第42話 メリィちゃん何をしてるの!?


 屋敷に引っ越してきて数日が経った。

 

 まだマリーちゃんの体調はあまり良くなっていない。命の危険はないけど魔力が枯渇したような気持ちの悪さと疲労感が続いてるみたい。


 私もなったから分かるけどあれはつらい。乗り物酔いしてるのに全力ダッシュさせられたよう感覚だった。早く治るといいなぁ......。すごく心配。


 でも今後のことを考えると他人事じゃないんだよね。どうしても危ない時はブリュナークに頼らないといけないし、念のため魔力回復ポーションも買っておいたほういいよね......。うん。買いにいってきちゃおっと。


 私がソファーから立ち上がって部屋のドアを開けると、廊下にいたメイドさんと目があった。


「あっチカ様。おはようございます」

「おはよ! マリアさん。いつもありがと」


 マリアさんは綺麗な青い髪を揺らしながら軽くお辞儀をしてくれた。マリアさんは歳が近いから話しやすいんだよね。


「なにかございましたか?」

「ううん! ちょっと外に買い物にいくだけだよ」

「そうでしたか。なにかあれば遠慮なく部屋のベルでいつでも呼んでくださいね?」

「うん。ありがと!」


 ベルを使わないのも失礼なのかな? ベルを鳴らして呼ぶのが申し訳なく感じちゃって使ったことないんだよなぁー。


「ねえマリアさん。私が呼ばないときって普段は何をしてるの?」

「いつ呼ばれもいいように待機しています」

「えっ、ずっと?」

「はい。他のメイドと交代はしておりますのでご安心ください」


 どうしよう。私のせいでマリアさん廊下に立つだけのお仕事になってた。


「あっ。じゃあ私が起きたら部屋の中で待機してもらうことはできるのかな?」

「はい。チカ様さえ宜しければ」


 よかった。明日からは椅子を用意して座っててもらおう。もっと仲良くなりたかったしね!


「じゃあ明日からそうしてもらってもいい?」

「かしこまりました。おひとりになりたい時はお声掛けください」

「うん! ありがと。そうするね!」


 さすがメイドさん。気遣いもしっかり忘れない。

 

 私は廊下を進んで屋敷の外にでた。


「うぅっ......!!」


 朝日が眩しくておもわず手で遮る。


 太陽がいつもりより眩しく感じる。屋敷をでるの数日ぶりだからかな? あっ、ニートじゃないよ? ちょっと疲れてただけだよ?



 私は屋敷の門で門兵さんに挨拶をして、真っ直ぐマリーメリィ商会に向かった。


 私は歩きながら街の様子を眺めた。

 

 あれだけあった瓦礫がほとんどが撤去されている。少しづつ街の復興作業が進んでるみたい。


「ん?」


 なんかいつもより視線を感じる気がする。今までも稀に視線を感じることはあったけど、今日は私とすれ違うたびにみんな私を見てくるような......。もしかして私の服になにかついてる?

 

 慌てて自分の衣服を確認してみる。

 

 なにもついてない......よね? んー? 気にしすぎかな?


 不思議に思いながら歩いているとマリーメリィ商会が見えてきた。


「なんだろあれ?」


 商品が並んでいるテントのすぐ横に行列ができていた。

 

 気になって近づいてみると、すごく美味しそうな匂いが漂ってきた。屋台の近くで街の人達が美味しそう何かを食べてるのが見えた。

 

 屋台まで距離があってはっきり見えないけど......。あれは肉まんかな? うー、見てたらなんだかお腹減ってきたなあ。そういえばまだ何も食べてないや。帰りに買って帰ろうかな?


 私は屋台を通り過ぎてテントの中に入り、ポーションを探しながら歩いていると棚の整理をしているジョンさんを見つけた。


「ジョンさん! こんにちわ」

「チカ様。よくいらっしゃいました。なにかお探しですか?」

「うん! ポーションを買いに来たんだ」

「ポーションでございますか。治癒ポーションですか?それとも魔力回復ポーションですか?」

「両方を5本づつ買いたいんだけど大丈夫かな?」

「はい。在庫については問題ありません。値段についてもチカ様なら問題はないかと。しかし......」


 そう言うと、ジョンさんは少し渋い表情をみせる。

 

 もしかして心配してくれてるのかな? マリーちゃんのことがあるもんね。


「魔力回復ポーションは念のためだよ。普段から使うつもりはないか安心して」

「ならいいのですが、あまり短時間で多用しないことをオススメします」

「心配してくれてありがと。あっ、治癒ポーションも同じなのかな?」

「確実に大丈夫とは言えませんが、私は少なくとも副作用がでたとは聞いたことがありません」

「そっか。ならよかった」

「飲み続けなければならないような状況なら撤退するでしょうからね」

「なるほど」


 納得。無理に戦闘を継続したら命に関わる。そりゃ逃げるよね。


「あと身体の欠損などは通常の治癒ポーションでは治すことができませんのでご注意ください」

「そうなんだ。あっ。治す方法はあるの?」

「はい。欠損の状態にもよりますが、上級の治癒ポーション。もしくは高価な治癒魔法を習得していれば可能でございます」

「私でも上級の治癒ポーションは買えるかな?」

「今までの買取金額で1本なら買えるかと」

「そっかー。じゃあいまはいいかな」


 お金を貯める必要がありそうだ。1本ぐらいは持っておきたいしね。


 私はジョンさんにお金を支払って5本づつポーションを受け取ると、割れないように気をつけながらバックにしまっていった。


「あっ、そうだジョンさん。外の屋台のことってなにか知ってる?」

「あ、あの屋台はメリィお嬢様が街の復興を支援する目的で始められました。売り上げのすべてを街に寄付しております」

「そうなんだ! みんなのために頑張ってるんだね!」


 さすがメリィちゃんだ。でもいまジョンさん少し困ってなかった? きのせいかな?



 色々教えてくれたジョンさんにお礼を言って屋台に向かった。

 

 屋台には20人ぐらいの行列ができている。すごい人気だ......。そんなに美味しいのかな? 


 私はワクワクしながら列の1番後ろに並んだ。


「あぁー!! 黒猫の英雄様だぁ!!」


 声に気付いて振り返ると、マイちゃんぐらいの女の子が肉まんを手に持って目を輝かせながら私のほうに向かって走ってくるのが見えた。


 黒猫の英雄......? なんだかすごく嫌な予感がしてきた。


「お姉ちゃん! 英雄様でしょ?」

「ち、ちがうよ!?」

「えっー? でもこれみてよ!!」

「ん?」


 女の子は手に持っている包紙つつみがみに包まれたままの肉まんをみせてくれた。

 

 包紙つつみがみには可愛い猫耳パーカーをきた女の子が槍を持って大きな鳥を攻撃しているような絵が描かれている。

 

 これどう見ても私だよね......?


 ふと周りの人達の視線が私に集中していることに気がついた。


 そんなに私をみないでほしい......。あっ!! もしかして歩いてる時に見られてたのもこれのせい!?


「ねっ? これお姉ちゃんでしょ?」

「そうみたいだね......。ちょっとお姉ちゃん急用ができたから行かなきゃ! またね!」

「うん! お姉ちゃんまたねー♪」


 そう言って女の子はにっこりと笑顔で頷いた。

 

 私は女の子の頭を優しく撫でてから急いでテントに向かった。


 メリィちゃん!! 一体どこにいるの!?

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