第118話 靴を買いに行こう!
あれから数日。私は王都でゆっくりした日々を過ごしている。
シィーと一緒にゲームで遊んだり、広い王都をゆっくり観光してみたり。まあ、そんな感じでまったり過ごしてたら数日なんてあっという間だった。
ただ流石に飽きてきたなぁ。この世界って娯楽が少ないんだよね......。
テレビや音楽を楽しむ魔道具なんかもないし、映画館や遊園地などの娯楽施設もない。
ゲームで遊んでた頃みたいに狩りにでもいくかーとかも考えたけど、ゲームみたいに魔物を倒せば低い確率で希少な素材や武器がドロップ! なんてこともないからやる気が全くでない。
まあ、そもそもよく考えたら、武器はブリュナークがあるし、鎧は猫耳パーカーがあるから素材集めをする必要自体ないんだけどね。
あっ、でも靴は欲しいかも。
靴。靴かぁー......。そういえば靴を見に行ったことってまだなかったなぁ......。
「よし、決めた!!」
そう言って、チカはベットから勢いよく起き上がった。傍でゲームを楽しんでいたシィーはチカの様子を見て不思議そうに首を傾げる。
「んー? 何を決めたの?」
「ちょっと靴を買いにいってくるね!」
「くつ~? それならマリーに作ってもらえばいいの!」
──いや、それじゃまた猫になるじゃん......。
チカが肉球と爪がついた可愛らしい靴を履く自分自身の姿を思い浮かべて、おもわず苦笑いをしていると、シィーがベットからピョンと飛び上がった。
「そうだっ! マリーにお願いしてた服のことも気になるし、見に行くついでにチカの靴ことも頼んできてあげるの!」
「いやいやいやっ!! 靴は自分が好きなものを選びたいから大丈夫っ!!」
「えっー......」
ふぅー。危ない危ない。またおかしな事になるとこだった。シィーには悪いけど余計なことをするのはホントやめてほしい。
もちろんシィーやマリーちゃんに悪意がないのは分かってるよ? でもさすがに22歳になってネコの靴は辛すぎるよ!
「ちぇっ......。面白いものが見れると思ったのに残念なの」
前言撤回。シィーには悪意しかなかったみたい。
うー。くそぉー。仕返しをしてやりたいけどいい案が浮かんでこない。こんなことならゲームを取り上げないなんて言わなきゃよかったっ!!
◆◇◆◇
「ニッケルの街よ! 私は帰ってきたぞおー!!」
草原からニッケルの街を眺めながら私がそう叫ぶと、シィーが呆れ顔でやれやれといった様子で両手を上げた。
そう、私達はいまニッケルの街に来ている。
というのも、あのあと王都の雑貨屋を見に行ってみたんだけど良さげな靴がなかったんだよね。
重かったり、サイズが合わなかったり、無駄に派手な装飾がついてたり......。
そんなわけでメリィちゃんに相談しようと屋敷に戻ってきたんだけど──。
「メリィとマリーならニッケルの街に行ってるからいま屋敷にはいないの」
「えぇっ!? なんでニッケルの街に!?」
「んー。マリーは服を作るとか言ってたの。メリィはよく分からないの」
「そっかー。じゃあしばらくふたりとも帰ってこないのか......。帰るなら私にも声をかけてくれたらいいのに......」
「んー、ふたりとも夕飯には帰ってくるって言ってたの」
「えっ? どうやって?」
「どうやってって......。フィルネシアが一緒なんだから扉をくくればすぐなの!」
「あーっ!!」
そっか。王都に行く時は3日もかかったけど、いまはシィーやフィーちゃんが手伝ってくれれば妖精の小道で気軽に行き来できるもんね。
「あれ? でも妖精の小道って1度行ったとこじゃないと使えないって言ってなかった?」
「その通りなの。だから行きは私が一緒について行ったの」
「えっ、いつの間に? わたし全然気づかなかったよ」
「そりゃそうなの! 私が手伝ってる間も、どっかのネコさんは昼すぎまで気持ちよさそうにベットで寝てたの!」
「あー......」
間違いなくシィーの言ってるネコさんは私のことだ。うちでネコなんて飼ってないしね。まあ、犬? ならいるけど......。
──ということで。
帰ってきましたニッケルの街へ!
街をでてまだそんなに時間が経ってるわけでもないのに、すごく懐かしい気持ちになってくる。
「お? よぉー! 嬢ちゃん久しぶりじゃねえか! 帰ってきたのか!」
街の門まで歩いていくと、マークさんが手を振って私達を出迎えてくれた。ちゃんと猫の盾も使ってくれてるみたい。
「マークさん久しぶりー! 元気してた?」
「まあな! 嬢ちゃんの方は色々大変だったみたいじゃねえか!」
「えっ? なんのこと?」
「はははっ! とぼけんなって! 大迷宮の攻略に、悪い妖精から王都を救ったりと大活躍だったらしいじゃねえか! さすがニッケルの英雄様だな!」
私を茶化すようにそんな事を言いだすマークさん。
なんでもうニッケルの街にまでその話がきてるの!? いくらなんでも早すぎない!? それも話に尾ひれまでついてるしっ!!
「な、なんで!? 誰がそんな事言ってたの!?」
「あー? 誰がというか......。街中で話題になってるぜ?」
「街中で......?」
「あ、あぁ。多分知らない奴なんていないんじゃねえか? ギルドにもあんなバカデカい看板がついてるしよ」
「看板!?」
「お、おう。なんだ嬢ちゃん知らなかったのか? てっきり知ってるもんだとばかり......。って。お、おい! 嬢ちゃんどこ行くんだ!?」
そんなの決まってんじゃん!! メアリーさんのとこに行くんだよっ!!
私はマークさんを無視して全速力でギルドに向かって走りだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます