第64話 テンプレ



 変更点が二つございます。

 一つ、前話で取得スキルの増加。

 二つ、諦めて『全能操』の名称を『全能操作』にします。理由はめんど……そっちの方がかっこいいのと新たな設定を組み込むためです。


 ♦♦♦♦♦



「ハイグレーウルフ討伐の為に近隣の森に入った後、ハイグレーウルフを見つけ討伐に向かうと実際は青灰眼ブルーグレーウルフだったと。さらにCランク、状況によってはBランクに相当する青灰眼をDランクである君たちがたった二人で討伐した、と……本当に間違いないな?」

「は、はい。何度も言いますが、間違いなく事実です」


 ここは冒険者ギルドの奥にある応接室。そしてそこには俺とレンゲ、一人の受付嬢さんと俺より二回りほど大きい男、ギルドマスターが居た。


 あれからブルーグレーウルフの死体とグレーウルフの死体を持ち帰り、ホブゴブリン討伐は諦めて即座に帰還した。


 アイテムボックスにしまったままにはできないので門から魔物の死体用の大きな荷台を借り、少し離れた場所で取り出して運んだら騒ぎになってここに至った。


 ギルドマスターは食い気味に事情を説明した俺に事実確認をする。勿論事実なので肯定するが、そろそろ開放してほしかった。


「マスター、いい加減認めましょう。彼らの言っていることは事実だって。これ以上同じ事聞いたところで違う回答は得られませんよ。それとももう歳ですか?」

「いやだがなぁ、セリアよ……って、まだボケてねぇわ!俺はまだ五十歳の現役だっての!」

「十分歳ですよ。そのままだと昔からマスターが言っていた嫌いな老人になりますよ?」

「うぐっ……わかったわかった。それにそこの嬢ちゃんの魔力をビンビン感じる死体を見せつけられちゃ信じるしかないわな。……はぁ、最近めんどうなことが多くてかなわん」

「はい、育毛効果のあるお茶です」

「ああ、すまない。……ってまだハゲてねぇわ!せめて胃薬にしろ」


 因みにレンゲは俺の横で用意されたお菓子をもぐもぐしていた。


 ギルドマスターとセリアと呼ばれた受付嬢の夫婦(?)漫才を見せつけられて苦笑いしつつ声をかける。


「あの~、そろそろ帰ってもいいですか?」

「ああ、すまない。今日のところは帰って大丈夫だ。素材解体と買取もこちらでやっておく。比較的綺麗な方だからいい値が付くと思うぞ」


 今日のところは、ってことはまた呼び出されるのか……。まあ、俺達みたいな新人冒険者が潜るような場所に中級冒険者でも全滅するような魔物がいたのだ。それを発見し、倒した俺達を含め、いろいろ警戒するのは当たり前か。


 受付嬢さんに案内され応接室から出る。ギルドの奥に来たのは当たり前だが初めてなので新鮮な気分だ。


「うちのギルドマスターが迷惑を掛けました。申し訳ございません」

「いえ、森の比較的に浅い場所で高ランクの魔物が出たんですからギルドマスターとして警戒するのは当然ですよ」

「……ん、決めつけてくる奴よりまし。こいつらみたいに」

「おいおいガキども。先輩に対して礼儀が鳴ってねぇんじゃねえのか?」

「そうだそうだ!お前らみてえな青臭いガキが青灰眼を殺せるわけねぇ!どういう裏技で青灰眼の死体なんて手に入れたか知らねえが俺らが教育してやる!」

「しかもセリアさんと仲良くしやがって!」


 数人の男冒険者が立ち上がって俺達に近づいてくる。フレデリカ街では体験しなかったテンプレがここにきてやって来た。


「モーブさん、ワキャークさん、チョイさん。ギルド内での暴力、および武器や魔術、スキルの使用は原則禁止されてますよ」

「おっ、セリアちゃん!俺たちの名前覚えてくれてるのか!?嬉しいねぇ!」

「ええ、迷惑で有名なあなた達です。覚えてないわけないでしょ?」


 セリアさんはまるで絶対零度の様な冷ややかな視線と声で話す。それほどまでに迷惑なのか。


「ひ~!その冷たい目もたまんないねぇ!」

「だが今はセリアちゃんにかまってられねえんだ。俺らが用があるのはそのガキどもだからな!」

「……はぁ」


 セリアさんはため息を吐く。これは今に始まったことではないのだろう。


「俺たちはあんた達に用は無いので遠慮しとく。では」

「な、待てコラ!」

「……邪魔」


 レンゲは俺につかみかかろうとしたモーブの手を払いのける。お互い身体強化はしていないが、パンっと高い音が鳴って男の腕が弾かれる。


 レンゲは身体強化をしていない素の状態でも腕力が高い。本気で叩けば巨漢の腕ぐらい簡単に弾ける。


「いでっ!?なにすんだてめぇ!」


 手を弾かれたことで簡単に切れた男は俺ではなくレンゲに掴みかかろうとする。若干身体強化もかかっていた。


 これ以上は正当防衛で対処できるなと判断した俺は、新たに手にした力を試すために反撃しようとするレンゲを止め、右腕と目に魔力を込める。


「……『魔力視アビリティアイ』」


 俺はばれないようにボソッとスキル名を言う。その瞬間俺の見える世界の景色がガラッと変わった。


 青灰眼との戦いで俺のスキルである『全能操作』は一段階進化し、新たな力を三つも得た。

 その一つがこれ、『魔力視』だ。


 これは何ができるかというと、使用することで魔力を直接見ることが出来るようになる。


 本来魔力というものは不可視で、魔力操作に長けているものなら気配の様なものを感じ取ることはできても見るに至ることはほとんどできない。


 この力はその鍛錬の時間を吹っ飛ばし直接見ることが出来、身体強化や魔術によるバフやデバフ、呪い等を直接目にでき、魔術の発動も高まる魔力を見て先読みできるというスキルだ。


 そして俺はこの力の最も効果的な使い方を理解する。


「『瞬足』!」

「なっ!?はや!?」


 俺はスキルで急速に接近する。

 俺の目は男の身体強化の弱い部分と男のを見抜いていた。それはこの世に住まう大半の生物にとって心臓にも魂にも近い、体の器官の一つ。


 それは……魔力核だ。


「……『魔力衝撃波インパクト』」

「!?……あ」


 俺はスキルのレベル上昇で可能になった詠唱短縮と威力と範囲の圧縮を使い男の魔力核を打ち抜く。

 っと、言ってもあくまで比喩であり、本当に打ち抜いた訳ではない。


 男は突如発生した魔力核への魔力的衝撃のショックをから逃げるために脳が強制的に意識をシャットダウン、つまり気絶した。


「な!?モーブに何しやがったてめぇ!」

「……まだ、やるの?」

「ひ、ひぃ!?」


 いい加減飽きたのかレンゲが本気の殺気と威圧系のスキルを放つ。

 俺はそれを見ることが出来たので『全能操作』の応用、対象の魔力を無理やり抑えこむこみ魔力耐性を下げることで恐怖をより感じさせる。


 硬化はあったようで、恐怖で逃げ出そうとする男二人に気絶した男を投げつけ、追い払ったのだった。


「えっと、セリアさんでいいでしたよね?これは正当防衛で?」

「はい、私が証人として適用させてもらいます」

「よかった。じゃあ今度こそ帰りますね」

「……ん、じゃあね」

「ええ、お疲れさまでした」


 俺たちはギルドを出る。周りから感じる視線からできるだけ早く抜け出したかったのもあるが、さっさ宿に帰って休みたい気持ちが一番強かった。


「……これが何かの前兆でなければいいのですが」


 セリアさんの独り言が俺達には届くことは無く、冒険者たちの喧騒の中に消えていった。



 ♦♦♦♦♦


 『紋章斬りの刀伐者〜ボロ刀を授かり無能として追放されたけど刀が覚醒したので好き勝手に生きます!〜』という作品も投稿しています!ぜひ読んでみてください!







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