第11話 ショッピングモールでデート 後編

 ショッピングモールから帰り道は、さおりんが疲れてしまい会話が無く寂しいものであった。


 しかし、電車の中で程よく涼しく感じなから、二人で座席に座っていると。さおりんが寄りかかってくる。


「さおりん?」

「……」


 返事がない、寝込んでいる様だ。近くにさおりんの吐息だけが感じられ、わたしは無防備なさおりんが愛しかった。


「メロンパンは別腹だよ!!!」


 ひいいいい、突然の叫び声に驚く、なんだ寝言か。食べる事が大好きなさおりんらしい。おっと、降りる駅が近づいてきた。


「さおりん、起きる時間だよ」


 わたしはさおりんの肩を掴みゆさゆさする。


「おぉ、夢うつつに二人の距離が近づいたのか?」


 確かにさおりんの吐息は愛しい気分になったが、さおりんはおもいきり『メロンパンは別腹だよ!!!』と言っていた。ここは勿論、否定してと。考えてみると何を否定するのか分からないが問題なかろう。


「えへへ、メロンパンは美味しかったよ」


 やはり食べ物かと認めた、少し残念ではあるが、わたしが心を許せる人である事は確かだ。さて、電車を降りるとまた、バスに乗ることになる。


「駅前のコンビニで何か食べ物を買うか?」


 わたしはメロンパンを食べたいのかと気を利かせる。


「おう、必要なのはタンパク質だ」


 さおりんは迷うことなく唐揚げを買う。斜め上を行くさおりんである。わたしはペットボトルのお茶で我慢することにした。


 コンビニを出るとバスの時刻表を見る。かなりの待ち時間である。わたしがバス停のベンチに座ると。さおりんはその前で舞う様に踊る。


 可憐だ……。


 さおりんの女子力は時に高い。気分は誰よりも幸せなカップルであった。


        ***



 地元に向かうバスの中でのことであった。勿論、さおりんはやはり寝ている。ショッピングモールでの買い物は白い石のブレスレットだけであった。


 車内に差し込む黄昏の光に当てるとキラキラしていた。今日の思い出にピッタリである。


 しかし、光が沈みブレスレットの光は失われていく。永遠は無いのか?気分は失った左足がうずく感触であるイヤ、ここがスタートだ。わたしはさおりんの手を握りしめる。


 こんなにも積極的になれたのは初めてだ。わたしも眠くなり、微睡の中で暗くなった空を眺めていると。


「ビン!」


 さおりんが突然目を覚ます。何故、起きる、わたしはさおりんの手を握ったままだ。とにかく、握った手を放す……良かった気づかれなかった。動揺しているわたしは何とか誤魔化そうと、さおりんに突然起きた理由を聞く事にした。


「ど、ど、どうした、さおりん?」

「わたしの霊感がヒットした」


 バスは信号待ちで河にかかる橋の上で止まっていた。


「怖いな、どんな霊なのだ?」

「河童じゃ、河童の霊じゃ」


 かなり怪奇な言葉だが、一回深呼吸をして落ち着くと、頭が回転し始める。河童の霊か……そもそも、河童などいるのかと疑問に思う。そして、信号が青になり橋からバスが離れると。


「むにゃむにゃ、お休み」


 おい!寝るのか?河童の霊は何処にいった。まあいい、あわゆく、わたしも寝ていまいそうになった。


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