第47話 P4
「ん。魔術文字で書かれている。余裕」
マインが言うが、スゲえな。
パラケルススという名前はちらっと僕も聞いたことがあるが、どこで出てきた名前かは覚えていない。占星術師ノストラダムスは難解な詩で、どうとでも取れるマルチプルアウトであるから、結局意味が無いと言われていたが……旧世界が滅びてしまった以上、あの予言は当たっていたのかもしれない。
「へえ。じゃ、全部翻訳してくれなくて良いけど、この石版にどんなことが書いてあるのか、かいつまんで教えてよ、マイン」
「ん、ちょっと待つ。……これは、不老不死、それに賢者の石の製法について書かれている」
「あー、製法かぁ。じゃ、今はどうでもいいわね」
ガッカリした様子でカリーナは言った。逆に僕の方は内容が少し気になってしまったが、不老不死や、いかにも嘘くさい賢者の石など、真面目に取り合うだけ時間の無駄だろう。僕らがここに探しに来たのはあくまでクリスタルチップであり、まぁ、あの眼鏡紳士がそのデータを欲しがっているなら、くれてやればいい。
「次、行ってみよー!」
カリーナが号令をかけ、僕とマインは石版のレプリカをチラチラと見つつ、少しだけ後ろ髪を引かれる思いで、その研究室を後にした。
「これは……」
次の研究室は少し広くなっており、一番奥に頑丈な鋼鉄の扉があった。
「あそこがめっちゃ怪しいわね」
同感だが、開くかな?
「ほら、マモル、手伝って」
「ええ? 手動で行くつもりなの?」
「トーゼン、女は体力! 男も体力!」
「エー? マジカー」
「ん、凄く無駄っぽい」
「いいから、マインはそっちね」
カリーナが一度は試さないと気が済まないだろうから、僕とマインは反対側の取っ手を握り思いっきり引っ張ってみる。
「せーの!」
「ふぬっ!」「んっ」
思った通りびくともしない。
「くっ、ダメね……」
一人粘っていたカリーナもついに諦めた。
僕はその鋼鉄の扉を観察してみたが、横にコンソールパネルがあるのが見える。ま、しかし、これだけ頑丈な扉だ。鍵やパスワードが無いとどうしようもないだろう。あの眼鏡紳士はそんな鍵の所在など教えてくれなかったし。
「次、探すわよ」
「了解」「ん」
僕らは他の研究室も回ってみたが、この階にはクリスタルチップが無さそうだった。
「無いわねえ」
「無いな」
「下の階にも同じような研究室があるけど」
マインが言った。
「じゃ、行きましょ」
次だ。
階段を降りていき、B4と大きく描かれたプレートの脇を通る。
「この先」
マインが小声で言い、通路を曲がる。
そこには上の階よりさらに分厚い鋼鉄製の扉があった。その中央に描かれているかぎ爪を三つ組み合わせたようなヤバいマークを見て、僕は思わず唸る。このマーク、ゲームで見覚えがあった。
「うえぇ、P4レベルのバイオハザードか……」
「何それ?」
「生物兵器とか、危険な病原菌とか、そういうのを研究する施設なんだよ、ここは。道理で規模がデカいわけだ」
僕はため息交じりに言った。
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