第7話 愛するが故に彼女は暴走する
「あれ?どうして固まるんですか?ねぇどうしてですか?」
「いや、あの、
じーーーっと俺の事を見つめる陽ちゃんに、俺はたじろいだ。
ツインテールの金髪巨乳美少女に見つめられてドキドキしているのもあったがそれだけじゃなかった。
陽ちゃんの目が、マジなのだ……。
「ねぇ、答えてくださいよ
マジで、眼力だけで俺を
「まぁその通りだけども。あの、陽ちゃん怖いよ……?一旦落ち着いて……?」
俺は何とか
同時に彼女のたわわに実ったものも揺れたが、気にしている余裕などなかった。
ただ、紫月ラブな陽ちゃんにはこんなちゃちな落ち着かせ方が効くことは無く
「もしかしてあれですか?紫月先輩が言っていた“いいことしてあげる”って言葉を
ズバズバと厳しい言葉をぶつけてくる。
「うっ……」
しかも、残念なことにあながち否定できないのだ。
思わず
当然今の反応を陽ちゃんが見逃すはずもなく。
「図星ですか?図星ですよね?紫月先輩が桜夜先輩なんかと付き合うはずがないんですよ」
トドメと言わんばかりに声色が少しばかり嬉しそうだった。
あぁ、本当に俺の事嫌いなんだなぁ。まぁ分かってたけど……。
そして見事に後輩の女の子に打ち負かされた俺は
「ゴメンて、俺が悪かったから!さっきのは全部俺の妄言ってことでいいから!」
「分かればそれでいいんです」
あっさりと降参した。
すると、話を聞いていて疑問に思ったことがあったのだろう。蜜がこんな質問をしてきた。
「ねぇお兄ちゃん、しーちゃんがそんなこと言ったの?その……、“ いいことしてあげる”なんてあからさまな事」
普段から紫月との付き合いがあり、紫月のことを“ しーちゃん”と呼び
よく人の事を見ているということだろう。気配り上手な妹を誇らしく思った。
「まぁ、今朝の
紫月が“ いいことしてあげる”といった経緯を説明しようとするも、今朝の墨谷先輩との一件を思い出した。
もしかしたら、墨谷先輩のオカルトとんでもパワーで見られてるのかもしれない。
そんな恐怖心を蜜には味わわせたくなかった。
どうしたら、怖がらせずに説明できるだろうかと考えていると
「あ、墨谷先輩の事ならひーちゃんから聞いてるから大丈夫だよ」
何かを察したかのように、蜜はタイミング良く説明不要の合図を出した。
あまりにもタイミングが良すぎた為、俺はもしかしてと思いながら蜜の顔を見ると、蜜はどこか納得しているような表情をしていた。
あなた本当に高校一年生ですか?察しよすぎません?
「あ、聞いてるなら説明省けて助かるよ……。あんまり思い出したくないし……」
あまりにも大人な対応の蜜に驚きながらも何とか自分なりに立ち直ろうとする俺だったが。
「色々大変だったんだね……。大丈夫だよ私がいるから」
妹に頭ポンポンされる始末。
ねぇ、蜜さんあなた本当に高校一年生ですか?お兄ちゃん本当に甘えちゃいそうになるからちょっと勘弁して欲しいんだけど。
「それで話戻すけどさ、“ アレ”なら別に時々やってる事なんだから、今更勘違いすることある?」
一通り俺を慰め終わると、蜜は話の本筋へと引き戻した。
「そう、なんだけどなぁ」
俺は歯切れの悪い返事をする。
『 放課後、絶対に時間空けといてよね!その時に昨日の返事もついでに聞かせてもらうから!』
紫月から告げられたこの言葉を蜜、そして陽ちゃんに伝えるわけにもいかないからだ。
すると途端に蜜が軽くため息をつき、そのまま言葉を繋げた。
「はぁ……。まぁ詳しいことは聞かないけどさぁ、妄想なら程々にしときなよ?」
諦めたのかそれとも呆れたのか、どちらとも取れるような表情で蜜は俺にそう言う。
「助かるよ……。妄想も……まぁしばらく抑えるよ」
「出来ればずっと抑えてて」
そう言うと、蜜はまた、今度は大きな溜息をついた。
多分俺はしばらくは蜜には隠し事に関しては適わないだろう。妹の観察眼恐るべしである。
すると、大人しく話を聞いていた陽ちゃんが突如口を開く。
「……アレ?ねぇ、アレって何?」
静かな声だが、ズシッとした彼女の愛の重さがその声に宿っていた気がした。
「えっと、それはだなぁ……」
思わず俺は動揺するが、むしろそれは火に油を注ぐような態度だった。
「ねぇ、アレって何?紫月先輩の何を隠してるの!?」
紫月第一な陽ちゃんにとって、自分は知らない紫月のもうひとつの一面をチラつかせられたら、食いつかない筈がなかったのだ。
「……ごめん、それは教えられないんだ。いくらひーちゃんでも」
たじろぐ俺の代わりに、同じく事情を知る蜜が陽ちゃんの俺への問い詰めに答えた。
「私でも……?」
まさか蜜から、あなたには教えられない、と突きつけられるとは思ってなかったようで愕然とする様子の陽ちゃん。
よっぽどショックだったのだろう。
だが、その陽ちゃんの様子を見ても蜜は優しい口調で話を続けた。
「ひーちゃんでも、だよ。ひーちゃんのこと好きだけど、しーちゃんのことも好きなの。だから話せない」
蜜にとってはどっちも大切にしたい存在なのだろう。
だからこそ、『 話せない』という言葉を使ったのだと思う。
そんな蜜の気持ちが陽ちゃんに届いたのか
「そっか、それなら仕方ないね……。ごめんね、変な事聞いちゃって」
陽ちゃんはあっさりと穏やかに引いたのだった。
さっきまでの鬼のような形相も穏やかなものになっていた。
「ううん、ごめんね。しーちゃんが話してもいいって言ったらちゃんと伝えるから、さ」
蜜も陽ちゃんに自身の想いが届いてホッとしたのか、気の抜けたような顔をしていた。
これでめでたしめでたし、と思っていたのだが……
「ありがとう。それと……ちょっと桜夜先輩借りていい?」
「……へ?」
何故か、あの紫月一筋な陽ちゃんが俺をどこかへ連れ出そうとするだった。
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