第65話 称号





「は〜……疲れたぁ」

「……ん、同意」


 宿に着いた俺たちは崩れる様にベッドに倒れ込む。勿論、服も体も『洗浄クリーン』済みなので汚くはない。


 しかし、前世が日本人としてはお風呂が恋しい。いつかは自宅のお風呂ゆっくりに浸かりたいものだ


 俺は当たり前のように一緒のベッドに倒れ込んだレンゲの頭を何となく撫でつつ、自分のステータスを確認する。


「ステータスオープン」

「……ふにゅ」


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 名前:全 鳴海 年齢:17 種族:人族、神の使徒(隠蔽)

 ジョブ:能力者 Lv.6→13

 セカンドジョブ:旅人 Lv.3→10

 HP59/200→59/340

 MP106/300→106/440

 状態:通常

 体力:40→75

 筋力:45→80

 防御力:40→75

 速力:40→75

 器用さ:60→109

 魔法防御力:55→90

 魔力:150→220

 幸運値:50

 スキル:アクティブスキル…『鑑定Lv.2』『隠蔽Lv.1』『気配感知Lv.1』『剛腕Lv.1(NEW)』『瞬足Lv.1(NEW)』

 パッシブスキル…『剣術Lv.2』→『剣術Lv.3』『不屈Lv.1』『集中Lv.1』『危険感知Lv.1(NEW)』

 ユニークスキル…『アイテムボックスLv.2』

 エクストラスキル…『全能操作Lv.2(隠蔽)』→ 『全能操作Lv.3(隠蔽)』

 称号:『女神の加護を受けし者(隠蔽)』『究極のスキルを手にし者(隠蔽)』『転生者(隠蔽)』『勇者(仮)(隠蔽)』『青灰眼の咆哮を聴きしもの(NEW)』

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 スキル:『剛腕』:アクティブスキル


 説明:魔力を継続的に使用することで腕力を強化できる。レベルが上がると魔力効率と上昇筋力が上がる。身体強化と重ね掛け可能。

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 スキル:『瞬足』:アクティブスキル


 説明:魔力を消費することで瞬間的な加速をすることが出来る。レベルが上がると魔力効率と加速力が上昇する。

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 スキル:『危険感知』:パッシブスキル


 説明:スキル所有者に一定以上のダメージを与えるもの、もしくは命にかかわるものを事前に感知し、警告するスキル。レベルによって感知範囲、精度が上昇し、詳細な危険度もわかるようになる。

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 称号:『青灰眼の咆哮を聴きしもの』


 説明:青灰眼ブルーグレーウルフを魔術、スキルを使用して討伐した者に贈られる称号。

 ウルフ系の魔物に対するダメージ、魔力貫通力が1.5倍増加する。

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「よしよし、ちゃんとレベルもステータスも上がって言ってるな。……んん?魔力貫通力?」

「……ん?どうしたの?」


 俺が見慣れぬ言葉を目にしてつい疑問を口に出してしまいレンゲが反応する。


 もしかしたらレンゲは知っているかもしれないと思い、眠そうにしているレンゲには悪いが一応聞いてみることにする。


「アイツを倒した時に称号貰っただろ?あれに『魔力貫通力』っていう見慣れない言葉があったから気になってな」

「……ん~……わからない」

「だよなぁ」


 レンゲはそういうとまた目をつぶって俺の手に頭をこすりつける。なでなでをご所望の様だ。


 俺はレンゲのおねだりに応えつつ、ステータスを閉じて考える。


 称号によるダメージアップはステータスに反映されない。実際に効果を試したことがないので威力増加というものが実際にどんな感じなのかははっきりとは分からない。


 しかし称号を持つことで確実に威力が上がっているのなら、称号でしか強化できない隠しステータスの様なものがあるのかもしれない。


 そう考えながら寝転がってぼ~っとしていると、コンコンと不意にドアがノックされる。多分女将さんだろう。


「夕ご飯の用意できたよ。食べるんだったら食堂にきな」

「あ、了解でーす」


 案の定、女将さんの様で俺達を夕ご飯に呼びに来たようだ。


 俺は疲れて頭が半分寝ながらだったので少し気の抜けた返事をしてしまったことに少し恥ずかしさを覚えながら体を起こす。


 俺よりも眠そうなレンゲを揺すって起こし、夕飯を食べに行くのであった。





 それから四日間、俺達は依頼に行くことなくゆっくり過ごしていた。


 青灰眼の討伐報酬は素材の買い取りや情報提供、特別報酬等など含めてなんと約十万ユル。日本円にして約百万円に達していた。


 いや金銭感覚バグるって……。


 それによくわからない女性からもらった白銀貨も含めに約二百万円。俺がせこせこ働いて稼いだお金の総合以上をたった一日で稼ぐというね……。


 ……これがDランク冒険者か。(違う)


 お金に多少の余裕ができたが特に贅沢したいわけでもない。が、少し疲れたので久しぶりに連続で休暇を取っていたのだ。


 そんなことを考えていると、俺達が座っている所に誰かが近づいてくる気配を感じる。覚えがある気配だ。


「ナルミさん!レンゲさん!見つけました~!」

「やっぱりサーナか。数日ぶりだな」


 俺達は今ギルドマスターに呼ばれギルドにやって来ており、話が終わって特にやることもなかったのでギルドに設置されてある席に座って飲み物を飲んでいた。

 ギルドマスターに呼ばれた理由は勿論、青灰眼について。まあ、主な話は買取金額と報酬についてだったが。


 そこにやって来たサーナ。きっと冒険者である俺達は冒険者ギルドに居ると当たりを付けて探しに来たのだろう。


「えへへ~、見てくださいよこれ!」

「それは……美魔身祭会場の入場券!?」


 サーナが俺たちの前に見せつけてきたのは三枚のチケット。そこには『美魔身祭』と書かれていた。


 チケットは確実に俺たちの目の前で売り切れたはず。いったいどうやって手に入れたんだ?


「……違法?」

「ち、違いますよ~!なんで私に対する一言目が『違法』なんですか……。実は爺やと婆やが手伝ってくれたんです!」

「あの二人が?……ああ、なるほど。家族チケットか」

「そうなんです!私たちはいいから三人で行ってきなさいって。いや~、爺やと婆やには感謝しかないですね~」


 サーナは嬉しそうに言う。本当に仲がいい家族のようだ。


「行く前提で話しちゃってますですけど、一緒に行ってくれますか~?」

「ああ、願ってもない話だ。勿論行かしてもらうよ」

「……ん、行く」

「やった~!約束ですよ~!」


 サーナは嬉しそうにその場でぴょんぴょん跳ねる。周りから微笑ましそうな目で見られるが気づいてないようだ。


「一応聞いておくが、家族チケットなのに使えるのか?」

「はい!別に名前や魔力を登録してるわけでもないので大人二人と子供一人いれば大丈夫です~」

「……はぁ、仕方ない」


 レンゲは少し諦めた様に溜息を吐く。なんだかレンゲがサーナに甘くなっていってる気がする。これはいい兆候だ。


「では、はい!二人分のチケットです!時間は初日の後半!実はこの時間が一番盛り上がる日なんです!」

「そうなのか?最後の最後が一番の大トリとかが居て盛り上がりそうなもんだけどな」

「……ん、意外」

「ふふ~ん!そう思われがちで・す・が!実は列に並んでいた時に見たような人気の人たちって、最初に出て一回披露したら帰っちゃうんですよね~」

「ええ?!三日間やってくれるんじゃないのか?」

「勿論、三日間どころか前半後半含めて六回もしてくれる人もいますが、大抵一日目の後半に有名人は出し来て帰っちゃうんですよね~」


 二人分のチケットを受け取りつつ、サーナの話を聞いた美魔身祭の事情に驚きを隠せない。

 つまり今回の大目玉であるSランク冒険者も一日目で帰る可能性を考えると、六回に分けられたチケットって一日目の後半以外ハズレなのでは……。


「ええ……それって色々とどうなんだ……」

「まあこれはあくまで『祭り』であって、『劇』ではないんですよね~。あ、他の日もちゃんと面白いですよ?あと、参加する大半の人の目的は一日目の優勝賞品だったりしますね~」

「……商品、出るの?」

「はい!一日目、二日目、三日目でそれぞれ審査員が決めたランキングで優勝者が決まりまして~、その優勝賞品はなんと!『世界樹のしずく』という装飾品なんですよ~!」

「世界樹!?」

「……それはすごい」


『世界樹』とは、この世界の中心にある国一つ覆えるほどの大きさの大樹の事を指し、その大樹は人々が生まれる前からそこに生えているとされており、一種の信仰とともにエルフ達に守られているありがた~い大樹だ。


 世界樹の枝から作られる魔法の杖や武器はどれも最上級であり、その葉から作られる薬は万病を治すとされている。


「あ、いえ!本物の世界樹ではないです~……」

「……なんだ」

「すまん、俺が早とちりした」

「いえ、説明しなかった私が悪いんです~……んん!話を戻すと、確かに優勝賞品の『世界樹』あくまでは名前だけ……なのですが!」

「ですが?」

「その美しさはその名を冠するにふさわしい美しさを持っており!かの有名な装飾職人『ルベテリアス』さんの作品なんですよ~!一度見た時はその美しさに見惚れちゃいました~!」


 サーナはその記憶を思い出しているのであろうキラキラとした目で楽しそうな表情を浮かべる。そこまで言うならそれはそれは美しいのだろう。


「……るべ……誰?」

「……すまん、俺も知らない」


 全く知らない職人の名前を出されて困惑しつつ、幸せそうなサーナを邪魔しないように小声で話す俺達であった。



 ♦♦♦♦♦


 『紋章斬りの刀伐者〜ボロ刀を授かり無能として追放されたけど刀が覚醒したので好き勝手に生きます!〜』という作品も投稿しています!ぜひ読んでみてください!




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