第8話 キャットフードって猫缶じゃないよね?

メリィちゃんの案内で一緒に食事にいくためにマリーメリィ商会をでた。


 マリーちゃんとは手を繋いでいる。気に入られたのかな?可愛いし、いい子そうだから嬉しいけどね。


「あそこが私オススメのお店ニャ! 隣が宿屋になってるから飲みすぎても安心な点が素晴らしいとこニャ!」


 そう言うと、メリィちゃんは得意満面な笑みを浮かべた。

 

 まだ少し距離があるのに、お店の外まで美味しそうなニオイが漂ってくる。お店の外観は木造でオシャレな居酒屋みたいなかんじだ。


 いいお店を紹介してもらえた。メリィちゃんに感謝だね!


 お店の近くまでくると、入口には木材のスタンド式の看板があった。

 

 提供している料理が書いてあるのかな?


【 キャットフード 】


 目を擦ってもう一度よく見てみる。......やっぱりキャットフードって書いてある。


「いつまでも眺めてないで早くいくニャ!」

「ん。チカはやくいこ」

「えっ!? でもここって......」


 二人に手を引っ張られながら中に入ると、お店の中はたくさんのお客さんで賑わっていた。


 〈ぷっ! おいあれ見てみろよ。なんか一匹増えてるぞ。〉


 私のことを言われた気がする。

 気にしすぎかな?


 確かにこの街にきてから私の世界の服を着ていたのは、メリィちゃんとマリーちゃんだけだった。でも王都で流行っていて大人気なら、猫もたくさんいるはずだよね。


 この街も流行りがくればすぐに猫だらけだ。

 私が目立つこともなくなるはずだ。


 それにあまりに視線が気になるようなら王都にいくなり、別の街にいって猫耳パーカーを脱げばいいだけの話だ。



「いらっしゃいませ! あっ、メリィちゃんじゃない。いつものセットを3つでいいのー?」

「それでお願いするニャ! 私もうお腹がペコペコニャ!」

「ふふっ! はいはい。すぐ持っていくから席に座って待っててね」


 猫缶じゃないよね? 信じてるからね?



 席に案内されて、おしゃべりをしながら少し待っていると、美味しそうな料理が運ばれてきた。


「おまたせー♪ ゆっくりしていってね」

「ありがとニャ! さあ食べるニャ!」


 美味しそうな肉料理とスープのセット。あと形は違うけどフランスパンぐらいの硬さのパンもついてた。料理の味もとても美味しい。

 

 メリィちゃんにキャットフードについて聞いたら、お店の名前だった。


 ──まぎらわしいんだよっ!!



「そういえば、チカはしばらくこの街に住むニャ? 冒険者にはなるのかニャ?」

「田舎から来たばかりでよく分からなくて。その冒険者って?」

「ん。いろいろなところで魔物を倒してお金をもらう仕事」

「マリー! それじゃ分からないニャ! 冒険者っていうのはギルドで加入していろんな場所で依頼を達成して報酬をもらう仕事ニャ!」

「ん! 私もそう言った」

「全然違うにゃ!」

「だいたい同じ」



 ギルドかあ。ゲームでもあったなあ。学生の頃にはまっていた頃は眠気と戦いながら遊んでたっけ。


「ねえ冒険者って誰でもなれるの?」

「犯罪歴がなければ加入は誰でもできるニャ!でもチカの天職によっては冒険者はやめたほうがいいニャ。あぶないニャ」


──天職? あっ、職業のことかな?


「うん。わたしは魔道士。冒険者向き」

「じゃあ私は向いてないかな」


 だって私の職業の欄は迷子だ。なにも書かれてない。それとも生粋のニート? いつか目覚めてくれることを祈るしかない。


 でもお金の問題があるんだよね......。今度ギルドにはいってみようかな?


「そういえば勇者様の天職は、勇者なのかな?」

「分からないニャ! でも昔の文献に載ってるかもしれないニャー。興味があるなら古代書庫に行ってみるといいニャ! あそこは色々な本があるニャ」

「んっ。空欄って噂もある」

「それは噂ニャ! 空欄なんてありえないニャ。生まれた時に天職は決まってるニャ」


 勇者様も大変だ。

 召喚されたらニートだった。

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