第10話

「で、処女なのね」


「ええはい。恋愛経験はありません」


「なんで?」


「なんでって」


 言われてみると、たしかに。ちょっと考えた。


「ええと、性格が、分かるから、かな」


「なんでよ。性格が分かるなら掌握し放題じゃないの」


「いやなんか、別に仲良くならなくても眼を見れば分かるし、それでいいかなって」


「あっわかった」


 うわびっくりした。


「なんですか」


「彼の自我がないから、彼に惚れたんじゃない?」


「え?」


「彼は、あなたにとって初めての、眼を見ても性格がわからない人だったんじゃ」


 あれ。そうかもしれない。


「お風呂出ました」


「あ、おかえり」


 彼。やはり全裸だった。目を背ける。彼のもの。やっぱり、ちいさく縮んでた。


「あ、ちょっと」


 目の前が暗くなる。


「うわっ」


 暖かい。

 なんだ。


 目の前。

 肌色。


「えっなに。なにが」


 目の前。

 これは。


「えっえっ」


「あっ、なに。私も混ぜて」


 彼。


「待って。あっ。あっあっ」

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