第18話 マリーちゃんの想い
門の前に着くとたくさんの冒険者が武器を持って集まっていた。
あれ30人ぐらいはいるよね? なんのために集まってるんだろ。
「もう少し経ったら出発する! 食糧や装備を再度確認してくれっ!!」
赤髪のロングヘアーをした綺麗な女性冒険者が他の冒険者に指示を出していた。
細身でスタイルもいい。背中には大剣を装備している。
あの剣重くないのかな? 私なら立っていられない自信がある。
「マリーちゃん。この冒険者達のことなにか知ってる?」
「ん......。街の人が話してた。東にある草原にシルバーウルフが大量発生してるらしい」
「よくあることなの?」
「ううん。草原までシルバーウルフが出てくるなんてめずらしい。いつもは草原の先にある丘や森にいる」
『マスター! 一度調査隊を派遣するべきです!!』
『黙れっ!! シルバーウルフごときなんの問題もない。俺に指図するなっ!! 首にされたいのか!?』
『うっ......。申し訳ありません』
『あっ? なんでネコがここにいるんだ?』
後ろから話し声が聞こえてきたので振り返ると、腕を組んだギルドマスターが私達を睨みつけていた。ギルドで受付してくれた女性も一緒だ。
でたなDQNっ!! しばらく顔も見たくなかったのに!!
「ん......。私達は森にいくだけ」
「そうかそうか。うちの優秀な冒険者が街の安全のために身体を張ってるのに、ネコは仲良く森にお出かけかぁー!! いいご身分だなぁー?」
「マリーちゃん。ほっといて森にいこ」
「ん......。わかった」
「......まてよ。ネコの格好をしていきなり暴言を吐くような口だけのお前らじゃ、足手まといになって街が危険に晒されるかもしれんな。ネコには森で遊んでもらってたほうが街のためにもいいかもしれんな!!」
ギルドマスターは腕を組んで馬鹿にしたような顔つきで私達をみてニヤニヤしている。
〈マスターの言う通りだな〉
〈ああ。俺らが街のために頑張ってるのに、いい気なもんだ〉
〈おかしな格好しやがって。なんの役にも立ちやしねえ〉
「どうせならもう一匹のネコも誘って、三匹仲良くそのまま森で暮らしたらどうだあ?」
周りにいる冒険者の話し声がボソボソ聞こえてくる。
さっきの赤髪の綺麗な冒険者も私達に冷ややかな視線を私達に向けていた。
本当にこの街のギルドはダメかもしれない。DQNが扇動して私達を貶めようとしてることに誰も気づかないの? 私みたいに気に食わないって理由で依頼が受注できずに、追い出された冒険者達を見てなんとも思わないの?
私はマリーちゃんのほうに視線を向けた。
マリーちゃんは両手で服をギュッと握りしめながら、悔しそうに唇を噛んでいる。
マリーちゃんのためにも早く外にでるべきだね......。
私はマリーちゃんの腕を引っ張り、街の門に向かった。
街の門をでて西の森に続く草原を歩きながら、私はマリーちゃんの方に視線を送った。
普段から無表情だから表情から感情が読み取れないけど大丈夫かな? 落ちこんでなきゃいいんだけど......。
「マリーちゃん。だいじょうぶ?あんなの気にしちゃダメだよ?」
「ん。ありがと。チカ。私ね......」
「ん?」
「私ね......。強くなりたい。お姉ちゃん。マイちゃん。マリーメリィ商会のみんなを守れるように。この大切な猫耳パーカーも馬鹿にされないぐらいすごく強くなりたい......」
「うん。一緒に頑張ろ?」
私はマリーちゃんからとても強い想いを感じた。
私は優しくマリーちゃんの頭を撫でた。
マリーちゃんがこんなに話してくれたの初めてかも。よほど悔しかったのかな。
そういえば私も同じように強くなりたいって強く想ったことあったなー......。
まあ、今はあの頃と違って、身を守れるぐらいにある程度強くなれればいいんだけどね。
私は憧れた彼女との時間を想いだしながら、マリーちゃんと西の森に向かって進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます