第43話 いくらなんでも酷すぎるよ!
街の人達からの視線が痛い。
私は急いでテントの中に駆け込むと、さっきジョンさんが整理してた棚に向かって歩きだした。
まさか屋台であんなに注目されることになるなんて思わなかった。あれじゃ罰ゲームだよ! 本当にやめてほしい。
少し周囲を見渡しながら歩いていると、棚で整理を続けるジョンさんを見つけた。
「ねえ...。ジョンさん。メリィちゃん知らない?」
「お、お嬢様は今出かけられてます。どうされましたか?」
「どうされましたか......?」
ジーっとジョンさんを見つめる。
わからないわけないよね?
ジョンさんは困ったように視線を逸らす。
「申し訳ありません。私ではお嬢様を止められませんでした。なにかお嬢様も考えがあるご様子でしたが......」
ジョンさんは深々と頭を下げる。
ジョンさんが立場的に難しいのはわかるけどせめて相談してほしかったなあ。
早くメリィちゃんを探して止めないと。
「それでメリィちゃんはいつ頃帰ってくるの?」
「街の治療院にお出かけになりましたので、そろそろお帰りになられるとは思うのですが......」
メリィちゃんが治療院に? もしかしてマリーちゃんの件かな?
『私がどうかしたのかニャ??』
後ろからメリィちゃんの声がしたので振り返ると、メリィちゃんはニコニコ笑いながら首を傾げた。
「見つけたああああっ!!」
私はメリィちゃんに駆け寄ると、肩を両手でガシッと掴んだ。
「メリィちゃん!!」
「にゃ!? ど、どうしたのニャ? チカちょっと肩が痛いのニャ!」
「どうしたのじゃないよ! なにあの屋台!」
「あれは街の復興支援のために......」
「そのことじゃないよ。
「あー! あれは私の自信作ニャ! いやー。我ながらよく描けたと思ってたところニャ!」
よく描けてるから困ってるんだよ? だって動物のネコじゃなくて、黒色のネコ耳パーカーを着た女の子っていうのがよく分かる絵だったからね!
「それも1日5000個も売れる人気っぷりニャ! 街の復興支援に協力できてうれしいニャ! 領主様も大喜びだニャ!」
「そ、そんなに!? えっと......。あの屋台はいつから?」
「んー。確か2日前からだったかニャ?それがどうかしたのかニャ?」
すでに1万枚も街にあの
食べ歩きも持ち運びもできるから相当な人達があの
もう異世界でニートになろうかな......。
「メリィお嬢様......。やはりチカ様はあまり目立つことはしたくなかったのではないでしょうか......」
「ニャハハ!! そんなわけないニャ! ジョン爺は心配しすぎニャ!」
「私にはそうは見えませんが......」
ジョンさんはメリィちゃんの隣で困ったような表情で額に手を当てて
私はジト目でメリィちゃんの瞳を見つめた。
メリィちゃんはビクッと肩を震わせると顔色がみるみるうちに変わっていく。
「まさかジョン爺の言う通りなのかニャ?」
「......そうだよ」
メリィちゃんは驚いた表情で目を見開いた。
「ごめんニャ。悪気はなかったのニャ。チカのためを思ってやったことなのニャ」
「どういうこと?」
「初めはガルーダの討伐を公言しないから目立ちたくないのかと思ってたのニャ。だけど二人でギルドに行って冒険者達と揉めた時のチカを見て私の考え違いだと思ったのニャ」
「......?」
意味が分からず私はおもわず首を傾げた。
私のせいってこと?
「まさか分かってないのかニャ!?」
「う、うん」
「よく考えてみるニャ。ギルドで冒険者達を吹き飛ばすまでは、ギルドマスターのせいでチカがガルーダを倒したと嘘をついているって噂があっただけニャ」
うん。冒険者達がそう叫んで私達に絡んできたよね。
「だけどあの日。沢山の冒険者達が見ている前で、チカはガールダの討伐を否定するどころか力を示して冒険者達に認めさせたニャ」
「ああああああっ!!」
ギルドを滅茶苦茶にしちゃった事に気を取られて気づかなかった!
私の様子を見てメリィちゃんは呆れたように溜息をついた。
「チカはちょっと抜けてるとこがあるみたいだニャ」
やらかしたっ!! あれから数日も経ってる! いまさら口止めしても手遅れだ。
「だから私は冒険者が吹き飛ばされた腹いせに変な噂を広める前に、街の人達に真実を広めることにしたのニャ! 復興資金も稼げて一石二鳥ニャ!」
「そっか......。私のためにありがと。さっきはごめんね」
「気にすることないニャ! 今度からはもっと私を信頼してどうしたいのか話してほしいニャ。私も心配だから聞くようにするニャ!」
「うん。私もそうするね!」
はあ......。英雄ネコにクラスアップしちゃった。自分のせいだからなにも言えない......。自然に落ち着くまで我慢するしかないかなぁ。
「そういえばメリィちゃんはなんで治療院に?」
「マリーの薬をもらいに行ってきたニャ!」
「マリーちゃん大丈夫なの?」
「命に別条はないニャ。ただ魔力を過剰摂取した影響で魔力のコントロールと自然回復機能に支障がでてるニャ」
聞いてるだけで大変そうだ。魔法が使えないってことかな?
「それは自然によくなるの?」
「普通はそうだけどニャ。マリーの場合は相当無理をしたからニャー......。なにかいい方法がないか相談してたところニャ」
「そっかー。なにか私にできることがあったらいってね? 私もマリーちゃんの力になりたいし。」
「ありがとニャ。そのときはお願いするニャ!」
メリィちゃんは嬉しそうにニッコリして私の頭を優しく撫でた。
「ねえ......。メリィちゃん。ずっと聞きたいことがあったんだけど聞いていい......?」
「ん? そんな真剣な顔をしてどうしたのニャ?」
「私の年齢っていくつだと思ってる?」
「14歳ぐらいじゃないのかニャ?」
それはいくらなんでも酷すぎる。メリィちゃんとはお話しが必要なようだね。
「私これでも22歳なんだけど......」
「「 ええええええっ!? 」」
二人とも目を大きく見開いて驚いている。
口なんて開けっ放しだ。
メリィちゃんは慌てた様子で私の頭から手を離した。
失礼な!! そんなにビックリすることじゃなくない!?
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