第49話 襲撃
休憩が終わって馬車に乗り込み一時間。これまた何も起こらず馬車は進んでいた。
レンゲにとって馬車の揺れは心地よいのかまた眠たそうに半分目が閉じていた。
おしりのことをできるだけ考えないようにしていると、ふとゴンズさんの言葉を思い出す。
「そういえばレンゲの刀には不思議な印的なものがあるって言ってたな……。レンゲ、刀見せてくれないか?」
「……ん?刀?……わかった」
レンゲは半分寝ていて回らない頭でどうにか俺の言葉を理解して隣に置いていた刀をこちらに差し出す。
俺はその刀を受け取り、鑑定する前に印を探すことにした。
刀を閉まっておく鞘や、手荷物部の
「お、これか」
少し抜いて見えた刀身には剣と槍(?)のようなものが交差され、その交差された部分を中心に小さめのハートが刻まれていた。
そしてその印の下には『531 4 13』と刻まれていた。
ちなみに今日の日付は神刻歴527年六の月二十一日だったりする。
あれ?意外と近いな……。
まあいいや、とりあえず鑑定を……。
「この先に複数人の人の気配を確認した!盗賊の可能性がある!」
「「「「っ!?」」」」
唐突に『庭園の番人』の最後の一人である小柄な男性が叫ぶ。
彼の見た目は職業の『
俺は鑑定を後回しにして即座に気配感知を使う。すると彼が言ったように十人を超える人の気配が散らばるように感じた。
二手に分かれてるようなので隠れているのは明白だった。
「はぁ、このまま順調に進めばよかったんですが……。どうしましょうか?このまま速度を落とさず進みましょうか?」
「いや、相手の数は十人いや、二十人を軽く超えてる。手練が居て馬を攻撃される可能性を考えてここは速度を落としてくれ」
「了解しました。頼りにしてますよ」
商人さんは落ち着いた様子で盗賊の冒険者さんに判断してもらい、馬の速度を緩めた。
すると段々と目の前に盗賊らしき人達が現れ始める。
俺はレンゲに刀を返し、盗賊達を観察する。
見た目は想像通り少し薄汚れた格好をしていて全員男。皆武器を武器を持っていて、後ろの方には大柄な男はその体型に見合った大きな武器を持っている。あいつがボスで間違いないだろう。
「おいおい、俺らの為にわざわざ止まってくれたのか?嬉しいねぇ、馬を傷つけるのは嫌なんだ」
「……別にお前たちの為じゃない」
ナルカさんは警戒した様子で外に出ながらそう言う。俺達も一緒に外をに出るとナルカさんは俺に小声で言った。
「私達は右側を、君達は左側を」
「了解」
俺達は馬車を守るように左右に別れて警戒する。
盗賊達はニヤニヤした顔で俺達を、特に女性陣を見る。
「おお、良さそうなのが二人もいるじゃねぇか!」
「ああ、ガキの方は興味ねぇが顔が良さそうだし売ればいい値は着くな!」
「いいかお前ら!わかってると思うが殺すのは男だけだ!それ以外は生きたまま捕まえろ!ポーションで治る程度な傷つけていい!」
「……ふん、もう勝った気でいるのかい?」
「……不快」
「私もこういうヤツらにだけは関わりたくないな」
主に女性陣が盗賊達に嫌悪感を向ける。しかし盗賊達はそんなこと知ったことではないと少しずつ近寄ってくる。
「交渉の余地はないと。まあ、わかっていたが。ナルミ君達!」
「?どうしました?」
「わかってるとは思うが、躊躇うなよ?」
何を?と、聞くほど馬鹿じゃない。ナルカさんが言いたいことは人を殺すことに関してだろう。
俺達が護衛依頼を初めてだと聞いて心配しているのだろうか。
「大丈夫です。……初めてじゃないので」
「……ん」
「ほう?」
「お前ら行け!」
すると装備が確実に薄い俺達の方が簡単だと思ったのか俺達の方に向かって来る奴らが心無しか多かった。
「けへへへ、このガキ見れば見るほど美形じゃねぇか。こりゃ高く売れるぞ!」
「おい見ろ!よく見たらこいつ角がある!見たことねぇ種族だが余計高く売れるかもしれねぇぞ!」
「……」
その瞬間、レンゲの顔から表情が消えた。
「あへ?」「へ?」「あ」
そして同時に目の前にいた三人の武器を持った腕が飛ぶ。
「……三連、『
そして自分の腕が無くなったと理解するよりも早く、腕を失い防ぐことも出来ずに三人ともレンゲに斬られ絶命する。
「……私を舐めない方がいい」
「「「ひぃ!!」」」
「しっ!!」
「ぐわっ!?」
その瞬間レンゲが『鬼圧』を使ったのかこちらに向かってきた全員が情けない声を出して一歩交代する。
そして全員レンゲから目を離せない状態になっているのを見逃さずに近ずき斬り掛かる。
この依頼を受けるまでに一週間ほどだがレンゲに剣術を教えて貰った。と、言ってもレンゲにの使う剣技を教えて貰ったのではなく基礎の基礎だが。
剣術スキルもあってか少しずつ様になってきた剣の扱いで盗賊達を切り捨てる。
「舐めんじゃねぇ!!」
するとボス程じゃないにしろ大柄な男が魔力を纏ってレンゲに斬り掛かる。
「……『
「『
「ごっ!???」
「……『
レンゲが武器を弾いて好きを作り、俺が『魔力衝撃波』を使うことで全く未知の衝撃と魔力の不安定に理解が追いつかず、さらに隙をさらしたところにレンゲがとどめを刺す。
これは俺達が依頼を受ける中で出来た簡易的な連携だった。
「「「「ひ、ひぃぃ!!!」」」」
彼は盗賊達の頼みの綱だったのか一瞬でやられてしまったことに盗賊達は怖気付いてボスの方に逃げて行った。
俺達はボスが居るであろう『庭園の万人』の方を見るとナルカさんとエマさんが二人がかりでボスを相手し、パーミャさんと
基本的な戦闘はナルカさん達に任せていたからか、パーミャさん達は少し手間取っていた。
俺はそちらに助太刀に行こうとしたが、まだ盗賊がこちら側にいる可能性を考えて気配感知を使う。
……気配は感じない。でも気配遮断系のスキルを持っている盗賊がいないとは限らない。
「レンゲ、他にこっち側に隠れている盗賊は居る?」
「……居ない、はず」
「よし、なら手助けに行こう!」
「……ん」
俺達はできるだけ気配を消してこちら側に背を向けている盗賊達に斬り掛かる。
「げひっ!?」
「っ?!あ、あんた達なんでこっちに!?」
「こちらは一掃しました!なので助太刀に来ました!」
「ほう、あんた達なかなかやるな」
「……ん、ここは私達がやる。あっち任せた」
「なるほど、交代って訳ね。了解したわ。」
「……『
「「うわぁぁ!」」
「『
「「うがっ!??」」
俺達が盗賊達を吹き飛ばしたり怯ませたりしてる内にパーミャさん達を下がらせる。
「お、おい!こいつらやべぇぞ!」
「ボスはまだ戦ってるのか?!」
「……(カッ!)」
「「ひ、ひぃぃ!!!」」
レンゲは『鬼圧』を使うと同時に強烈な眼光で盗賊達を睨む。するとそれを見ていた盗賊達が怯んだ。
……レンゲさん、ちょっと楽しんでません?
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