第1話古いSF映画
「はぁ、はぁ、っは、……げほっげほっ」
1人の少年が部屋に駆け込んできた。
アウターのフードを深く被り、目にはゴーグルをあて、首まで覆えるマスクをし、肌を一切見せないいで立ちで、全体的に黒のような灰がかったような薄汚れた色をしている。
「おかえり。大丈夫……ではないよね?待ってて、いま、水持ってくるから」
僕はそういうと、キッチンへ向かった。
「げほっげほっ……はぁ、だるい」
そう呟きながら、帰ってきた少年はフードをとり、ゴーグルを外し、マスクを脱いだ。
綺麗な夜空のような深い蒼の髪と、白い肌が現れた。
「はい、黎明。お疲れ様。今日の上の様子はどうだった?」
僕は飲み物を渡しながら聞いた。
上、とは地上のことだ。そこに人類も他のオリジナルの生物も生きていたというのははるか昔の話だ。今や地上の生き物は絶滅し、人間は地下に居住区を移した。 大人たちはいつかまた地上に居住区を移すことを目標にしているため、時々黎明のような元気な若者が研究として、(少しの時間ではあるものの)地上に出て空気汚染度などの数値を計測しているのだ。
「ああ、露華。ありがとう。……上の様子は、いつもと同じ。やっぱりダメだ」
彼が肩をすくめてそういった。
「そう、だよねぇ。……まぁ、そう簡単に事が進むとは思ってなかったけどさ。これだけ黎明に危険なことをしてもらってて、僕はこの安全な部屋で待ってるだけなんだもんな。そろそろ何かあってもいいでしょうに」
「俺の事なら、大丈夫だ。安心してくれ。これくらいどうってことないんだから。それに、元々露華は体が弱いんだから、お前の方こそ無理するなよ」
「うん。もちろん。わかってるよ」
僕と彼は言うなれば正反対だった。彼の色は黒(正しくは濃紺)で僕は白。彼は体が丈夫で、僕は極端に病弱。性格も、彼は寛容的でそのくせハッキリとものをいうし、僕は極端で0か100かで物事を判断する。
そんな正反対な僕らだから、僕はいつも危ない役回りを彼一人に負わせてしまっていることが心苦しくてたまらない。
「ほんとにわかったのかー?……まぁ、いいや、腹減ったし、下に食べに行こうぜ」
「うん、そうだね行こっか。……ちょっと待って、黎明。先、着替えてきて」
「……はい。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます