第28話 ピア・バニー

 今日も空き教室でさおりんに勉強を教えていた。内容は数学と物理である。


 しかし、さおりんの落ち着きがない。具体的にはモゾモゾと制服を握っている。


「さおりん?」


 わたしの問いにさおりんは頬を赤らめていた。まるで初恋の感情でも出たのかと思わせるものであった。


……???


 そんなさおりんにわたしが小首を傾げていると。


 さおりんは何かが我慢できなくなったのか。バンと立ち上がる。


「今日はバニーガールだよ」

「はい……?」


 さおりんはそう言うと教室の隅に行きゴソゴソ始め、制服を抜き始める。するとその姿は赤いバニーガール姿をなる。


 その姿にわたしが絶句していると。さおりんは教室の隅からこちらに向かってくる。


「ピョン、ピョン」


 バニーガールの耳は無いらしく両手を頭に当てて作っている。


「あぁーさおりん?」

「I am バニーガールだ、ピョン」


 落ち着け、これはさおりんの罠だ。しかし、ウルウルした目でこちらを見ている。


 はて?本当に罠であろうか……?


 さおりんの裏表のない性格に、怒られたどうしようとの半脅えの様子。


 何より、残念な胸に、そそられ無い下半身、童顔の容姿はバニーガールの衣装方が可哀想だ。


「なによ、わたしのバニーガール姿では物足の?」


 ここは肯定しておこうと思い、小さく頷くと……。ガックシとなるさおりんであった。どうやら、怒られるよりショックだったらしい。ここは残念な容姿の話は終わらせて、素直に理由を聞こう。


「それで、バニーガール姿の理由は?」


 さおりんは少し元気を取り戻したらしく。バニーガール姿でチッチッと指を振る。


「愛だよ、愛!」


 まさかの発情か?わたしがさおりん甘い香りに苦悩する事を考えれば、さおりんだって……。


「えへへ、正義の味方はインパクトだと思ってね」


 正義の味方???


 さおりんのキラキラした口調は嫌な予感が爆発であった。


「来期の変身美少女の衣装だよ」


 何処で騙されたのだ?良い子の味方の変身美少女がバニーガール姿な訳がない。


「ピア・バニーなるキャラが新登場するのだ」

「どれどれ」


 さおりんは携帯を操作してわたしに見せると、確かに来期の変身美少女の告知であった。


『近日公開、ピア・バニー』


 影だけの公開画像であった。しかし、衣装はバニーガールには程遠くモコモコの姿である。


「『ピア・バニー参上』だよ、えへへ」


 バニーガール姿ポーズを決めるさおりんは上機嫌になる。どうやら、変身美少女のコスプレのつもりらしい。


 しかし、何故、セクシーでないと言ったらしょげたのだ?バニーガール姿になってセクシーでないと言われたら落ち込むか。


 女心が難しいところである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る