第51話 特性
え?もう一周年?……投稿頻度上げろお!!(泣)
♦♦♦♦♦
「やっと着いたあ!やっと馬車から解放される……!」
「……ん。流石に私も疲れた」
盗賊たちの襲撃から丸一日後、それ以降は魔物も盗賊も現れることなく順調に馬車はファーナント街に着いたのだった。
「それにしても……」
「まあ、『美魔身祭』前だからですかね。いつもの三倍以上の馬車の列ができてますね」
街に入るためには当たり前だが門をくぐる必要があり、馬車の一台一台に不審な者が乗っていないか検査される検問のようなものをされる。
その待ち時間に馬車は列を作ることになるが、商人さんが言ったようにやはりいつもの何倍も多いらしい。
「そーいえば今年の美魔身祭にはSランク冒険者も参加するとか何とかって噂を聞いたな!」
「ほう、Sランク冒険者ですか。それは気になる噂ですね。もしホントなら見てみたいですね」
エマさんが思い出したように話す。
噂通り本当に参加するかはわからないが、もしかしたら冒険者の最強に位置するSランク冒険者の姿を拝めると思うと更に祭りを見たくなってきた。
「Sランク冒険者かあ、どれぐらい強いんだろうな」
「……」
レンゲは無言のままぼんやりと長い馬車の列を眺めていた。
あの戦いの後から『強さ』に関する話をするとずっとこの調子だった。
俺もレンゲのように馬車を眺めながら昨日の事を思い出す。
『レンゲ。今の技って……』
『……私の住んでいた鬼人族の村に伝わる剣術の奥義。……私が最も嫌いな技』
レンゲは怒っているような悲しんでいるような表情と声で話を続ける。
『……この技は最初の技である一式『
『え?奥義なのにか?』
『……鬼人族を含めた戦闘に特化した種族は全て特殊な眼を持ってる』
『レンゲ?』
レンゲはまるで俺のことを忘れたかのように語る。目は俺の方を見ているがその目に映っているのは俺ではないようだった。
『……鬼人族が持つ眼はあらゆる物の強い部分を見つけることが出来る。この力を応用すればあらゆる物の強くない部分を見つけることが出来る』
『確かに、強い所以外は強くない部分だもんな』
『……この奥義はその目をフルに使って相手の最も強くない部分を見つけて相手の最も強くない方向から切り裂く……技』
その声はまるでそれが技だと思っていないかのような、技だと思うことに拒否感を抱いてるようだった。
『確かにこの技は強い。普通に考えたら最強の技……でも』
『……でも?』
『……もし、相手が自分にとって……』
レンゲは俺から目を離し俯く。見たくないものから目を離すように。思い出さないように。
『……強くない部分が無い存在だったら?』
「………君!……ミ君!着いたよ!」
「……んん?」
どうやら馬車を眺めている内に眠ってしまったようだ。
目的地に到着したことで気が抜けていたのかもしれない。
「ふぁ……あ、もう門を通り過ぎたのか」
「ああ。まあ、その時に起こしても特に意味は無いから起こさなかったがな」
身分証を出さないといけないと思っていたが、どうやらその辺は依頼を受けた時に書類のようなものを冒険者ギルドから商人さんは受け取っているようだった。
「では私は馬車を片付けてからギルドの方に依頼達成を報告と盗賊達の引渡しをしますので、今日の日が沈んだ頃には受理していると思います。では、お疲れ様でした」
「「お疲れ様です」」「お疲れ様〜」
俺達は商人さんから離れ、馬車の駐車場みたいな場所から出る。出口は一緒なので『庭園の番人』さん達と途中までは一緒だった。
「私たちはこれからギルドに向かうが、君たちはどうする?」
「俺達は……まずは宿を探そうと思います」
「そうか。なら俺達とはここまでだな。また機会があれば話そう。では」
「二人ともまた会おうね!」
「はい、お疲れ様です」
「……じゃあね」
ナルカさん達はギルドが何処にあるかわかっているようで、人混みの中を進んで行った。
「あっ、待って待って!」
「?エマさん?」
俺達も人混みの中を進もうとするとエマさんが戻ってくる。
「はいこれ!」
「これは?」
「これはおすすめの宿一覧!この街初心者の同僚がいたら渡そうって思って何枚も作ってたの忘れてた!」
「そういやあんたそんなの作ってたねぇ」
後ろにいたパーミャさんが呆れた表情でそう言う。
渡されたものを見ると宿の名前らしき名前が書かれた小さな紙だった。
「あれ?紙って確か少し高いはずじゃ……」
「いーのいーの!私が勝手にやってる事だからね!じゃ、今度こそバイバーい!」
そう言ってエマさんは今度こそパーミャさんと一緒に人混みの中に消えて行った。
「……なんか色々不思議な人」
「だなぁ」
俺達は貰った紙を頼りに宿を探すのだった。
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