第81話 崩壊
「二人共!」
「おっ、ついに来たか!待ちくたびれたぞ!」
「……待った」
「ごめん!」
二人とも余裕そうに言うが、かなり満身創痍なのはすぐわかる。確証なんてない俺のためにここまで耐えてくれた二人には感謝しかない。
「はっ!確かにてめぇは良く分からん力をもってるが、それだけじゃあ俺には届かねぇよ!」
「だ、そうだが?」
「否定はできませんね。と直接的なとどめを刺すのは俺じゃなく、二人ですから」
「私たちが?」
「……任せて」
ベルクは相変わらず元気そうな様子で自信ありげに言った言葉を俺は否定しない。結局、俺の力ではまだ決定打にはならないのだ。
そのことを悔しくも思いながら今は割り切る。今は意地を張ったりする時間じゃない。
そんな俺に少し不思議そうに聞き返すレミアクランと特に聞き返すことなく俺を信じて武器を構えなおすレンゲ。詳しく話す時間は無いので俺は端的に言い放つ。
「じゃ、君は何をするんだい?」
「あいつの不死身かと思う程の自己再生能力。そしてあの体の硬さ。それを俺がどうにかします!」
「っ!?……いいね。何をするかは分からないが、君に託そう」
「……私たちは何をしたらいい?」
「俺があいつに接近するための隙を!」
「……「了解!」」
「何をしても無駄なんだよ!」
俺の言葉を聞いた瞬間に走り出す二人。そしてそれに向かい打つようにベルクは両腕で防ぎつつも二人を吹き飛ばす。そんな攻撃にも二人は慣れ始めたのか勢いを完全にいなし、そこから防御する気のないベルクの全身を連続で斬りつける。
レミアクランの方は最初から強かったが、レンゲは少し見ていなかった間にあの三人の中に居てもそん色がないほどの覇気と剣術で戦っている。凄い……俺も負けてられない!
しかし、二人の普通の斬撃ではどれだけ二人が攻撃してもベルクに傷一つつけれず、二人の高威力の技で何とか傷つけても一瞬でその傷はふさがった。
……うん、やっぱりだ。これなら行ける!
「はぁぁぁ!」
「来たな!何をするか見せてもらおうか!」
「ぐ……随分と楽しそうだな!」
「おかげさまでなぁ!『
「……『突鬼』」
「させるか!『
ベルクは明らかに戦いを楽しんでいる様子で目にもとまらぬ速度で拳を振るう。その拳の速度に反応できない俺をカバーするように二人がその拳に匹敵する速度で拳の威力を相殺する。
やっぱりそう簡単には攻撃は与えられないか……。
「……ナルミ」
「っ!わかった!」
レンゲの呼び声と共にそこから読み取る作戦のサイン。それだけではレンゲが何をするかは分からないが、レンゲの動きに合わせて動くのがこの連携の肝。
そしてレンゲもレミアクランの動きに合わせているので、実質三人での連携だ!
「左!」
「……ん!」
「もうそれも見切ってんだよ!『覇』ぁ!」
二人はレミアクランの一言で息を合わせて回避と攻撃をする。ベルクもその動きを本当に見切っているようで、二人の攻撃を完全にとらえ弾き飛ばそうと蹴りと突きを交互に放つ。
しかし、その息の合った動きをレンゲは乱すようにレミアクランとは別方向に回避する。ベルクはその隙を突こうと動いた。
だが、それは俺にとって連携のサインの動き!
「はぁぁ!」
「っ!はっ、お前の攻撃じゃ……」
「『魔力衝撃波』!」
「俺には届かねぇ!!」
俺は気配を消してのレンゲの背後に隠れ、レンゲが下がるのと同時にすれ違うように飛び出してベルクの胸当たりを二本の剣で斬りつける。
しかし、俺程度の剣じゃ何のダメージにもならない。俺はそのまま魔力衝撃波を放つがそれも効かない。完全に慣れてしまったのか、龍人族の防御力は魔力にまで影響するのかもしれない。
剣を突きつけられたままベルク動いてその拳で俺を狙う。俺の攻撃にもう脅威を一切感じていないのだろう。だが、その慢心と傲慢がお前の敗因だ!
「『覇王』ォ!!」
「『
「……『斬鬼』!」
俺目がけて迫る拳も二人が技をぶつけることで相殺される。そうなればベルクの意識は二人に向き、俺への意識は最低限にまで落ちる。
よし、今こそが最大のチャンス!
俺はそう判断を下した瞬間に武器を手放す。完全に無防備になるが、両手無しでは今の俺にはこの技は使えない。
「今だ!」
「あ?何を……」
「……『鬼牙』!」
「邪魔させない!『
「ちっ……邪魔くせぇ!」
俺は両手をベルクの腹部分に当てる。そうして手に魔力を溜めて一か八かの技を構築する。
そんな俺を振り払おうとするベルクだが、そんなベルクを邪魔するように二人が剣技で責め立てる。
早く完成してくれ!早く、早く早く早く!
しかし、そんな俺のはやる気持ちなど関係ないとばかりに、ベルクは自分の尻尾を俺を横から叩きつけた。
「グッ!?」
「何もできねぇなら消え……なっ!?」
「う……うおおおお!」
尻尾の攻撃で吹き飛ばされそうになる。その威力は想像を絶する勢いだったが、俺は根性でその尻尾を押し返す。
この程度で負けるような覚悟で、ここに立ってなんかいないんだ!!
「喰らえぇぇぇl!!『
「っ!?!?ガッ……!こ、れは……!?」
その瞬間、俺の目には映り込む。それはベルクの体の中でまるで崩壊していくように魔力が消えていった。
俺はそれを見過ごさない。これこそが俺が求めた結果!
「はぁぁ!!」
「ガハッ!?」
「「!?」」
俺は即座に地面に落ちている剣を一本拾い、その勢いのまま全力でベルクを斬りつける。今までならこの程度の攻撃では一切ダメージは入らなかっただろう。
だが、俺の剣はベルクの硬いはずの体を斬り裂くことに成功した。
「な……、再生、でき……」
「二人共!」
「……『斬鬼』!」
「『火奏』!」
「ガ、グハァ!?」
二人の斬撃が交差する。二人の剣はベルクの体を斬り裂き、普通の人間なら確実に致命傷になるダメージを二発食らわせ、ベルクを吹き飛ばす。
これで倒せたとは思ってない。だけど、確実に俺達の勝利につながる一撃を与えられたのだった。
♦♦♦♦♦
良ければハートと星、フォローよろしくお願いします!
『紋章斬りの刀伐者〜ボロ刀を授かり無能として追放されたけど刀が覚醒したので好き勝手に生きます!〜』という作品も投稿しています!ぜひ読んでみてください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます