第29話 憧れの象徴

 マリーちゃんはガルーダに吹き飛ばされて、そのまま地面に叩きつけられた。


 マリーちゃんの視線が私達を見つめる。


「ぐっ..。はあはあ...もぅ..動けない。お姉ちゃん...チカ...にげて...。」


『グルルル...』


 二匹のガルーダが上空からマリーちゃんを見下ろす。



 私は加護で銃器をつくりだそうと心の中で必死になって思い浮かべた。


(なんで...?どうしてできないの!!)


 もっと加護の練習をしてさえいればつくりだせたの?

 そしたら二人を守れたの?


「マリー...。なに言ってるニャ...!マリーを残して逃げられるわけないニャ!」

「ぐすっ。お姉ちゃん...。」


 メリィはマリーのところまで駆け寄ってギュッと抱きしめた。

 抱きしめられたマリーの目から涙が溢れる。



 私は彼女達を見つめながら激しく後悔していた。

 この世界で楽しく平和に生きていければいい。だから身を守る程度の強さがほしい。

 そう思ってた。


 でもこんなの...。


「こんなの全然楽しくないよっ!!」


 ガルーダがマリーちゃん達に向かって上空から凄いスピードで下降してくる。

 私は踏み込んで二人との距離を詰める。二人を抱えて前方に転がるようにガルーダの攻撃を避けた。

 すぐに起き上がってガルーダとの距離を詰める。

 この大きな翼さえどうにかできれば。

 短剣を構えながらガールダの巨大な翼を狙って飛び上がった。

 次の瞬間。

 ガルーダは翼を広げて体をクルッと捻った。

 飛び上がってしまったので避けることができず巨大な翼に弾き飛ばされる。

 ガルーダは上空に飛び上がった。


「くっ...はあ..。はあ...。」


 立ち上がることができずに膝をつく。

 痛みと衝撃で意識が飛びかけた。


 なんて重い一撃なの...。


『グルルル...』

『グギャアア!』


 このままじゃ誰も守れない..。

 なにかできることはないの?

 私はこの街で出会ったみんなを守りたいのに!!

 私にもっと力があれば、助けることができるのに...。


 上空を見上げてガルーダを見つめる。


「誰か助けてよ...。私じゃ無理だよ。」


 二匹のガルーダは私達を見下ろし翼を羽ばたかせた。

 再び私達に向かって真っ直ぐに下降してくる。

 迫りくるガルーダに恐怖を感じ反射的に瞳を閉じる。

 死を覚悟した。



 ──その瞬間。



[チカに持っててほしい。]



 突然、彼女との冒険の想い出や別れ際の最後の言葉が脳内を駆け巡った。


 ハッとして目を見開く。


 ── そうだ...。


 彼女はどんな状況でも諦めたりしなかった。

 ありったけの力を振り絞って立ち上がる。


「お願い。私に力を貸して...。」


 瞳を閉じて心の中で強く想い浮かべる。

 私をいつも助けてくれた彼女の戦う姿...。

 彼女が愛用してた最強の武器。

 武器の形状も能力も私が忘れるわけない...。


 穂先と柄の先端の両方に、両刃の刃と翼のような形状の刃がついた漆黒の槍。


 私が彼女から受け継いだ『


 まばゆい光が周囲を包み込んでいった。

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