第1話:泡沫は笑わない

前回までのあらすじッッ

どんぐり狩りで生計を立てる男、YOSHIKIの行方を追って奔走ほんそうしていた筈のハードボイルド私立探偵・草薙凱くさなぎがいは、地元の田植えレースに参加していた!!!!

しかし時速40000kmで歩行するジジイを相手に、凱はある秘策で勝負に出る!!!!どうなる第1話!!!!



はるかは両親とたった3年しか暮らさなかった。記憶のない“自分”ではなく、ずっと“はるか”を求められる生活は、日々苦痛でしかなかったからだ。

だが彼が3年の間に1日だけ、高熱を出した時があった。あやふやな意識の中母親は、その時だけは“自分”を見ていてくれた気がしたのを…薄らとだけ思い出した。


はるかは次第と自分の意識が戻るのを感じていた。最初に五感が刺激されたのは匂いだ。トウモロコシを煮込んだような甘い香りが、彼をハッキリと現実へと戻した。

ベッドの上という確かな感触がある。シーツの肌触りが良い所から、かなり良い病院へと運ばれたのだろうか。一命を取り留めただけでも御の字だと思いながら、重いまぶたをゆっくりと開いた。

「…知らない天井だ」

彼が最初に見た景色は、シミひとつない綺麗な天井だった。

「貴方、目が…覚められましたの?」

彼のすぐ横で、鈴のような声が鳴った。振り向いた先にいた人物は彼の母親でもなければ、友人でもない。どう見ても成人手前ぐらいの少女だった。

人形のように整った顔立ちの少女だ。髪型は白い長髪を綺麗に切りそろえ、大きな瞳がよく見える。爪楊枝が平気で乗りそうな程長いまつ毛を揺らして、何度も瞬きを繰り返す。

「目を覚まされましたのね!!大丈夫なのですか!!」

触れれば壊れてしまいそうな程耽美的な印象の少女は……亜光速のスピードに乗って、忘却の彼方へと消えた。代わりに、未知の存在に興奮しているような声色を荒らげて悠の肩を掴む。

「…な、なあ君!」

場の空気に飲まれかけ、つぐんでいた口を大きく開けてはるかは尋ねた。

「…は、はひ?」

身なりの良い見た目からは、素っ頓狂すっとんきょうな声だけが返って来た。

「なあ、ここって何処なんだ?病院…じゃないよな。」

部屋中をよく見渡せば、絵画やシャンデリアと言った装飾品が幾つも飾られていた。

「ああ、そう言うことですの?貴方このお屋敷の前で倒れ込んでいたのですよ。」

よく見れば、彼女の指が食いこむ右肩を中心に、何重にも包帯が巻かれていた。痛みがない所から、かなりの時間眠っていたことがわかる。

「つ・ま・り、慈悲深い私は、不審者ともあろう貴方を看病してさしあげたの。丈夫に産んで下さった、貴方のお母様に感謝なさい!」

一遍に雪崩なだれて来た情報を前に理解が追いつかなかった。

ただ彼女の話す言葉は、英語に近しい未知の言葉だった。文法が読み取れない所から、田舎訛りが非常に激しい。何故、聞いたことも無い言葉を自分が理解して、自然と同じ言葉を話せるのか不明だった。

それよりも、此処が日本ですら無い危機感を悠は感じざる得なかった…。




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・あとがき

はじめまして。本当はあとがきとか書きたくない作者です。

先ずはこの作品を見て下さりありがとうございます。

ネット小説、ネット漫画などが手軽に投稿出来る時代なので、1作品ぐらいは矢を放ってみようと思い、筆を握った次第です。

お陰様で黒歴史確定です。10年後の自分悶え苦しめ。

次回は27日投下の予定です。

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