第21話 傲慢な冒険者と東の草原の異変②
ー 東の草原 ー
シルバーウルフ討伐隊リーダー
冒険者:アージェ
街をでて1時間ほどで東の草原についた。
私は草原を見渡した。広がる緑の大地に無数に白いなにかが点在している。
「おい。あれシルバーウルフか?」
「まだよくみえねえな。」
他の冒険者達も草原を見つめて騒ぎだす。
私は瞳を閉じて現状について考えた。
まだ距離があってどれだけのシルバーウルフがいるのか見えてこない。考えなしに全員で進むのは危険かもしれない。
足の速いスキルや遠くを見渡せるスキルを持ったレンジャーの天職を持った冒険者がいればよかったんだけど......。いないものは仕方ないわね。
「アージェさん。どうしますか?」
「このまま前衛を先頭に進行する!」
シルバーウルフ程度何の問題はない。
草原の先を見据えて討伐メンバーに指示を出した。
ー 冒険者ギルド ー
受付担当:メアリー
「はあー...。」
私はギルドの受付カウンターに座り大きなため息をついた。
本来シルバーウルフはとても賢い。
小規模の群れで行動し連携して獲物を捕食する。
冒険者との戦闘時も危険と判断すれば退却を選択できる程度の知能もある。
そんな魔物が餌になる獲物も少ない草原に大量発生するなんてどう考えてもおかしい。
本来であれば調査隊を先に派遣して状況を把握。その後戦略を立てるべき案件。
なのに現在ニッケルのギルドには調査に適した冒険者がいない。
調査に適した冒険者は目立った戦闘力がないことが多く、比較的平和なこの街で活躍の場は少なかったためランクアップすることが難しかった。
それが気に入らなかったあの筋肉バカが暴言や虚偽の吹聴などありもしない素行不良をでっち上げて街から追い出してしまった。
高ランクプレイヤーを多数囲い込むためにしてきた不正なランクアップや功績を上げやすい攻撃職への過度な優遇も冒険者達が離れていくことに拍車をかけた。
おかげで脳筋だらけのバランスが悪いギルドになってしまった。
「他の街に救援要請をすればよかったのに。」
「マスターのプライドが許さなかったんでしょ。」
隣のカウンターに座る同僚の声に気づき振り返る。
彼女も呆れた顔でため息をついた。
バターン!!
扉を開ける大きな音に驚き振り返る。
ギルドの入口にボロボロの冒険者が倒れていた。
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