不能共

幕間

 無視するかどうか三秒くらい悩んだが、通話を切ってパソコンで時刻表を調べてどう考えても終電に間に合わねえだろボケと心の中で散々罵倒し、イライラする俺に若干怯える後輩にはすまん、大丈夫だ、と適当に声をかけてから、レンタカー屋の番号を調べた。

 高速道路を飛ばしながら上司に謝りの電話を入れて、親が急病だとか危篤だとかそういった類のよくある嘘だとバレる嘘をついてから、知人が自殺しそうなので車を飛ばしているとギリギリ本当のことを言った。自殺というワードが大切だった。上司は理解を示して、自習対応にすると言ってくれた。畜生絶対に出勤したらタスクが増えてるだろ、しばらく土日出勤になるだろマジでふざけんなよ。俺の恋人だった清瀬加奈子。の、旦那であり弟。あの不能野郎。また俺が自殺した人間と最期に関わった相手になるのなんてごめんだ警察に拘束されるわ遺体の確認もとらされるわ死体なんて気持ちのいいもんじゃねえわで、とにかく俺はどう足掻いてもあの不気味に笑ってばかりの何考えてるんだかわからない長髪男を迎えに行くのが最も面倒ではない選択肢に、本当になるのかは知らないが情が欠けてようが人間として不能だろうがあいつが大嫌いだろうが、俺をずっと無視するように好き勝手やってた親共のように放置できるか、できない、できないことが一番めんどくせえよ清瀬隆。

 あんたなんで、よりによって俺しか駄々捏ねる相手がいねえんだよ、人生さっさとやり直せ。

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