第8話 ラブコメってなんだっけ?
「てなわけで、ちょっと
今まさに廊下に出ようとしたところで、俺の腕をがっちり掴んでいる
俺は信じてるぞ蜜。
『 私のお兄ちゃんを連れてかないで!』
と言ってくれるのを!!!
「あ、どうぞどうぞ。むしろそのままひーちゃんにあげちゃうよ?」
「あの、蜜……?」
あまりにもあっさりと受け入れるどころか、どうぞどうぞといった
まさか、ね?そのまま兄である俺を見捨てるなんてことは無いよね?
「むしろそのまま返さなくてもいいから」
そのまさかであった。
「蜜さん……?」
「それはちょっと困るかなぁ〜」
しかも陽ちゃんに拒否られる始末。
「あの……、せめてそういうやり取りは俺のいない所でやって欲しいかなぁ……。結構凹みやすいんだぞ、俺……」
もはや俺の心の中は大洪水である。
「そんなメンタルへなチョコな桜夜先輩、ちょっとあっちの方行きましょうか」
「う、うん……」
俺にはもう抵抗する気力なんてなかった。
そのまま、陽ちゃんの誘導されるまま俺は廊下に出た。
まぁどっちにしろ抵抗する気はサラサラなかったんだけども。
ただまぁ……
「行ってらっしゃ〜い」
「あぁ、妹に笑顔で送り出されてる兄って……」
妹に軽くあしらわれるのはやっぱりしんどいものだ。
「いいから行きますよ!……ったく、どっちもめんどくさいなぁ」
そう言うと、陽ちゃんは俺の腕を掴む力を少し強め、そのままを人気のない場所、階段の裏側へと俺を引っ張りこんだ。
「えっと……それで?こんなところで何するの?」
俺は解放された腕に握り跡がついていないかを確かめながら、恐る恐る連れてこられた
すると
「分かりませんか?正直あんまり人がいるところではする話では無いので移動したんですが」
と、真剣ながらも困ったような顔をする陽ちゃん。
しきりに目線をチラッ、またチラッとそらすのが気になったが
「あぁ、なるほどね……」
俺は何となくわかってしまった。
やはり
「分かってくれたようでよかったです。それで早速本題に入りたいんですけど」
どこかホッとする陽ちゃん。
だが次の瞬間
「俺をここに誘導して、紫月のファンたち全員でボコボコにする気なんだね……?」
俺は絶望感を味わっていた。
“ 終わった……”
俺の本能が今度こそそんなことを訴えかけたのだ。
だが陽ちゃんは何が何だか分かっていないのか
「はい?桜夜先輩大丈夫ですか?」
と困惑している様子だった。
おそらく俺の早とちりだったのだろう。
それでも俺は止まらなかった。止まれなかった。
「いいさ、覚悟は出来ている……。あ、でも急所だけはやめてね?俺まだ生殖機能失いたくない……。せめて童貞卒業するまでは……」
もはや
「えっと……何か勘違いしてません?私そこまで鬼畜じゃないですよ?……まぁ、先輩がそこまで言うなら急所だけをひたすら蹴り飛ばしますけど?」
俺が勘違いしているとわかった陽ちゃんは、鬼畜じゃないといいながらもかなり鬼畜なことを言い出した。
しかし、陽ちゃんのその言葉で俺はようやく勘違いだったと気づいた。
「えっ、違うの!?じゃあなんで俺をこんな人気のないところに連れ出したの!?」
「それは……その……」
俺が理由を聞くと、陽ちゃんは途端に口をもごもごさせ始めた。
「その?何……?」
一体俺は陽ちゃんに何を言われるのだろうと待っていると、
「昨日の返事を聞きたくて……。悪いですか!?」
半ギレ気味に陽ちゃんがそう言ってきた。
「昨日の……返事……?」
一体何を、と思っていると
「そうですよ。もしかして覚えてない、とかないですよね?」
続けざま、そして食い気味に俺に詰め寄る陽ちゃん。
近い近い近い!!!!
階段の裏側という、ただでさえ狭いところで詰め寄られてしまえば自ずと、密着度も高まる。
時期が違えば、『 密です!』と言われるだろうくらいには。
そして体の密着度が高まれば女子特有の柔らかさもそうだが
「い、いや、そんなんじゃないよ!?ちゃんと覚えてる!覚えてるけど、ちょーーっと考えがまとまらなくて……」
何よりも女子特有の独特な甘い香りが童貞の俺にはなかなかに厳しいものがあった。
有り体にいえば、めちゃくちゃ我慢している状態である。
「ほぼ二択の答えに、そんなに時間かかりますか?」
そんな俺の葛藤を他所に陽ちゃんは態度を変えることなく話を続ける。
しかし、おかげで話が何となく理解しつつあった。
“ ほぼ二択”。そしてさっき言っていた“昨日の返事 ”。
今度こそ、謎の美少女の正体がわかった瞬間であった。
記憶の中の謎の美少女よりも身長が低い陽ちゃんだが、きっと告白してきた時はソールか何かで傘増ししたのだろう。
髪型も、きっとその時だけ染めたかカツラだったりでどうとでもなるだろうし……。
そう考えると俺はドキドキして仕方なかった。
「いや、だって……まさか、陽ちゃんが、ねぇ……?」
まさかの人物で俺は動揺を隠せなかった。
「私だってちゃんとそういうことだって考えるんですよ?」
だが陽ちゃんは相変わらず態度を変えない。
きっとポーカーフェイスが上手いのだろう。
「そ、そうだね!うん、陽ちゃんだって女の子だもんね?」
「私の性別はあんま関係ないような……。それでどうなんですか?明日答え聞かせてくださいって言いましたよね?」
どこか話が噛み合ってないような気がしたが、きっと気の所為だろう。
そんなラブコメ展開早々あるわけないし。
「よし、決めたよ陽ちゃん!これからどうかよろしくお願いします!!」
俺は意を決して両手を差し出し、陽ちゃんに返事をした。
あぁ、これで念願の彼女が……!!!
そう期待して、俺はチラッと陽ちゃんの方を見ると
「はい??何がですか?先輩、頭大丈夫ですか?」
ゴミを見る目で俺を見つめながら、陽ちゃんがそんなことを言うのだった。
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