第41話 ギルドマスターの結末

 ー 冒険者ギルド ー

 ギルドマスター視点



「くそっ!!どうしてこんなことに!」


 険しい表情で素手をテーブルに強く叩きつける。

 部屋の中にドンっ!という激しい音が響いた。

 このままじゃまずい。

 あのクソじじいに全てバレるのも時間の問題だ。

 いままではうまくいってきたのに、あのチカとかいうクソガキがきてから全部おかしくなった。


 はじめ出会った時は、マリーメリィ商会の姉妹と同じ格好をしていたから気に食わなくて少し嫌がらせをしてやる程度のつもりだった。


 それがどうだ?


 この俺様に反論して恥をかかせやがった。

 そのうえあんなおかしな格好をしたガキがガルーダ二匹を単独で討伐しただと?

 ふざけるな。

 そんなことあっていいはずがない。


 ギルドマスターは真剣な表情で腕を組みながら考えこむ。


 ヤツとクソじじいを始末するか?


 あいつは一人で宿泊してると聞いた。

 あの強さは惜しいが、俺に散々恥をかかしてくれた報いは受けてもらおう。

 いくら強かろうが眠ってたら何もできまい。



 クソじじいのほうはいま消せば俺が疑われる。

 それなら王都に帰る時に盗賊に襲われたことにして消せばいい。


 あの二人を消したあとで証拠も全て消してしまえば、ギルド内部は俺の圧力で押さえつけられるはずだ。


 それにあのクソじじいは俺が不正にランクアップさせた冒険者達が実力に問題がないか鑑定水晶で検査すると言ってやがった。


 魔道具でギルドカードを鑑定されれば功績のない冒険者なんてランクダウン確実だ。


 そいつを利用してやろう。

 冒険者達を適当に誘導してガルーダを討伐したこと自体をヤツの嘘だったことにしてしまえばいい。


 実際にギルドカードを鑑定して見ていたのはクソじじいだけだ。後はどうにでもなる。


「せいぜい後悔するがいい...。」



 翌朝。

 突然、扉を叩く音が聞こえたかと思うとすぐに扉が開かれた。

 受付のメアリーが凄く慌てた表情で部屋に駆け込んできた。


「大変です!マスター!」

「ん~?そんなに急いで一体どうしたんだ?」

「宿屋で冒険者が重症を負って治療院に運ばれたようです!足を切断されているので冒険者への復帰も難しい状況だと警備隊から報告がきました。」

「なんだと!あー。なんてことだ...」


 内心笑いを堪えながら真剣な表情で残念そうに額に手を添えた。


 ふはは!あのクソガキざまあみろ!

 死ななかったのは残念だが問題はない。

 動けないならいつでも始末できる。

 ヤツが泣き喚いてる姿が目に浮かぶようだ。


「この件でギルド統括が話があるとのことです。もう少しでお見えになるかと思います。」

「そうか。仕方あるまい。」


 少しするとギルドの統括が部屋に入ってきた。

 ギルド統括はそのままソファーに座る。


「なぜ私ががここにきたかは聞いているな?」

「ええ。非常に残念でなりません。まさかガルーダを討伐した英雄があんな事になるとは...。」

「そうだな。お前はなにか知ってるんじゃないのか?」


 鋭い目で俺を睨みつけてくる。

 証拠は残さないように指示はしてある。

 そんな目で睨みつけても無駄だぞ?クソじじい


「いや俺もさっきメアリーから聞いたところでした。」

「そうか。宿にはたくさんの冒険者が泊まっているのになんでだろうな。」

「口が悪いところがあったので、他の冒険者から恨みでも買っていたのかもしれませんな。全く残念でなりません」

「そうだな。残念でならないよ。」



 ギルドの統括が急に立ち上がり両手をパンパンと叩いた。


 次の瞬間。


 突然、扉が開いて警備隊数人が部屋にはいってきた。

 警備隊によりすぐに手足を拘束される。

 くっ!身動きがとれん。


「なんだ貴様ら!!これはどういうことだ!」

「わたしはお前のバカさ加減に呆れて言葉もでない。この期に及んであんな事件を引き起こすとはな。」


 ギルド統括は大きく溜息をついた。


「何を言っている!俺は何も知らない!!」

「ほー。ではなぜと思ったんだ?宿には冒険者が他にも泊まっているはずだが?」

「それはさっきメアリーからそう聞いたからだ!!」

「嘘だな。」

「ふざけるな!なぜそんなことが言い切れる!」

「私がメアリーに誰が重症を負ったのかわからないように報告させたからだ。怪我をしたのは襲った冒険者の方だ。」


「な、なんだと?」


 ギルド統括は冷たい視線で見つめる。


 ハメられた...?


 そんなバカな!

 ありえない。

 こんなことあってはならない!!



「あー。襲った四人の冒険者からもギルドマスターの指示で凶行に及んだと証言もあるぞ?」


「なっ...!!」


「それと合わせていままで貴様が行ってきたことも、ギルド職員からの証言や証拠になり得る書面も見つかっている。もう諦めるんだな。」


「くそがあああっ!!ふざけるなよクソじじい!!」

「もう聞くに耐えん。早く連れて行け。」


 ギルドマスターは顔を真っ赤にして、怒り狂ったように叫びながら激しく抵抗する。


「俺は悪くない!!あいつが全部悪いんだあああああ!!あいつさえこの街に来なければこんなことにはっ!!」


 抵抗するギルドマスターを警部隊が数名で両腕を強く掴み抑えつける。


「くそがあああっ!!俺を誰だと思っているんだあああ!!貴様ら離せえぇぇっ!!」



 ギルドマスターは警備隊に無理矢理引きずらて連行されていった。

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