第7話

「自我が、無い?」


 着替え終わったPA。さっき彼のものを触っていた指の匂いをかいでいる。


「だめね」


 少し舐めて、台所らしきところで手を洗っている。水の音。


「出てないわ」


「あ、あの」


「待って。いま診断書持ってくる」


 PAが、奥に消えた。彼。また元の体勢に戻り、忍者漫画を読んでいる。さっきまで、女性にいじられていたのに。


 PAが戻ってくる。


「これ見れば、分かるわ」


 診断書、ではない。論文。


「自我過拡散?」


「なんというか、普通の人間の心がないのよ。ただ生きてるだけなの」


「でも、こんなの」


「聞いたことない症例よね。でもね、私のことも治した医者の書いた論文だから、たぶん間違ったことは書いてないと思う」


「あなたも」


 PA。冷蔵庫からなにかを取り出してきて、リビングに座る。


「私のことならいくらでも話すけど。ビール飲む?」


「あ、ありがとうございます」


 注がれるビール。


「お風呂入ってきなさい」


 PAが彼に声をかける。


「この巻読んだら入るよ」


「あと何ページ?」


「15」


「じゃ、それまで待つわ」

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