レッスル・ファンタジア

丸山カイト

第1章 レスラーへの道

第1話 新生活の複雑な気持ち

十六夜いざよい風雅ふうがは18歳。


北見きたみ市の高校を卒業し、今月末の週に進学のため札幌に引っ越してきたばかりだ。


人口約200万人を誇る北海道の一番大きな街で風雅は胸に期待を膨らませているはずだった…。


高校時代はテストの結果もよく、成績はトップだった。

北海道最難関の大学である北海道大学を目指し、合格してもおかしくないと言われていた。

しかし、模擬試験では国語と理科の点数が不安定なこともあり、本番ではうまく点数が取れるだろうと自分に言い聞かせていたこともあった。

ところが、大学入学共通テスト本番では模擬試験の時から不安定であった国語と理科の点数だけが、悪夢を見るような結果であった。

両方とも6割に満たない点数…。


北海道大学は諦めざるを得なかったため、地方の大学を滑り止めで受験しようとした。しかし、札幌の大学に推薦入試で合格した友人たちの声が、風雅の考えに水を差した。

「一緒に札幌に行こうよ。」

「札幌にも他にきっといい学校あるよ。」

「風雅1人だけ違うところに行くのは寂しすぎる。」


きっと……いい学校が……ある……??


親からは、家の経済的に私大には行かせられないと言われていた。

そのため、自分の目指している国家公務員のスキルを身に付けられそうな国公立大学はなかった。


受験後に、当時の担任の先生と母で三者面談した。

担任の先生から大学に行かなくても国家公務員になるためのビジネススキルを身に付けられる専門学校を紹介してもらった。

また、その専門学校には編入制度があると説明を受けた。


その説明を受けた日の夜に、友人たちから夕食の誘いがあった。

案の定ではあるが、風雅の進路先の心配も兼ねてのことだった。

専門学校に入学することに対する友人たちの優しい説得と編入学への可能性を想いながら、泣く泣く大学進学を断念することになった。


話は現実に戻るが、大学に合格した友人たちは、風雅よりも少し先に札幌で新生活を送り、同じ大学に入学する人たちと友達になって遊んでいたりもしたそうだ。


風雅はまだ札幌に来たばかりで同じ専門学校の友達はまだ1人もできていない。

希望に満ち溢れるはずの都会での新生活で複雑な気持ちを抱え、春の清々しい空気に慰められながら外を歩いていた。



風雅が冴えない顔をして歩いていたときだった。


「レッスル・ファンタジアの説明会にご興味ございませんか?」

スタッフらしき若いお兄さんから一枚の広告紙を渡された。


レッスル・ファンタジア??????


聞いたこともない名前に、風雅は疑問に思う反面少し興味も湧いてきた。


この出来事がすべての始まりだった。





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