2『幽霊模様1~そこまで便利にできてはいない』

 わ た し で す 。



 ――まあ、基本力業なんですけどね。

 俺は潜り込んだカウンターの下で上がった息を整えながら、遠ざかる撮影スタッフを眺めていた。

 っていうか、霊でも息って上がるものなんだな……この身体、自在に宙へと浮かせることができるし、それは物を持っていたとしても例外ではない。その上意識しない限り、身体は物体を透過できるおかげで床に置いたもののその上に積んだりと、高さを稼ぐ事自体にさしたる苦労はなかった。

 ただ、やっている事は瓦礫の運び出し、つまり肉体労働そのものなので、持って上がって積んで下りてを繰り返しているうちに、だんだんと腕は上がらなくなるわ汗は噴き出してくるわと言った始末。

 よく霊現象の起きる場所は湿気に満ちているっていうけど、あれは多分家主の汗なんだろうな。死んで同じ立場に立っみて、初めてわかる発見だった。

 ……まぁともかく、ぐっとこぶしを握る。へったくそな軌道修正こそしていたけれど、あの『明らかに仕込みでない事が起こった』という空気は液晶を通しても十分伝わったはずだ。盛り上がり間違いナシ。

 さて、あとはどうするか……

 寝そべり、中空で床と平行になりながら腕を組む。話聞いてる限りはるばる遠方から来てくれたみたいだし、適当に見せ場だけ作ってあげてお暇しますかね。

 そうと決まればいつまでもここにいるわけにいかない。気付けばおっかなびっくり歩を進めていた一団の姿も消え、1階は普段通りの静寂と暗闇が支配していた。

 撮れ高としてはまだ微妙な所だろう。一応ここの主としては、自分のお部屋でじっくりと歓待してあげたい。

 そういえば直近に訪問者を迎えた時、2階の端っこの床が崩れ落ちそうになってたな。あの時入ってきたのは一人だけだったから保ってくれたが、機材担いだ集団となると抜けてもおかしくない。

 そこだけ急いで封鎖しつつ、彼らを誘導するとしようか。

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