第5話 壊すべき世界

『食事区第3区画N-506番地でヤツは再稼働している』

 先生からこの話を聞いた時、腸が煮えくり返りそうだった。

 人間は罪を冒したら、牢屋に連れていかれる。しかし、アンドロイドどもはどうか。記録をリセットされ、異常をきたしたと思われる場所を少しいじくって終わり。また、いつものように街を闊歩し、動いている。不良品がまた暴走するかもしれないのに。

記録を抹消したとしても、システムを少しいじったのだとしても、僕の大切なものを傷つけた人型がまだ残っている。その事実だけは変えられない。今も、あの人型はのうのうと稼働し、何も無かったかのように振舞っている。その事が僕にはどうしても我慢ならなかった。アレを破壊しない限り、僕のこの憤りは収まらないだろうと思った。


だから、僕は世界を壊すことにした。

彼が居ない世界に意味などなかった。

ただ、本能のままに。

破壊衝動のまま。

そのままの僕で動いた。

きっと僕は、もう人として壊れているのだろう。

だけど、それでいい。

たとえ、これで牢屋に入れられたとしても

たとえ、これで周りに冷たい目で見られても

たとえ、これで僕も植物状態になったとしても

たとえ、この命を散らそうとも


僕はこの世界を壊しに行く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る