第2話 森に放たれた変態
状況を整理するとしよう。俺の名前は山本 正男。歳は40になったばかりで警備会社で働いている。ちなみに童貞だ。自家発電に取り掛かろうとして、気づいたら下半身丸出しで大自然の中にいた。全く意味がわからない。
これでは、完全に露出狂だ。とりあえず着ていたTシャツを脱いでそれを腰に巻いておく。
今度は上半身が裸になったが下半身を露出するよりはマシだ。
「ここはどこだ...」
助けを呼ぼうにも、スマホは机の上、そもそも電波が届くのかもわからない。水も食料もパンツさえない。絶望的な状況がそこにはあった。
突然、目の前の草むらがガザガサと音を立てて揺れる。頭が真っ白になり、逃げることすら忘れて、草むらをジット見つめていると、草を掻き分けて現れたのは、角が生えた体長4メートル程の巨大な熊だった。
俺達は睨み合う。1歩でも動けば死ぬ。何故かそう思った。一体どれほどの時間睨み合ったのだろうか、また草むらがガザガサと揺れる、現れたのは弓を構えた金髪の可愛い女の子だった。
「みんな!いたよ!こっちこっち!」
その声に反応して熊は女の子の方へと顔を向けた。アニメや漫画の主人公ならば、女の子を守る為、無謀にも熊に立ち向かったのかもしれないが、情けないことに俺は巨大熊の興味が別の対象へと移ったことに安堵していた。
「おい!1人で突っ込むな!」
「大物を見つけたからってはしゃぎすぎですよ」
弓を構えた少女に続くように剣を持った赤髪の青年と杖を持った茶髪の女性が現れた。
「風よ、切り裂け。ウィンドカッター!」
杖を持った女性が呪文のようなものを唱えると巨大熊の右前足が切断され、血が吹き出す。
(あれは魔法?ここは地球じゃないのか?)
おっさんと呼ばれてもおかしくない年齢だが、魔法らしき謎の力を目にして俺は興奮と胸の高鳴りを感じた。
その魔法に続くように熊の目に矢が刺さる。凄まじい技量だ。動く的を相手に的確に目を狙って当てるなど俺にはできる気がしない。最後は目に矢が刺さり暴れる熊の頭に男が剣を振り下ろし、頭蓋を叩き割った。熊はドサリと地面に倒れ、動かなくなった。
熊の相手をしていて俺に気づいていなかったのか、熊の向こう側にいる俺に気付き、3人組は警戒していた。
「お、俺は怪しい者じゃないんだ!気づいた ら森の中にいてここがどこかも分かってない…。ま、町か村まで連れて行ってくれないか?」
コミュニケーション能力の低い俺だがどもりながらもなんとか事情を説明できた。
「お前、なんで裸なんだ?変態か?」
男の言葉で思い出した。そうだ、わすれていた。俺の格好は今、完全に変態だった。女の子2人が俺に汚らわしい物でも見るかのような視線を向ける。少し、興奮した。俺には露出狂の素質があるのかもしれない。
中年童貞 異世界にて @gorimax
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