第28話 ガルーダ襲撃

 城門をくぐって街にはいると街の中は地獄のようだった。


 建物はいくつか倒壊して瓦礫が散乱しており、街の人達の悲鳴がいたるところから聞こえてくる。


 私は宿屋に向かった。

 

 走りながらこの世界について考える。この世界では簡単に命が消える。


「分かっていたつもりだったのに……」


 私は心のどこかでこの世界をまだ夢の中の出来事のように考えていたのかもしれない。早くマイちゃんのお母さんを見つけてマリーちゃん達と逃げないと……。



 宿屋に着くと、建物は幸運にも倒壊することなく無事だった。


「マイちゃんのお母さーん!! どこですかー!?」


 私は中にはいって声をかけながらマイちゃんのお母さんを探しまわる。


「宿屋の中にいない……?」


 じゃあいったいどこに? 思い当たる場所なんてないよ……。でもいないならここにいても仕方ないよね。


 私は無事を信じてマリーメリィ商会に向かうことにした。


「えっ……。なにあの炎!?」


 マリーメリィ商会の方に向かって走っていると遠くの空に凄まじい爆炎がみえた。


(あの辺りってマリーメリィ商会の近くだ)


 目を凝らしてよく見てみる。


「あれがガルーダ? あっちは……。まさか誰かが戦ってるの?」


 遠すぎてはっきりとは見えない。けど小さな人影が巨大なガルーダと戦ってるように見える。


「もしかして……。マリーちゃんなの? なんだろ。すごく嫌な予感がする……」


 私はマリーメリィ商会に急いだ。



「これは……。マリーちゃん! メリィちゃん! どこにいるのー!?」


 マリーメリィ商会はボロボロになっていた。あの立派だった建物は半壊して面影もない。


(お願いだから二人とも無事でいて……)


 私は瓦礫を避けながら周囲を探しまわった。


(あっ。あそこにいるのって……。メリィちゃん?)


 急いで近づいてみると瓦礫の下敷きになって、目を潤ませながら心配そうな表情で上空を見上げているメリィちゃんを見つけた。


「メリィちゃん!? 大丈夫なの!?」


「ちかあああ!! マリーがあああ! マリーがあああ!」


「待って!! まずその瓦礫をどかすね!!」


 メリィちゃんは酷く動揺していた。すぐに瓦礫に手を伸ばして思いっきり上に持ち上げる。


「メリィちゃん! これでどう? でれそう??」


「いけそうだニャ!!」


 メリィちゃんは苦しそうな表情で地面を這いずりながらなんとか瓦礫から抜けだした。


「助かったニャ! でもマリーが!!」


「マリーちゃんはどこなの!?」


 メリィちゃんはまた上空を見上げた。


(やっぱり戦ってるのマリーちゃんなの!?)


 私もすぐに上空を見上げる。



 マリーちゃんは上空で猫耳パーカーをボロボロにしながら戦っていた。


 上空を飛行してガルーダの攻撃を避けながら燃え盛る巨大な炎を放って攻撃している。

 ガルーダも巨大な翼や腹部は黒く焼き焦げていて、かなり消耗しているように見える。


「すごい。すごいけど……。でもあれ魔力は持つの? 私との狩りも休みながらだったのに……」


「マリーは魔力回復ポーションを補給しながら無理矢理魔法を放ってるニャ……。あのままあんな無茶を続けたらマリーが死んじゃうニャ……。チカお願いニャァァ。助けてニャ……」


 メリィちゃんは涙を流しながら悲しげな表情で私を見つめる。


 私は必死にマリーちゃんを助ける方法を考えた。


 この状態で三人で逃げればガルーダは絶対に追ってくるよね。けどこのままじゃマリーちゃんが死んじゃう。じゃあ遠距離で攻撃? 加護で銃をつくりだせればいける……? でも私にはつくりだせなかったし……。


 あぁーっ!! もうっ!! いったいどうすればいいの!?



『グギャァァアアァァ!!』


 私はガルーダの鳴き声で我にかえった。

 

(なにいまの鳴き声。苦しんでる感じとは違かったよね?)



『グルルル……』


 街の中からもう一匹のガルーダが上空に飛び上がってきた。


 巨大な翼を羽ばたかせて凄いスピードでマリーちゃんの後方から襲いかかる。


「もう一匹いたの!? まさか仲間を呼んだの?」


「ああああぁぁ!! ぐすっ。マリィィーッ!! もう逃げるニャあああーッ!!」


 マリーちゃんは後方からの翼の羽音に気付いて身を躱す。しかし躱した方向にもう一匹のガールダが回り込み巨大な翼をマリーちゃんに叩きつけた。

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