第39話 ギルド改革の幕開けだよ!③


 ネコの家具に戸惑いながらソファーに座ってみる。

 沈むような感じで座り心地がとてもいい。

 ベットのほうはどうかな?

 おー。ベットもフカフカだ。

 これならずっと寝てられそう。


 トントン!


 扉を叩く音がしたので振り返る。

 メイドさんかな?


「はーい!」

「チカ!わたしニャ!」


 メリィちゃんが扉をあけて部屋に入ってきた。


「どうかニャ!この部屋は気に入ってくれたかニャ?」

「うん。すごくいい部屋をありがとう!なんでネコだらけなのかは気になるけどね。」

「ニャハハ!チカはマリーの猫耳パーカーを気に入ってくれてたからネコで合わせてみたニャ!」

「なるほど。」


 そういうことね。

 でもネコが大好きってわけじゃないんだけどなあ。

 マリーちゃんのことを考えると今更そんなこと言えないよね。


「チカいまから時間あるかニャ?」

「大丈夫だよ?どうかしたの?」

「チカを襲う指示をした犯人がわかったニャ!」

「DQNマスター?」

「DQNってなんニャ?」


 しまった。

 つい口にでちゃった。


「気にしないで。ギルドマスターとか?」

「そうニャ!」

「でもなんのために?今更私を消してもあまり意味がないよね?」


 そもそも私がいなくてもDQNマスターはダメだったと思う。

 ガルーダの件で街へ損害を与えた責任があるしね。


「それがニャー...。色々いつものように言い訳をいってたみたいだけど、要約すると逆恨みニャ。」

「うわっー。」

「ホントにダメなやつニャ。」


 まさかただの逆恨みだとは思わなかった。

 よくあいつギルドマスターになれたよね。


「あとギルドでの調査も終わったので一緒にまたギルドに来て欲しいニャ!」

「うん。いいよー。」

「ありがとニャ!」


 これでギルドの件も落ちつくといいなあ。

 二人で屋敷をでて冒険者ギルドに向かう。



 冒険者ギルドにつくと周囲から視線を感じた。

 周りを見渡して冒険者達を確認する。

 なんだろ?

 みられてる?


「チカ!なにしてるニャ!早く来るニャ!」

「あっうん。」


 メリィちゃんと二人でギルドマスターの部屋に向かった。

 部屋の中に入るとギルドの統括のお爺さんがソファーに座ってた。


「よく来てくれた。こっちに座ってくれ。たびたび申し訳ない。」


 メリィちゃんと向かい側のソファーに座る。

 あれ?このお爺さんひとりだけ?


「大丈夫ニャ!ギルドマスターがいないみたいだけど調査はどうなったのニャ?」

「あいつはいま牢屋の中だ。身勝手な理由で冒険者を使って殺人の指示を出したんだ。実行犯からの証言もあるし、今回のガルーダの件もある。まあ間違いなく重い罰が下るだろうな。」


 あのおじさん達冒険者だったんだ。


「ガルーダの件はどうなったニャ?」

「あいつが依頼したって話してた冒険者の名前は最後まで口からでてこなかったよ。」


 そりゃそうだ。

 ガルーダを倒したの私だもん。


「それに草原に避難してた街の人達の証言とギルド内部の職員の証言で、この街の高ランクの冒険者達が街に進入したガルーダとは戦わずに草原に避難してたのも分かった。」


「どういうこと?高ランクなら色々経験を積んでいるし強いんじゃないの?」

「ああ。本来はそうだな。」

「本来は?」

「この街のギルドはたいした討伐功績もないのに不正に冒険者をランクアップしていたことが分かった。鑑定水晶でこの街の高ランク冒険者達を確認したらほとんどがCランク程度だ。Bランクも数人しかいなかったよ。」


 これはひどい。

 冒険者偽装だ。

 ここまで腐ってたのか。


「まあアイツならやりかねないニャ。」

「調べたらヤツの利己的な理由での不正が山のようにでてきたよ。」

「もっと早く気づくべきニャ!全くなにやってるニャ!」

「弁解の言葉もない。調査隊もやつの利己的な理由と不正が原因で送ることができず、街に多大な損害を与えてしまった。」

「これでうちのお店が横取りなんてしてないことも、チカがガルーダを討伐して街を救ったことも信じてもらえたのかニャ?」

「もちろんだ。本当に申し訳なかった。」

「ホントだニャ!いい迷惑だニャ!」


 メリィちゃんホントはっきり言うよね。

 私も見習わないといけない。

 でもこれでやっとギルドの件も終わりかな?

 こうゆう面倒なのはこれっきりにしてほしいよ。


「チカ。ちょっといいかな?」

「ん?なに?」

「ここにいる受付のメアリーから話は聞かしてもらった。ギルド加入の時のことは本当に申し訳なかった。」

「もういいよ。メリィちゃん達のおかげでギルドを利用しなくても困らなかったしね。」

「ギルド統括をしているワシとしては耳が痛い話だな。」

「そうかもね。」

「あともう一ついいかな?」

「なに?」

「チカはギルドに加入しているな?」

「うん。一応ギルドカードはもらったね。」

「今回の二匹のガルーダ討伐の功績により異例中の異例ではあるが、君はAランクにランクアップすることになった。」

「それはすごいニャ!さすがチカだニャ!」


「んー...。」



 どうしようかな。

 これはまずい。

 魔槍ブリュナークは確かに強力な武器だけど私自身が強化されるわけじゃない。

 それも全力でつかったら魔力枯渇で気絶しちゃう。

 私だけで戦ったらお猿さん達ともまだ厳しい。

 そんな状況で強い魔物がでたときに、Aランクだからって理由で頼られても困る。


「ごめんなさい。お断りします。」

「なんでニャ!?」


 二人が驚いた顔で私を見つめる。


「んー。いまのままで困ってないから?」

「申し訳ないがギルドのランクアップに関しては本人の意志に関係なく功績によって変動するものだ。拒否できるものではないぞ?」


 それは困る。

 なんか面倒だなあ。


「ねえメリィちゃん。」

「ニャ?どうしたニャ?」

「これからも魔物の解体や買取はしてくれる?」

「当たり前ニャ!」

「ありがと。」


 うん。決めた。


「ギルドの統括のお爺さん。」

「なんだ??」

「私ギルドやめます。脱退手続きお願いできる?」

「なっ!?本気か!!」

「うん。」

「ち、ちょっと待て!なんでそんなに嫌なんだ?」

「ギルドに加入しててもメリットがないからね。名声とかも興味がないし」

「ふむ...。」


 ギルド統括のお爺さんは難しそうな顔をしながら腕を組んで考え込む。



「わかった。ワシの権限でAランクにランクアップさせるのは保留にしとく。だから脱退はしないでもらえないか?」

「どうして?」

「正直チカの力が惜しい。ガルーダ二匹を単独で倒すなんてAランクじゃ絶対無理なんだ。あれは一匹でもAランクがPTを組んで倒す魔物だ。」

「でもSランクの冒険者なら倒せるんじゃない?私にこだわる必要はないでしょ?」

「Sランクはこの大陸に四人しかいないんだ。」


 えっ。そんだけしかいないの。

 SSランクまであるって言ってたから、もっと沢山いるのかと思ってたよ。


「そうなんだ。でも私はAランクにはならないし、頼まれても強い敵をわざわざ倒しに行ったりしないよ?」

「わかった。相談だけはさせてくれるならそれでもいい。」

「相談されても断っていいの?」

「ああ。構わない。」


 それならいいかな?

 いまのところ困ることはなさそうだ。

 全部断るつもりだしね!


「それならいいよ。私もどんな依頼がギルドに貼らてるのか興味があったしね。」

「ああ。ありがとう。受けてみたい依頼があれば遠慮しないでいってくれ。職員には伝えておく。」

「ありがと。そうするね。」

「ニャハハ!!ホントにチカには驚かされてばっかりニャ!じゃあ私達は帰るニャ!ほらチカ行くニャ!」

「ああ。本当に迷惑をかけた。そしてチカ。街を救ってくれてありがとう。」


 ギルド統括のお爺さんは申し訳なさそうな表情で深々と頭を下げた。


 私はメリィちゃに腕を引かれながら部屋の外にでた。

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