルトに風魔法を叩きこみ、一撃で仕留める。

 うん、これは俺にとって大きな一歩だった。

 

 状況さえコントロールすれば、コボルトをタイマンで倒せるとわかったんだから。


「お見事です」


 とジーナは俺を褒めつつドロップアイテムを回収してきた。

 

「矢が二本だけですね」


 ちょっと彼女は不満そうに言うが、ドロップ率は100%じゃないから仕方ないんだよな。


 まあコボルトたちはドロップしてほしいアイテムを落とすわけでもないし。

 そして第四階層に到達する。


 普通ならボスがいるだろうと思ってたけど、ここのダンジョンにはいないらしい。

 ……いい意味で計算違いが起こったな。


 一応ダンジョンクリアがレベル5以下でなら、特別称号「タイムアタッカー」とスキル「プレコ」をもらえるんだっけ。


 プレコはもらえる経験値が1.1倍になるという序盤で、特に俺にはありがたいスキルだ。

 

 ラスターでとるのは現実的じゃないと決めつけて、考えないようにしていたんだが、第四階層を進んでも敵に遭遇せず、最奥の部屋に到達する。


 最奥の部屋は白く発光する魔法陣があるだけで、これの上に乗ればダンジョンの入り口まで戻ることができる。


 そして最奥まで踏破したことを記録してくれるのだ。


 初心者ダンジョンだと大して意味はないかもしれないが、称号とスキルをもらえるならやる価値はある。


「行こう」


 じっと俺の指示を待っていたジーナに声をかけ、二人で魔法陣の上に乗った。

 そして俺たちはダンジョンの外まで飛ばされる。

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