第5話 桜華と大福
「さてと、大福殿準備は出来ておりまする故どこからでも撃ち込んでいただいて結構です」
「流石桜華殿、余裕と云ったところですかな、しかしじゃ、桜華殿刀はしっかり握り絞めてくだされよ。でないと刀が吹き飛んでしまいますぞ」
「この刀は死んでも離さないので心配ご無用」
「いらぬ心配はご無用と云ったところでしょうかな、では、参りますぞ」
大福の刀から発せられる異様な何かを桜華は感じ取る
「こ、これは・・・」
大福が一歩こちらに向かって歩く度に刀が押される
ただ歩いてくるだけでなにか大きな岩と鍔迫り合いでもしているかのようだ
「す、すすめん・・・」
それどころか体ごと押されていく
「桜華殿どうですかな?」
「こ、これはすごいな、目に見えない圧力で押しつぶされそうだ・・・」
「では逆にこれはどうですか」
大福が何かを切り替えると、急に刀が大福の持つ刀に吸い寄せられた
「わわわわわ」
必死に踏ん張っていた力が急に前に引っ張られたため桜華はバランスを崩した
桜華の刀は大福の刀に引っ付いてしまった
「いやはや、これは困ったな・・・参ったとしか言いようがないな」
大福は刀のスイッチを切ると桜華の刀は何事も無かったかのように離れた
「どうですか桜華殿、刀も進化すれば銃には負けてないですよ」
「大福殿のおっしゃる通りですな、それにしても不思議な刀だ・・・」
真っ黒い刀身に所々穴が開いている
「その穴が重要だそうですよ」
「ふむ、この穴がね・・・・」
桜華は大福の刀を観察していた
一部始終を観察していたのかお付き様と少女が姿を現した
「なかなか、面白い事をしておるな」
「これはこれはお付き様」
お付き様の姿を見て桜華は改めて自覚させられた
「ふむ、なるほどな」
「桜華様どうかなされましたか?」
「いやいや、なるべく考えなようにしようと思っていたのだが、こちらの御仁を見た瞬間、やはり私は死んだのだなと、納得していたのだ」
「そうでしたか」
「うむ、こういう生き方をしていると、いつ死が訪れてもおかしくない様に身の回りは綺麗にしておったのだが、いざ死んでみると、お世話になった人たちに礼を言えぬのは少し寂しいなと思いまして」
「誰もが経験することです、そうお気になさらずともよろしいかと」
「うむ、そうだな、ところでこちらのお付き様とは?どのようなお方で?」
「ああ、そうですな、桜華殿の時代で言うなればお奉行様と云った感じかもしれません」
「お奉行・・・様、そうでしたか、挨拶が遅れました、拙者、桜華と申します」
桜華はお付き様に膝まづく
「お付き様、なかなか心得ておりますね」
「そうじゃな、セツ、流石は侍じゃな、桜華よ一つ聞きたいがお主にはあの茶屋の奥の扉は見えておるか?」
桜華にはお付き様が指し示す方には茶屋の奥に扉が見えていた
「はい、見えておりますが、それがなにか・・・」
「そうでしたか、私たちには見えておりません、桜華殿はやはり人を殺めている分、なにかの罪を償う必要があるのかもしれんな」
「大福殿には見えないのですか・・・もしかして・・・」
桜華はお付き様の隣にいる少女にも目を向ける
「はい、桜華様、セツにも見えておりませぬ」
「そうであれば致し方ないな、今までの行いの罪を償おうとしようか」
「流石に潔いな、咎人ならこの話を聞いた時点で悪あがきするじゃろうからな、これも定め故致し方あるまい」
桜華は扉の方へ歩き始めた
「少し待たれよ」
桜華は足を止める
「ワシも一緒に行くぞ」
「お奉行・・・いや、お付き様も?」
「少し下でやらねばならぬことがあってな、お主と一緒に行けば退屈しなくて済みそうじゃしな」
「そういう事でセツや、お留守番を頼んだぞ」
「はい、いってらっしゃいませ」
そういうと、お付き様は桜華の肩に乗っかった
「さてと、桜華よ、お主の自慢の刀を見せてみよ」
「は、はい」
そういうと桜華は刀を鞘から抜きお付き様に見せる
「この刀では下に行くと持たぬ故、少し細工を施すことにする」
そういうとお付き様は刀に手を添えた、すると桜華は刀になにかの熱を帯びたように感じた
「刀身がなにやら熱いですね」
「刀に油が付いたり、刃こぼれして切れなくなってはいけないからな、油が付かない様にと自己修復を施しておいた」
「なるほど、この熱では刀身に油が付きそうにないな、しかし・・・」
こう熱気を発していては自分が火傷するのではと少し不安になるが
「大丈夫じゃ、お主以外が触れば火傷するがお主が触っても火傷はせぬ」
桜華は恐る恐る刀身を触ってみた
「ほ、ほんとだ、熱くない・・・」
「では扉を開け行くとしようか」
「はい」
桜華は下へ行く扉を開いた
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