第4話 基地、水、火、食料

 ヌラに連れられて森を歩く。天にはまばゆいい輝きを放つ大きな球体。昨日の夜の月といい、この太陽のようなものといい、ここは地球なのかと考える。過去か未来か、夢か異世界か。果たして僕はどこに迷い込んだのだろう。どうにかして元の世界に帰ることは出来るのだろうか。


 僕は前を歩くトカゲに目を向ける。彼は僕をどうするつもりなんだろう。どこへ向かって歩いているんだろう。考えても、答えが出るはずはなかった。ただ今朝の振る舞いを見る限りでは、すぐに僕を殺すつもりはないようだ。


 そんなことを考えていると、ヌラが立ち止まり僕のほうに向かい「ギャオ」と鳴いた。


 僕は意味がわからず首を傾げる。するとヌラがまたヒモの先端をそばにあった木に巻き付けだした。


「え、なに?」


 ヒモを縛り終わると、ヌラは僕を残して一人でどこかへ歩いて行く。


「お、おい、ヌラ! どこ行くんだよ!」


 僕の声が聞こえているのかいないのか、ヌラはどんどん遠くへ行ってしまう。その姿が見えなくなると、途端に不安な気持ちでいっぱいになった。スーパーの駐車場に置いてけぼりにされている犬の気持ちが、今ならわかる気がした。――そりゃ、こんなことされたら不安でキャンキャン鳴いちゃうよ。


 僕はうなだれるように木にもたれかかり、ヌラの帰りを待つ。誘拐されているも同然のこの状況で、その犯人――犯トカゲか?――の帰りを待ちわびるだなんて、いったいこれはなんの冗談なんだろう。そういえば何かで見たことがある。誘拐犯にその被害者が感情移入してしまう症状。なんとか症候群っていったな。確かに、理解の許容量を超える状況で頼れる存在が一つしかないとしたら、それにすがってしまうのは仕方のないことなのかも知れない。


 僕はふーっと息を吐き出し周りを見渡した。風に揺れる木々が空から注ぐ光を使い、地面に様々な模様を描いていく。さーっと葉の擦れる音は涼やかで、僕の心に落ち着きを与えてくれる。


 ――綺麗な世界だな。


 ふと、視界の端に小さな動物の姿を捉えた。ふわふわの毛をした、リスともネズミともとれる小動物だった。木の影からぴょこんと顔を出し、小さい手を顔の前でこすり合わせている。


 愛嬌のあるその姿に、思わず笑みが零れた。


 すばやい動きで走り回り、落ちている木の実を物色しては、ふんふんと匂いを嗅いでいる。しばしその小動物の姿に癒されていると、視界の端からヌッとヌラの顔が現れた。


「うわ! びっくりした!」


 驚いて声を上げた僕を呆れるようにちらりと見てから、ヌラが抜き足差し足、ゆっくりと小動物に近づいていく。


 ――捕まえる気か?


 僕は唾を飲み込み、その動向に注視する。


 あっちへ行き、こっちへ行きする素早いそれに悟られないように一歩一歩ヌラが歩みを進める。そしてあと三歩ほどの距離に近づくと、ヒザを曲げ一気に飛び掛かった。


 しかし、小動物のほうが動きが早かったようで、ヌラの手が届くよりも前に小動物の姿は消えてなくなった。


 ヌラは勢いのまま派手にすっころび、身体を横たえたまま悔しそうにギャオンと鳴いた。そのまぬけな姿を見て僕は思わず吹き出してしまう。目に涙を湛えてひーひー笑う僕を見て、ヌラが怒りを顕わにずんずんと近づいてきた。


「あ、いや、ごめんって」


 間近で牙を剥きだして唸っているヌラに向かい、僕は目を伏せて謝罪する。僕の顔に向かいふんふんと鼻息を吹きかけていたヌラだったが、ようやく気が収まったのか顔を離してくれた。そしてそのまま踵を返すと、そばの木に手をかけ何か作業をし始める。


 細い枝の強度を確かめるように何度かしならせると、そのまま引っ張り地面の近くまで持っていった。何をしているのかと様子を見ていると、枝にヒモをくくりつけ、そばにあった岩を置いて固定した。ヌラはいったんその場を離れ、木の実をいくつか拾ってきて、岩のそばに落とした。そして岩で押さえておいたヒモの先に小枝をくくりつけ、バランスよく立つように岩の下にセットした。


 ――そうか、罠か。


 これでセットした小枝に何かが当たると、支えが外れ上から岩が落ちてくるということだ。


 ヌラは罠を仕掛け終えると満足気に手を払い、罠を指さし僕にアピールするかのようにギャギャっと声を出した。誇らしげに胸を張っている。


「う、うん。すごいね」


 僕は戸惑いながら彼の作った罠を褒める。縛られながら罠を褒める人間と誇らしげなトカゲ。これはいったいどういう状況なんだろう。


 ヌラが近づいてきて僕と木を繋いでいたヒモを外す。ギャオっと言いながらヒモを引き、僕をまたどこかへ誘導するように歩き出した。


 少し進むと、水の流れる音が聞こえてきた。また近くで川が流れているのだろうか。思った通り、ヌラについて歩いていくと目の前に先ほどよりかは小さい川があった。いや、川というよりは水の通り道といったほうがいいくらいの細い細い川だった。その川のそばに長さの異なる折れた木がいくつか並べられている。


 ヌラはギャギャっと鳴き、その木々を指さした。僕は何が言いたいのか分からずに首をかしげる。そんな僕を見晴らしのいい場所でまたくくりつけ、ヌラは並べられた木のほうへと近づいていく。


 一番長い木を二本掴んだ。どちらも五メートルほどはあるだろうか、なかなか重そうだった。ヌラはその二本の木を三角を作るように地面に突き刺してから、重なった部分をヒモで固定している。

 ゆっくりと手を離すと二本の木は倒れることなく見事にそこに立った。ヌラは満足げに頷くと、次の木を手に取るために腰をかがめた。と、その時だった、立たせたはずのさっきの木がぐらりと揺れ、ヌラのほうへと倒れこんだ。


「あ、危ない!」


 思わず叫んだ僕の声に気付いたヌラがとっさに手を突き出し倒れこんでくる木から身体を守った。しかし勢いと重さからか、ヌラはそのまま木の下敷きになってしまった。「グア!」という悲鳴にも似た声が聞こえた。


「……だ、大丈夫?」


 しばらく木の下敷きになってもがいていたヌラだったが、身体を揺らしなんとか脱出してきた。しかし、木のトゲが刺さったのだろうか、その手の平からポタポタと血が滴り落ちている。


「うわー、痛そう」


 その光景に顔をしかめる僕だったが、ふとあることを思い出した。


「……そうだ。絆創膏ばんそうこう


 手を抑えて痛みに耐えているヌラに向かい声を掛ける。


「ヌラ! それ! 僕のカバン!」


 僕はアゴを必死でしゃくり、訴える。しかし、彼にとっては訳の分からない叫びだったのだろう。不機嫌そうな顔をして僕に近づいてくる。「俺が痛い思いをしてるときにギャーギャー騒ぐな」といったような感じか。


 しかし、僕も負けじと声を出す。


「それ! カバン! それ! 開けて!」


 近くまで来たヌラに対し、地面に置かれた僕のウエストポーチを必死で指さす。いや、アゴさす、か。ともかく、なんとか伝わるようにと顔中を使って訴えた。


 そこでようやく僕の意図が伝わったのか、ヌラがウエストポーチを指さした。


「そう! それそれ!」


 僕はなんだかうれしくなって笑顔で頷く。ヌラも、なんだか嬉しそうに「ギャギャ!」と鳴いた。

 地面に置かれたウエストポーチを持ち上げたヌラは、しかし、扱い方が分からないのか首を傾げた。


「それの外側のポケット! わかる? そこ!」


 大声で指示を出すが、ヌラは怪訝な表情で僕を見ている。(うるさいな、コイツ)くらいは思っていそうな顔だ。


「あぁ、もう! これ、ほどいてくんない?」


 指示が伝わらないもどかしさから、僕はアゴを使いヌラに訴える。自由になりたいとか、そんな下心は全くなく、今はとにかくそのカバンのポケットを開けたい一心で、自身を縛っているヒモから解放されたかった。

 ヌラにも僕の言いたいことは伝わったようで、しかし、どうするべきかしばし迷っている素振りを見せた。


「あぁ、もう。逃げたりしないから! それ! 開けたいだけなの! オープン! オープン!」


 何を血迷ったか、僕は英語を交えて訴えた。言葉の分からない留学生に対してコミュニケーションをとっているような気分だった。そんな必死の訴えが届いたのかどうかは分からないが、ヌラはゆっくりと背中の槍を抜き出すと、僕を縛っているヒモを切り離した。

 久しぶりに自由になった腕を軽く上下に動かしほぐした後、ヌラの持つウエストポーチを指さした。


「それ、貸して」


 ヌラは片手で槍を突き出しながら、ゆっくりとウエストポーチを差し出してきた。僕はそれを受け取ると、外側のポケットを開け、目当ての物を取り出した。それは、可愛いキャラクターがプリントされた絆創膏だった。


「母さんがなにかあった時のためって入れてくれてたのが、まさかここで役に立つとは」


 僕はその中の一枚をちぎり、ヌラに向け握手を求めるように手を差し出した。


「手。さっき切ったでしょ? 手、出して」


 一瞬、警戒するように槍を構えたヌラであったが、僕に敵意がないことを感じると、おずおずと血のしたたる手を差し出してきた。

 僕はフィルムをはがしてヌラのキズに絆創膏をあてがう。トカゲの鱗に絆創膏がくっつくか心配だったけど、思ったよりしっかりと貼れたようだ。ヌラが絆創膏の貼られた手を開いたり閉じたりしてその感触を確かめている。


「どう? 痛くない?」


 僕が問いかけると、ヌラは「ギャギャ!」と鳴いた。肯定か否定かは分からないが、少なくとも悪い感じはしなさそうだ。

 僕は満足げに頷くと、倒れたままの木材を指さした。


「僕も手伝うよ。テントかなにか作るんでしょ?」


 僕と木材を交互に見てから、ヌラは少しだけ考えるような素振りを見せ、それからギャオンと一声だけ鳴いた。そして木材のほうへ歩いていき、僕を手招きする。


「これを、立てるんだね?」


 ヌラのしようとしていることを汲み取り、僕は木を持ち上げる。木は想像以上に重たくて、思わず声が漏れてしまったけど、なんとか二本の木を地面に対して三角に立てることが出来た。

 僕が木を立てている間に、ヌラがもう一本の木をあてがい上部をヒモで固定した。

 横から見ると不格好な二等辺三角形みたいだけれど、三本の木はバランスが取れたようで、手を離しても倒れることはなかった。


「おお、やったね」


 ちょっとした達成感があり、僕は思わず声を上げた。ヌラもどこか嬉しそうに頷いている。それから僕はヌラの作業を参考に、残った木を壁を作るように外側に立てかけていく。そうして、あばら骨のような木のかたまりが完成した。


「これで、終わり?」


 力仕事で噴き出す汗をぬぐいながら、僕がヌラに顔を向けると、彼は森の方へ歩いていくところだった。僕を振り返り手招きをする。


「どこかへ行くの?」


 ヌラについて森に入りしばらく行くと、ヌラがある植物の前で立ち止まり「ギャギャ!」と鳴いた。それは二メートルほどの高さの植物で、濃い緑色のデカイ葉っぱをたくさん広げていた。葉っぱ一枚が僕の両腕を広げたくらいありそうだった。


 ヌラはそれを指さすと、葉っぱの根元を掴み、力を込めて思いっきり引きちぎった。そうして取れた葉っぱを僕に見せつけ、ギャオギャオと鳴く。


「同じように取ればいいんだね?」


 僕はヌラと同じように葉っぱの根元を掴み、体重をかけて一気に引きちぎった。ぱきりと小気味のいい音を立てて、葉っぱが根元からちぎれる。そうして、合計三十枚ほどのデカイ葉っぱを手に入れた僕たちは、あばら骨の木へと戻り、その上に葉っぱを乗せていく。


「なるほど、これで雨風をしのぐのか」


 そういえば、と僕は思い出す。

 少し前に動画サイトではまった動画があった。それは軍隊経験者である人物が、裸一貫でジャングルや無人島へ行き一週間サバイバルをするといった内容だった。現代社会で生きる僕にとっては、必死に食料の確保や火を起こすその人物の奮闘を見てワクワクしたものだった。

 その彼が言っていた言葉が「サバイバルに重要なのは基地シェルターウォーターファイヤー食料フードだ」だった。

 そして、自分が今まさに作っていたのが、基地シェルターだ。よくよく考えてみると、基地のそばには小さいながら水場がある。

 ヌラは残った葉っぱをテントの中に敷き詰めた。これだけでも、土の上に直に寝るよりかはましなのだろうと思う。


「どの世界にいっても、サバイバルで重要なことは同じってことか」


 僕はそのことに気付き、ある種感動さえ覚えていた。このトカゲは、それを理解して行動していたのか。


 即席のテントが完成する頃には、辺りは薄暗くなっていた。僕はテントのそばの清流で喉を潤す。雑味のない、とても美味しい水だった。顔を上げると、さっきまですぐそばにいたヌラの姿がない。どこへ行ったのだろうと首を傾げていると、森の方から何かを手にぶら下げたヌラが現れた。

 ぐったりとうなだれたそれは、午前中にみつけた小動物のようであった。ヌラが僕に向かい嬉しそうにそれを見せつけてくる。血で赤く染まったその頭部を見て、僕は少しだけ顔をしかめる。


「あぁ、そっか。朝作ってたワナ。それで獲れたの?」


 僕は一人で納得する。彼に聞いたところで、伝わっているかも分からない。ヌラは手のひらほどのその動物を平たい石の上に置き、もう片方の手に持った鋭利な石を力任せに振り下ろした。


 小動物は衝撃により身体の半分を潰されたような恰好になり、ピンク色の肉が生々しくあらわになっている。僕は思わず「うわぁ」と声を上げた。スーパーで売っている鶏肉や豚肉ならなんとも思わないが、ついさっきまで生きていた動物の潰れてはみ出たその肉はあまりにリアルで、喉の奥から酸っぱい液体がせりあがってくるのを感じた。


 ヌラは僕の嗚咽などお構いなしに、何度か石を振り下ろす。そうしてぐずぐずになったその肉を、力任せに半分に引きちぎった。上半身を指でつまむと、大きな口を開けそのままむしゃりむしゃりと食べ始めた。ヌラの口から時折聞こえるぼりんぼりんという小気味の良い音は、きっと骨をかみ砕く音なのだろう。

 ヌラがむしゃむしゃと咀嚼そしゃくをしながら、残った下半身を僕に向けて差し出してくる。僕は恐る恐るそれを指でつまむようにして受け取るが、当然食べる気にはならなかった。


「せめて焼いたり出来ればなぁ……」と呟いた瞬間、僕の脳裏にトカゲの集落での光景がフラッシュバックした。


 ――そういえばあの時、中央にキャンプファイヤーみたいな炎が踊っていたよな。


 僕はヌラのほうを向き「火、起こせる? ファイヤー! メラメラ!」と身振り手振りを交えて火が欲しいと訴えてみる。僕のよくわからない動きを見て、ヌラは「クア?」と首を傾げる。


「火! 熱い熱い! メラメラ! わかる?」


 僕はもう一度身体全体を使って火を表現した。すると、ヌラが突然「ギャギャ!」と鳴き、森の方へと歩き出した。僕も肉を持ったままその後をついていくことにした。


 森に入ったヌラは、足元に転がっている大きめの石をどんどんとひっくり返しては、石の下を確認している。


 ――何を探しているんだろう?


 何個目かの石をひっくり返した時だった。ヌラが素早い動きで石の下の何かをつかみ取り、嬉しそうにギャオギャオと声を上げた。そして捕まえたそれを僕の顔の前に持ってくる。


「なにこれ? 虫?」


 ヌラが見せつけてきたのは、真っ黄色した二センチほどの虫だった。まさにジャングルの奥地に生息していそうな変わった虫だなと僕は思った。それと同時に、自分の訴えが伝わっていなかったことにがっかりした。


「いや、僕が欲しいのは虫じゃなくて」


 肩を落とす僕を無視して、ヌラがテントの場所へと戻っていく。テントまで戻ったヌラは手に持った虫を水に沈めて息の根を止め、そこらに転がっている石と、枯れ木をいくつか手に取った。

 彼の意図がよくわからない僕は、黙って様子を見ている。

 そしてヌラは動かなくなった虫を平べったい石の上に置き、その周りに枯れ木を敷き詰めた。


 ――何をしてるんだ?


 僕が首をひねったその時だった。ヌラがセットした虫にめがけて手に持った石を振り下ろし、虫に打ち当てたその瞬間「ポン!」という破裂音と共に辺りに火花が飛び散った。それはちょっとした花火のようで、その美しさに僕は一瞬見惚れてしまった。

 ヌラが石を離すと、枯れ木が黒煙を放ちながら燻っている。ヌラはその上に枯れ木を追加し、大きく息を吹きかけた。すると途端に枯れ木が真っ赤に染まり、ほどなく大きな炎が舞い踊った。


「おお! すごい! すごい虫だね! それ」


 ぱちぱちと音を立てながら燃え盛る炎を見ながら、僕は感嘆の声を上げた。嬉しそうな僕をみて、ヌラも大きく頷いている。


 僕は手に持った肉を木の枝に刺し、炎へと近づけた。外側の毛が一瞬で燃え上がり火だるまになったので、僕は焦りつつ一旦離して消火する。焦げた毛を丁寧に払いのけてから、もう一度火のそばへと近づけた。

 そうして炙っていると、小さいながらも中から肉汁が溢れ出してきて、なんとも香ばしい匂いが辺りに漂ってくる。力仕事をしたせいか、胃が痛いほどの空腹を感じた。しっかりと中まで熱を通してから、湯気の立つそれに思い切ってかじりついた。


「んん! 美味しい!」


 それはまるで薄味の鶏肉のような感じだったが、腹が減っていたせいか無性に旨味を感じた。小さな身体からでろんと垂れた内臓も、意を決して食べてみる。身とは違ったコリコリとした触感と、少しの苦みが、それはそれで旨かった。


「サンマの内臓とか苦手だったけど、今なら食べれそうだな」


 僕は誰に言うでもなく呟いた。隣のヌラが肉にがっつく僕を見て、どこか嬉しそうに牙をカチンカチンと打ち鳴らしている。

 ケンタッキーの一ピースにも満たないその肉に必死でしゃぶりつき、骨だけになってもなお名残惜しむように口の中で転がした。


 気が付くと辺りは真っ暗になっていた。空腹はまだ完全には満たされていなかったが、食事を摂った安心感と疲れからか、今度は酷い睡魔が襲ってきた。


 ぱちぱちと火花を散らす炎を見ていると、催眠術にかかったかのようにまぶたが重くなってくる。徐々に遠のく意識の中で僕が考えたことは「母さんのカレーが食べたいなぁ」だった。

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