第27話 街の惨状
街の異変に気づいた私は、必死にマリーちゃんを追いかけた。
(なんなのあの巨大な鳥……。人なんて簡単に飲み込みそうな大きさだった)
思考を巡らせながらやっと街の城壁近くまで辿り着いた。
「はあ……はあ……はあ!」
こんなことならもっと運動しておくんだった! インドア派の私にこの距離はつらすぎる!!
「ん? あれは……?」
少し離れたところに街の人達と冒険者達が集まっていた。
(あっ、マイちゃんがいる!)
猫耳パーカーを着てるからすぐ分かったよ! 猫耳パーカーって迷子対策にはありなのかもしれない。
私はマイちゃんに近づいていく。
「マイちゃん大丈夫?」
「ぐすっ……。お姉ちゃん! お母さんが!! マリーちゃんがあ!!」
マイちゃんは真っ赤に目を腫らして泣きながら抱きついてきた。
「ま、まって落ち着いて! 二人はどうしたの?」
「お願いお母さんを助けて……。まだきっと宿にいるの。マリーちゃんはさっき街に走っていっちゃった……」
マイちゃんに頭を撫でながら周囲を見渡す。
避難してる街の人達が少ない。冒険者達はなんで助けにいかないの?
冒険者達に視線を向ける。
街の門で指示をだしていた赤髪の女性冒険者が膝を抱えて、ボソボソ呟きながら震えている。
「あ、あんな化け物に勝てるわけない……。私が弱いわけじゃ……。だってあんなの……」
他の冒険者も血の気の引いたような表情でただ街の方角を見つめていた。
DQNマスターが街の人達に取り囲まれて、なにか叫んでいるので気になって近づいてみる。
あっ、マイちゃんもついてきちゃった。あまり聞かせたくないんだけどなぁ……。
「はやくガルーダを倒してくれよ!! AランクやBランクがいれば戦えるだろ!? まだ女房と娘が街の中にいるんだよ!!」
「他の街からの救援はまだか! このままじゃ俺らの街が!!」
『他の街への救援要請は突然の襲撃だったからできていない! どうしようもないだろ? だいたい討伐には行こうにも冒険者達が怯えて使い物にならん!! この役立たずどもがッ!!』
「そんな無責任な!! 街がどれだけギルドに支援してきたと思っているんだ!!」
「そうだ! ふざけるな!! あんだけ城壁前で暴れていたのに突然もなにもないだろ!」
『俺は悪くない!! 文句ならあの鳥野郎に言えばいいだろう!!』
肝心な時もこの街のギルドは役に立たない。ダメだとは思ってたけどここまでなんて……。
「ぐすっ。お姉ちゃん……」
マイちゃんは瞳を潤ませてと不安そうに私を見上げる。
私じゃ何もできないかもしれない。けどあのギルドの人達のようになりたくない。
それにマリーちゃん、メリィちゃん、マイちゃんのお母さんをなんとしても助けだしたい。
やっとこの世界でできた繋がりだしね。
「マイちゃん私もいくね。怖いけど頑張ってみるよ」
「お姉ちゃん……」
「みんなの事が大切だからね……。あっ、危ない時は逃げるよ! 死にたいわけじゃないからね」
(あっ、そうだ)
私は思いっきり手を叩いた。
周囲の人達がビクッ! とした後に視線が私に集中する。
私はDQNマスターを睨みつけた
「みんなもうやめときなよ。そんな筋肉だけの男なんてなんの役に立つの?」
「なっ!? 貴様っ!!」
「私は行くよ? 助けたい人がいるからね。マスターさんもくる?」
DQNマスターは真っ赤にして悔しそうな顔でプルプル震えている。
(このまえのお返しだあああーッ!! あー!! スッキリした!!)
私は街に向かって走り出した。
険しい表情で走り去っていったマリーちゃんが心配だ。無理していないといいんだけど……。
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