第6話 ケース1 女子高校生失踪事件⑤

 ――結果から話したい。

 来世さんは私からの依頼は、受けてくれないとのことだった。理由は一つ……金。

 魔眼屋への報酬金額は、依頼の危険度によって変わるらしい。今回の依頼は、事前の調べで(どんな調べだ?)それなりの危険度らしく、三百万円払わないと受けないとのこと。

 ――ただし、

「早く来い、助手見習い」

「はいはーい」

 助手見習い、つまりはアルバイトスタッフとして魔眼屋で働くことになった。

 実は来世さんは、女子高校生失踪事件の真相解明と失踪した少女の発見・保護を依頼されていたらしい。その手伝いをする形で、冷夏を探すことになったのである。

 時刻は五時半。学校からまっすぐ魔眼屋に訪れた私は、説明を受けている真っ最中だ。

「それで、どうすれば良いんですか?」

「まずは写真が撮影された公園に行く」

「公園って、どこの? 私が送った写真は、死体が横たわった地面くらいしか映ってないですよね? 場所の特定なんて無理でしょう」

 私は首を傾げる。と、来世さんは「そうでもない」と、スマホの画面を指差した。

「これがお前提供の画像、こっちが依頼者の画像だ」

「……あ、なるほど。よく見たら、そうでもないですね」

 来世さんは深く頷く。

 二つの画像は、どちらもウジ虫が目から飛び出した女性の死体が映し出されていた。注目すべきは、死体ではなく背景。

 どちらの画像も、芝生とガードレール、歩道らしきものが映っていた。……でも、

「確かに公園っぽいですね。けど、これだけじゃどこの公園だか分かんないです」

「いや、ここを見てみるんだ」

 スッと、来世さんの人差し指が、ガードレールを指差した。

「このガードレールは、一部分だけが真新しいものになっている。最近、公園で大規模な交通事故があったこと知ってるか?」

 ……んー、あったかな? スポーツニュース以外あんまり見ないからな……あ。

「学校の友達が言ってました、翔馬公園で交通事故が起きたとか。……確か、先月の話でしたよね」

「ああ、そうだ。公園でガードレールが破損した事故は、最近ではその一件だけらしい。翔馬公園に行ってみるぞ。何か分かるかもしれん」

「わかりました。……で、歩いて行くんですか? 車とかは?」

 見た目のイメージで決めるのは良くないけど、来世さんだったら、スポーツカーとか乗ってそうなんだよね。……え、何で、すっごい睨まれたんですけど?

「俺の車は前の依頼で壊れた。今、新車の納車待ちだ」

 フーン、そうなんだ。……て、嘘? 車壊れるって、普段どんな危険な依頼をこなしてるの。今更ながら、私は助手見習いをする危険性が実感できた気がする。……でもなー、冷夏のことを抜きにしても、この人の助手をするのは私的にプラスな気がするんだよね。

 ププ、と笑っちゃう私。来世さんは、不気味そうに顔を歪め、私から離れるように歩き出した。

 ※

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る