部活後の悪魔 G

面長さん

現れた悪魔

みなさんは知っているだろうか。部屋に現れる『黒い悪魔』を。奴は、突如部屋に現れては全国の人々を恐怖と多大なる不快感を与え、素早く消え去って行く。


そんな悪魔がついに俺の元へ……




その日も雨の強い日だった。


「あぁー今日も部活だるかったなぁ」


部活後に見舞われた夕立の中、俺は部屋のソファに埋れながら3つ上の姉ちゃんと何気ない日常会話をしていた。


「健、もう中3なのに何言ってんの?まだ月曜でしょ。あんた今日だけでそんなバテてたら、金曜には死んでるわよー」

「ねぇちゃんは、分かってないなぁ。サッカーはきついんだよ。ずっと走ってなきゃ行けないんだし、特に俺はフォワードだから……」

 

しかし、そんな穏やかな日常はすぐに終わりを告げた。


「な……なんだあいつは……」


ふと、白い壁を見た俺は言葉と表情を失った。白い壁に異様なオーラを纏った黒いしみ。圧倒的存在感を醸し出す漆黒の羽に、長い触覚。そう、俺の部屋に悪魔が訪れたのだ。


「健、急にどうしたのって……いやぁぁああああああああ」


遅れて気づいた姉ちゃんが腰を抜かしてしまった。


「静かにしろって!少しでも騒いでアイツが暴れ出すことでも合ったらどうすんだよ」


俺は目を合わせながら唾を飲む。


姉よ、絶対に騒ぐんじゃないぞ。お願いだから黙って静かにしていてくれ。


そう願う俺は、額に冷や汗を滲ませながらプルプルと震えている姉を見つめる。



「…………………やっぱむりぃいいいいいいいいい」


やりやがった。


姉ちゃんはドタドタと音を立てながら、部屋に駆け込んだ。


バタンッ カチャッ


「おい」


何やってんだこのクソ姉貴ッ。音たてんなって言っただろうが!!しかも丁寧にカギまで締めやがってよ。さっきは俺の部活にぺらぺらと口出ししてたのに。3年とかいうちょっと俺より早く生まれたからっていい気になりやがって!これは俺に対する宣戦布告か?


姉への強い怒りを覚えた俺であったが、そんなことはすぐに忘れられた。


背中を擽る冷たい空気にゆっくりと振り向く。

 そこには、羽をバタつかせながら戦闘の準備を整えた悪魔の姿が。


刹那、ヤツが俺目掛けて飛び掛かってきた。


「うぐっ!?」


姉ちゃんは部屋にこもってこの部屋には俺1人、こいつを部屋に野放しにしておけるはずもない。

 覚悟を決めた俺は、近くのテーブルに置かれた新聞紙を手に取った。


「来るなら来いっ!俺が相手だっ」


勝負において気迫で劣ってはダメだ。歯を食いしばり、目を凝らして狙いを定める。


左足を踏み出し、軸足で踏ん張りながら腰を思いっきり回すんだ。大振りではなくコンパクトを意識しろ!そして力の限り振り抜けっ!!(サッカー部)


「死ねぇええさええええええええええええ」


イメージ通りに新聞紙を走らせた。


スカッ


「あ」


しかし攻撃は大きく外れ、新聞紙は空を切った。スイングを華麗に避けたヤツは進行方向を変え、フローリングに素早く着地した。


「まだだっ、まだ終わっちゃいない!」


続けて今度は武器をヤツ目掛けて叩きつけた。


スカッ


ヤツの素早い身のこなしで攻撃をかわされた。


「まだだ」


スカッ


攻撃をかわされた。


「まだいけるっ!!」


スカッ


攻撃をかわされた。


「まだだぁぁぁ」


スカッ


俺の止めどない攻撃をヤツは俺を弄ぶようにひらりひらりと避けていく。


カサカサ カサカサッ!!


そしてなんとヤツは俺の攻撃の隙を突いて、正面目掛けて突っ込んできた。


「ああっ!?」


悪魔が股下を抜けていくと共に嘆きの声が漏れ出る。

ヤツはスピードそのまま走り去っていく。


「あれ?」


しかし、奴の向かう先には『いちか♡』と名前の刻まれた一つの扉が。

 ヤツは知る由もないだろう、今向かっている場所は大の虫苦手な姉がこもっているということを。


「ギィヤァアアアアアアアアアア」

「でしょうね」


幸運なのか不幸なのかヤツはヤツは最悪な道を選んでしまった。でも確かなことは、俺の心はこれまでにないほど踊り狂っていた。無意識に拳を突き上げたのがそれを裏付けている。


「ナイスぅうううう!!」


俺の心は奴によって少しだけ黒くなったかもしれない。



悪魔とはというと、姉の逆鱗に触れ丸めた雑誌でぺちゃんこにされた。

 悪魔は俺たちの生活の近くに身を潜め、突然と姿を現し人々を襲う。次はあなたの家に現れるかもしれない。











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部活後の悪魔 G 面長さん @gorimuchu

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