第22話 異変の真相だよ!

 ー 東の草原 ー


 シルバーウルフ討伐隊リーダー

 冒険者:アージェ


「はぁはぁ。くっ......!」


 体勢を崩し膝をつきかけるも、大剣を地面に突き刺してなんとか身体を支えた。

 

 周囲の冒険者に視線をおくる。半数がすでに戦える状態ではなかった。


「怪我人が多いわね......。レナード! 治癒ポーションの在庫はあとどのくらい?」

「もう残り数本しかねえな。どうする?」

「じゃあレナードは一度状況をギルドに報告して治癒ポーションの補給と低ランクでもいいから応援を要請をしてきて!低ランクでも怪我人ぐらい運べるでしょ」

「わかった。すぐもどる。アージェ! どうにか持ち堪えてくれ!」

「大丈夫よ。私を誰だと思ってるの?」


 レナードは愛想笑いを浮かべたかと思うと街に向かって走りだした。



 私は討伐メンバーが戦闘を続けている方向に視線をもどした。

 あと数十匹ってところかしら。

 討伐メンバーを見つめながら大きく息を吸い込んだ。


「前衛は戦線を押し上げろ!!怪我人を後ろにさげて応援と補給が来るまで無理は──」


『グルルル......』


「おい......。今の聞こえたか?」

「誰かの腹の鳴った音じゃねえか?」

「いや。それにしちゃデカくなかったか?」


 討伐メンバーはざわめきながら周囲を警戒する。


 なにいまの?  私は警戒しながら辺りをうかがった。


「異変はなさそうね......」


「おい!!シルバーウルフどもが!!?」


 シルバーウルフ達がいた方向に視線をおくると、すべてのシルバーウルフが討伐メンバーとの戦闘をやめて私のいる方向に走ってくるのが見えた。


「うわっ!」

「どうなってんだ!?」


 ──なにが起こってるの?


 私は状況が理解できず困惑する。奴らの目的は私達? 賢い魔物なのは知っていたけど。まさか指揮系統を理解しているっていうの!?

 

 私はすぐに大剣を地面から引き抜き構えをとった。


「おちつきなさい!私達だけで凌ぎ切る!前衛はすぐこっちに戻って合流しろ!」


 近くの討伐メンバー達は一瞬ハッとした表情をしたが、慌てて向かってくるシルバーウルフ達に武器を構えた。



「えっ?」


 こちらに向かって走ってきたシルバーウルフ達が私達も素通りしていく......? 目的は私達じゃない?

 

 すぐに我に返り振り返る。

 

 ──まずい! あっちの方向は!!


「おいあっちは街の方向だぞ!?」

「アージェさん!!すぐに追いかけましょう!」


 他の討伐メンバーは焦った表情で騒ぎだす。


 私は街のある方向を眺めながら、一度大きく深呼吸をして状況を整理することにした。

 街は城壁があるからしばらくは大丈夫なはず。

 それに私達はすでに長時間の戦闘で疲弊している。

 この状況で無策に追うのは自殺行為だわ。



 私は後方にいる冒険者達のほうを振り返った。


「街は城壁があるからまだ大丈夫だ!みんな一度体勢を立て直してから追うぞ!!」


 他の討伐メンバーも状況を理解したのか怪我人の治療や移動の準備に取り掛かりはじめた。




「ん? 急に暗く......?」


「うわっ!!」

「ぐっ!?」


 太陽の光が遮られたかのように暗くなった。次の瞬間。砂混じりの激しい風に身体が吹き飛ばされた。


「くっ......!」


 私は痛みに耐えつつ身体を起こした。

 

 辺りを見渡そうとするが砂埃に覆われていてよく見えない。


「いったいなにが──」


『グギャァァー!!!』


「なっ!! 魔物!? いったいどこに?」

 

 慌てて武器を構え鳴き声がした方向に振り返った。

 

 二匹の黒い鳥のよう魔物が街の方向に飛び去っていく。私達は今あいつらに吹き飛ばされたの? それに......。


「あの姿形に......。あの大きさ......。まさかガルーダ......?」

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