第26話 覚悟と決意
マリー 視点
「はやく......もっとはやく......!」
街に向かって草原を全速力で走る。
魔力枯渇で目眩がして少し身体がフラつく。
[危なくなったらこれを飲むニャー!]
お姉ちゃんのことを思い出しながら猫耳パーカーのポケットから渡された魔力回復ポーションを取り出した。
倒れないように必死に耐えながら、魔力回復ポーションのフタを開けて一気に飲み干す。
お姉ちゃんありがとう。いま行くからね。
街の城壁が近づいてきた。
城壁から少し離れた草原に人が集まっている。
「あれは......。街の人達と冒険者?」
もしかしたらあそこにいるかもしれない。
私は立ち止まり草原に集まっている人達を見つめた。
避難できた街の人あれしかいないの?
遠くに泣きながら座っているまいちゃんを見つけた。お姉ちゃんやお店の人達はいない。まさかまだ街の中......?
「はやく助けに行かないと......!」
私は急いで街の中に入った。
逃げ惑う人達や壊れた瓦礫を避けながらマリーメリィ商会に向かう。
お姉ちゃん......。
お店のみんな......。
どうか無事でいて......?
やっとマリーメリィ商会に辿り着いた。
建物は半壊していた。
瓦礫と商品が地面に散乱している。
「ひどい......」
私は不安で胸が押しつぶされそうになりながら、大きく息を吸い込んだ。
「お姉ちゃんっ!! みんなどこー!?」
呼びかけながら必死に周囲を探す。
瓦礫のした?? それともまさかガルーダに......。
最悪の事態を想像して身体が震える。
「こ、ここだニャー......」
お姉ちゃんの声だ!!
私は声がした場所に急いで駆け寄った。
お姉ちゃんは下半身が瓦礫の下敷きになって身動きがとれない状況みたいだ。
「マリー。なんでここにきたニャ......? ガルーダが見えなかったのかニャ?」
「お姉ちゃん! 瓦礫が......。大丈夫?」
「痛みはないニャ。だけど瓦礫が邪魔で動けそうにないニャ」
「ん!すぐどかす!お店のみんなは?」
「ふふふ。お店の地下に避難させたニャ!私が最後に避難しようとしたらこのざまにゃ」
「さすがお姉ちゃん......。みんな生きててくれて本当によかったぁ......」
私は嬉しくて涙が溢れてきた。
メリィはマリーを見つめながら微笑んで優しく頭を撫でた。
「さあ感動の再会はあとニャ!! すぐ瓦礫をどかして地下に逃げるニャ!」
「ん! 瓦礫をどかしていくね! ちょっと待ってて?」
私は涙を拭いて瓦礫を持ち上げようと手を伸ばした。
『グルルルル......』
不意に後方から魔物鳴き声がした。
私が慌てて後ろを振り返ると、ガルーダが上空から私たちを見下ろしていた。
「マリーっ!! 私のことはいいニャ!! 早く逃げるニャ!」
「ん。それだけは絶対にできない」
「マリーっ!! ダメにゃ!!」
私は地面に散乱している商品の中から、割れていない魔力回復ポーションを数本拾って猫耳パーカーのポケットにしまった。
私は覚悟を決めて風魔法を使った。
風が絡みつき身体を包み込んでいく。
「ん......!!」
さらに魔力をこめて風をコントロールして身体を空中に浮き上がらせた。
「やめるニャー!! いまのマリーのレベルと魔力量でそれは無茶ニャ! 魔力ポーションを使って無理矢理そんな魔法をつかったら体が持たないニャー!!」
うっ。魔力の消費が激しい......。身体が壊れるかもしれない。怖い......気持ち悪い......目眩がする......。
私は猫耳パーカーのポケットから魔力回復ポーションを取りだすと、フタを開けて一気に飲み干した。
今の私ではこの魔法を扱いきれないのは分かっていた。でも空中を自在に飛び回るガルーダをどうにかする方法が他に思いつかない......。
私はガルーダを睨みつけた。
倒しきれなくてもいい。なんとか街から追い払ってみせる!!
私は空高く舞いあがりガルーダの後ろに素早く回り込む。杖を構えてガルーダに全力で炎魔法を放った。
燃え盛る真っ赤な炎がガルーダを包み込んでいく。
「今度は私がみんなを守る」
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